イーサリアム相場のカギを握る“古参クジラ”の動きとは?
2025.08.20
“クジラ”とは何か?その市場心理と役割
暗号資産(仮想通貨)市場における「クジラ」とは、大量のトークンを保有する個人または団体を指す。イーサリアム(ETH)においても、初期のICO(Initial Coin Offering)参加者や機関投資家、取引所などが該当する。
クジラの動きは市場に大きな影響を及ぼすため、多くの投資家がそのウォレットアクティビティを注視している。特にETH価格が高騰する局面では、大口送金が「売却の予兆」として敏感に反応されやすい。
また、クジラの送金は必ずしも市場売却を意味するわけではない。OTC取引の準備、担保としての提供、ステーキング解除後の再配置など、複数の戦略的理由が存在する。こうした文脈を無視した過剰反応は、短期的なボラティリティを招くリスクとなる。
最近のクジラ動向:注目事例
2025年8月、あるETHアドレス「0x815」が、暗号資産取引所Krakenへ約5,300ETHを4日間にわたって送金したことが確認された。送金総額は2,410万ドル(約35億円)にのぼり、市場参加者の注目を集めた。このアドレスの保有者は、2014年のICOで約10万ETHを取得しており、含み益は4億7,000万ドル以上に達している。
同時期には、別のICO参加者が2,300ETH、イーサリアム共同創設者ジェフリー・ウィルク氏も約9,800ETHを移動。こうした一連の動きは、長期保有者による利益確定の可能性を示唆している。
一方で、イーサリアムの価格は8ヵ月ぶりに4,000ドル台を回復し、1ヵ月で約50%の上昇を記録。アルトコイン主導の市況が形成されるなかで、こうした大口送金は自然な利確の一環とも受け取れる。
短期的リスク vs 中長期的信頼:構造的視点からの分析
市場では、一時的に供給量が増加し価格下落を懸念する声もある。しかし、今回の送金がすべて売却に結びつくとは限らず、特に大口保有者は戦略的な資金移動を行う傾向がある。
ステーキング解除も注目すべき要素だ。2025年8月中旬時点で、約70万ETHが解除待ち状態にあり、これは流動性を確保しつつ利確を目指す動きと考えられる。ただし、ステーキング全体の参加はむしろ増加傾向にあり、供給の引き締めにつながる長期的要因として機能する。
実際、機関投資家によるETHの蓄積も進んでいる。米BitMine Immersion社は35日間で80万ETHを取得し、SharpLink Gaming社やEther Machine社も数十万ETH規模の保有を明かしている。これらの動きは市場の強気継続を支える材料といえる。
クジラの動きを読むための実践アプローチ
大口保有者の送金をいち早く察知するには、オンチェーン分析ツールの活用が有効だ。LookonchainやWhale Alertなどのサービスでは、特定アドレスの大口移動をリアルタイムで追跡できる。
トレーダーにとっては、こうした動きを受けた短期的な調整リスクへの備えが重要となる。具体的にはストップロスの設定や、過度なレバレッジ回避など、リスク管理を徹底することが推奨される。
一方、長期投資家にとっては、クジラの動きを短絡的に「売り」と判断するのではなく、その背景と意図を読み解く冷静さが求められる。価格への即時反映だけでなく、資金の再分配やガバナンス投票への影響など、広範な視点が必要だ。

今後注目すべきポイント
今後数週間にわたり、ETH価格が高値圏を維持できるか、そして追加のクジラ送金が発生するかが市場の焦点となるだろう。特にステーキング解除の状況や現物ETFの資金流入状況は、需給バランスの重要指標となる。
現時点で、イーサリアム現物ETFの累計純流入額は100億ドルを超えており、依然として機関の関心は高い。競合チェーンとの覇権争いが続くなか、L2(レイヤー2)拡大やDeFi需要など、実需面の動向も無視できない。
イーサリアムICO組の動きは、市場価格のみならず、投資家心理や資金構造の変化を映し出す鏡といえる。次に彼らがどう動くか──それが未来の相場を左右する重要なシグナルとなるだろう。

[Iolite記事]
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