暗号資産市場が再び活気づく背景

ここ数週間、暗号資産市場が再び息を吹き返しつつある。とりわけビットコインは、4月26日執筆時点で94,000ドル台まで回復し、市場全体の投資マインドが明るさを取り戻している。この背景には、いくつかの注目すべきマクロ要因が存在する。

米中関係と金融政策の安心材料

まず、米中間の貿易摩擦に緩和の兆しがみられる点が大きい。米国財務長官が「高関税の持続は不可能」と明言し、関税の段階的引き下げが議論されている。加えて、トランプ政権がパウエルFRB議長の解任を撤回したことで、金融政策の先行きに対する不確実性が後退したことも、市場の安心材料となっている。

利下げ観測とビットコイン再評価

また、FRBは年内に複数回の利下げを視野に入れており、金利低下による流動性の改善が暗号資産市場への資金流入を後押ししている。インフレ率の上昇や経済成長の鈍化という現実を前に、FRBはより慎重なスタンスを取っており、このことがビットコインなどの“インフレヘッジ資産”への再評価につながっている。

機関投資家の動きが強気相場を後押し

こうした環境変化に最も敏感に反応しているのが、機関投資家の動向だ。特にブラックロックが運用するビットコイン現物ETF「IBIT」には、4月24日と25日の2日間で計900億円以上が流入し、過去最大級の資金移動となった。ほかの主要ETF、たとえばARKBやFBTCなどにも顕著な流入が確認されており、市場全体の強気基調を裏付けている。

八木編集長FOCUS

ARKが描くビットコインの未来像

さらに注目すべきは、ARK Investmentが4月に発表した「Big Ideas 2025」レポートである。同社は、2030年までにビットコインが最大150万ドル(約2.1億円)に達する可能性を示唆している。

厳密にいえば、弱気シナリオで約30万ドル、基本シナリオで約71万ドル、そして強気シナリオで150万ドルと、かなり幅を持たせた予想だ。

なかでも、機関投資家の本格的参入やデジタルゴールドとしての役割強化、新興国での価値保存手段としての採用が、価格上昇の主因としてあげられている。特に強気シナリオでは、ビットコインが世界の投資ポートフォリオにおいて6.5%のシェアを占めるという仮定がなされており、現状の金の保有割合(約3.6%)を大きく上回る数値である。

さらに、ARKはアクティブ供給量とネットワーク活性度に基づいた価格予測モデルも紹介しており、この試算では2030年のビットコイン価格が最大240万ドルに達する可能性もあるとする。これは、単なる投機対象ではなく、グローバルな金融システムの一翼を担う存在としてのビットコインの進化を裏付けるものでもある。

今後の見通しと注意点

常に流動的な市況ではあるが、直近の動向はビットコインが単なる資産クラスを超えたことを証明するマイルストーンとなる。

「Sell in May」という格言がある通り、ヘッジファンドの決算時期でもあり、夏の休暇シーズンが近づく時期でもある5月は、ポジションの解消や利益確定のための売却が行われることが多いため、一辺倒でこのまま10万ドルを超えて最高値更新とはいかない可能性が高いとみている。しかし、この1週間を振り返れば、底堅さを強調した週だったのではないかと思う。

ビットコイン今後の価格シナリオ 2030年までに最大240万ドル到達へ=米ARK

[Iolite記事]
ビットコイン今後の価格シナリオ 2030年までに最大240万ドル到達へ=米ARK