1月17日に中国の2022年GDP(国内総生産)などが発表されました。

2022年のGDPは前年比+3.0%と目標の+5.5%を大きく下回る結果となりました。同時に発表された2022年10-12月期GDPは前年同期比+2.9%と7-9月期の+3.4%を下回っています。消費動向を示す社会消費品小売総額は前年比-0.2%と減少し、鉱工業生産も+3.6%と2021年の+9.6%から大きく減速しました。

 このような結果は、ゼロコロナ体制からウイズコロナ体制へ転換した際に起こった、12月上旬からのコロナの感染拡大による経済停滞が大きく影響したと思われます。

 こうした2022年の中国経済の停滞状況を踏まえ、12月15日-16日に開催された中央経済工作会議で決定された2023年の方針は、これまでの政策から大きく転換するものとなりました。

 会議で出された考え方は「積極的な財政政策と慎重な金融政策を実施し、安定を堅持する。成長、雇用、物価の安定化に重点を置き、合理的な量的成長を実施する。内需拡大に注力し優先的に消費を回復・拡大する。」となっています。

 具体的には

  1. 国内需要を拡大する。
  2. 現代化産業システムの建設を加速する。
  3. 「2つのいささかも揺るぐことなく」を適切に実施する。
  4. 外資を積極的に誘致・活用し、より高いレベルで対外開放を推進する。
  5. 重大な経済・金融リスクを効果的に防止し解消する。

として次のような多くの施策をあげています。

  1. では、消費を回復・拡大する為「住宅の改善、新エネルギー車、介護サービス等を支援」
  2. では、新エネルギー、人工知能(AI)、バイオ製造、グリーン・低炭素、量子コンピューティングなど最先端技術の研究開発と応用を推進
  3. では、国有資産・国有企業改革を深化させ、コア競争力を高める。また民営経済と民営企業の発展・壮大化を奨励・支援
  4. では、市場参入の拡大、現代サービス業分野の開放加速、外資企業の内国民待遇の着実な実施、環太平洋パートナーシップ協定とデジタル経済パートナーシップ協定などへの加入推進、外資企業の貿易・投資・商談への従事のため最大限の便宜を図る。
  5. では、不動産市場の安定的発展を確保。住宅引き渡しの着実な実施。不動産業の合理的な資金需要を満たし、業界再編とM&Aを推進、トップ企業の資産・負債状況を改善。「住宅は住むためのもので、投機のためのものではない」の方針を堅持。金融リスクの防止・解消を行う。地方政府債務の増加抑制、残高の解消を断固として実施。

会議の結果を受けて、さっそく中国政府は不動産業界への政策を転換しました。

不動産業界への政策は、将来の金融危機を防ぐことを目的に2020年夏に策定された不動産企業への財務指針「3つのレッドライン」がありますが、これの緩和を発表しました。

  中国は不動産業がGDPの約3割を占めると言われていますが、直近の主要70都市の新築住宅価格は前月比で7割超の都市の価格が下落しており、中国経済全体への悪影響だけでなく地方財政や金融システムにも悪影響を与えていました。

 今後も中国では経済の回復・成長に向けた具体的な政策が出されると思われます。欧米を中心とする先進諸国で景気が減速する中、中国経済の再生が注目されます。