中国株式市場の急上昇と下落の展開

中国株式市場は9月後半から大きく上昇し、10月7日に高値をつけてから下落をしています。これまでの動きを見ると、中国本土株式市場のCSI300指数は、9月13日の3159ポイントから10月8日の4256ポイントまで1096.85ポイント(34.7%)上昇しました。その後、10月16日まで約11%下落しています。香港株式市場の各指数も同じような展開でハンセン指数は9月11日の17108ポイントから10月7日の23099ポイントまで5991.07ポイント(35.0%)上昇し、10月16日まで約12%下落しています。

9月の経済対策とその反応

こうした両株式市場の株価の動きは、9月に発表された経済対策を好感し、今後の展開について楽観論がいったん広がりましたが、ここにきて期待が急速に後退しているのを表しています。中国政府が財政支出計画の詳細の詰めに時間をかける中、当局がさらに景気や相場のてこ入れ策を講じる用意があるのか懐疑的な見方も広がっているようです。

中国経済のイメージ

中国の経済対策の内容

それでは今回の経済対策はどのようなものなのでしょうか。

中国では、9月24日に中国人民銀行、中国国家金融監督管理総局、中国証券業監督管理委員会の3つの機関が共同で総合経済対策を発表しました。その内容は、①金融緩和 ②不動産対策 ③株式市場対策 の3本を柱としています。

金融緩和

  • 7日物リバースレポ金利を1.7%から1.5%へ引き下げ
  • 預金準備率(大手銀行)を10%から9.5%へ引き下げ
  • 1年もの中期ファシリティ金利を2.3%から2%へ引き下げ

不動産対策

  • 既存の住宅ローン金利を0.5%引き下げ
  • 2軒目の住宅取得にかかるローン頭金比率を25%から15%へ引き下げ
  • 国有企業による住宅在庫の買入を再貸出の見直しで促進

株式市場対策

  • 株式市場の流動化支援にスワップを導入(5,000億元)
  • 株式市場の流動化支援に再貸出(3,000億元)

こうした3本柱からなる総合経済対策の内容は、従来からの「小出し」とも言える政策と比べて積極的な内容と考えられます。

中国政府のイメージ

政策効果と市場の動向

金融対策では、最近、重要性が高まっていると言われる7日物リバースレポの金利を引き下げ、そして預金準備率の引き下げで1兆元(約20兆円)の流動性が見込まれ、さらに年内に預金準備率の引き下げを行う可能性のあることを示唆しています。従来、預金準備率の引き下げは1回だけのようですが、今回は引き下げの効果を確認できるまで断続的に預金準備率の引き下げを行っていく可能性も出てきています。

不動産対策では、2軒目の頭金金利の引き下げが行われましたが、不動産市況が低迷している現状での効果は疑問視されています。国有企業による住宅在庫の買入の再貸出の見直しは、未完成の住宅などを買い上げて、買いやすい価格の住宅として提供することに関連した融資を行った銀行に対して、人民銀行が従来は60%であった再貸出の対象を100%に引き上げるというものです。

株式市場対策としては証券会社や投信会社(ファンド)、保険会社が株式を購入するため人民銀行から資金を引き出せるスワップ制度を創設しました。これまで人民銀行から直接オペにより資金を受けられるのは基本として銀行などに限られていましたが、対象が広がることになります。

今後の展望

株式市場にとって、今回の総合経済対策は、驚きを持って見られたと思われ、発表から株式市場は大きく上昇しました。しかし、中国政府が財政支出計画の詳細の詰めに時間をかける中、当局がさらに景気や相場のてこ入れ策を講じる用意があるのか懐疑的な見方も広がっています。

中国株式市場は、期待感から既に大きく上昇しており、今後の株価動向については、総合経済対策への財政政策の在り方に注目が集まると思われます。