暗号資産(仮想通貨)投資で利益を出したら、場合によっては確定申告が必要です。しかし、暗号資産(仮想通貨)投資に関わる確定申告は複雑な部分もあるため、しっかり理解できている方は少ないのではないでしょうか。

暗号資産(仮想通貨)投資の確定申告の概要を理解していないと、必要以上に税金を支払ったり、ペナルティが課されたりと、大きく損をしてしまう可能性が高くなります。

そこで本記事では、暗号資産(仮想通貨)取引に関わる税金の概要に加えて、所得が発生するタイミングや計算方法を解説します。記事後半では確定申告の流れやよくある質問など、より実践的な内容にも触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)にかかる税金の基本知識

まずは、ビットコインに代表される暗号資産(仮想通貨)に関する税金の基本から解説していきましょう。

暗号資産(仮想通貨)の税金は雑所得に分類される

所得税は以下の10種類に分類されます。

分類 特徴
利子所得 預貯金や債券の利子、投資信託の収益の分配など
配当所得 株主や出資者が得る配当や投資信託の収益の分配など
不動産所得 土地や建物などの不動産の貸付により得られる収益
事業所得 不動産や山林以外の事業から得られる収益
給与所得 勤務先から受ける給与や賞与など
退職所得 退職に伴い勤務先から得る所得
山林所得 所有している山林の譲渡で得られる所得
譲渡所得 ゴルフ会員権や土地、建物の譲渡で得られる所得
一時所得 謝礼金や保険金など臨時で得た所得
雑所得 上記に該当しない所得。公的年金や副業収入など

参照:所得税のしくみ|国税庁

暗号資産(仮想通貨)取引で得た所得は、雑所得に分類されます。雑所得の特徴は、以下のとおりです。

  • 損益通算ができない
  • 繰越控除ができない
  • 累進課税制度が適用される

雑所得は他の所得の金額との損益通算ができません。損益通算とは、同一年度の利益と損失を相殺することです。うまく利用できれば、課税所得を減らせるため節税につながりますが、先述のとおり、暗号資産(仮想通貨)で得た利益は雑所得に分類されるため対象とされていません。

ただし、雑所得同士・暗号資産(仮想通貨)取引同士の損益通算なら認められているので、確定申告の際に確認しましょう。

繰越控除ができない点も、雑所得の特徴です。繰越控除とは、損益通算をしても赤字が出る場合に、最大3年に渡って赤字を繰り越せる仕組みです。

取引の赤字は繰り越せない分、上場株式取引よりも税金が高くなる可能性がある点には注意しましょう。

ビットコインと電卓にTAXの文字

暗号資産(仮想通貨)の利益にかかる所得税率と住民税

暗号資産(仮想通貨)で得た利益は、「雑所得」の課税対象となるわけですが、その税率は所得額によって異なります。具体的には、税率は5~45%まであり、所得額に応じて段階的に上がっていきます。

最大税率は45%、そこに住民税の約10%が加わるため、合わせた最大税率は約55%です。

なお、株式やFXの場合、税率は一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)であり、所得額がいくらであっても変わりません。

暗号資産(仮想通貨)や株式は、どちらも主に投資目的で取引されていますが、それぞれ税区分や課税方法が違います。

暗号資産(仮想通貨) 株式・FX
税区分 雑所得 株式 … 譲渡所得
FX … 先物取引に該当する雑所得
課税方法 総合課税(他の所得と合算して計算する方法) 申告分離課税(他の所得と分けて税額を計算する方法)

株式で得た利益は、譲渡所得として扱われるため、一律20.315%の税率が適用されます。

FXで得た利益は、暗号資産(仮想通貨)と同じく雑所得に分類されますが、課税方法が異なります。FXでは、他の所得と分けて税額を計算する「申告分離課税」が適用されるため、こちらも一律20.315%の税率となり、暗号資産(仮想通貨)に比べて税負担は低めです。

暗号資産(仮想通貨)と株式のどちらも取引している場合、計算方法が混同しやすいので注意しましょう。

累進課税のイメージ

所得税率は最大55%:累進課税の仕組みを解説

雑所得の税率が段階的に上がっていく理由には、「累進課税制度」が関係しています。

累進課税とは、所得が多くなればなるほど、税率も高くなっていく仕組みのことです。税率は、5%~45%までの7段階あります。


暗号資産(仮想通貨)による所得が該当する雑所得には、この累進課税制度が適用されています。所得額に応じた税率と控除額は、以下の表のとおりです。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

参照: No.2260 所得税の税率|国税庁


このように、所得が少ない場合は税率も低く、所得が高くなるほど税率も高くなっていく仕組みが「累進課税」です。

累進課税が適用されるのは、おもに「総合課税」の所得に対してです。たとえば、給与所得や雑所得などが該当します。仮想通貨で得た利益は雑所得として扱われるため、所得額に応じて税率が変動します。

反対に、分離課税の所得には累進課税が適用されません。したがって、株式や不動産の譲渡所得、FXの取引利益といった「申告分離課税」は、一律20.315%の税率となります。

暗号資産(仮想通貨)の利益が国民健康保険料に与える影響

実は、暗号資産(仮想通貨)の利益は、自営業や個人事業主が加入する「国民健康保険料」にも影響してきます。理由は、2つあります。

  • 総合課税では、他の所得と合算して所得額を算出しなければならないから
  • 国民健康保険料は、所得金額に基づいて計算されるから

たとえば、個人事業主として事業をしている傍らビットコイン取引も行っている場合、事業所得と雑所得を合算した金額から、所得控除を差し引き、税率をかけて納税額を求めます。

国民健康保険料は、「前年の所得」をもとに計算されるため、ビットコインでの利益が増え、前年度より所得が高くなった場合、翌年に国民健康保険料も上がる可能性があります。

厳密な国民健康保険料の負担額は、自身の年齢や加入者数、自治体によっても変わるため、実際に自分の保険料がいくらになるのか知りたい場合は、お住まいの自治体のサイトをご確認ください。

仮想通貨の税金のイメージ

暗号資産(仮想通貨)取引で課税対象となるタイミングとは?

暗号資産(仮想通貨)取引で課税対象の所得が発生するタイミングは、主に以下の5つです。

  • 暗号資産(仮想通貨)を売却したとき
  • 暗号資産(仮想通貨)で何か商品を購入したとき
  • 他の暗号資産(仮想通貨)に交換したとき
  • マイニングなどで暗号資産(仮想通貨)を得たとき
  • レンディング・ステーキングで報酬を得たとき

暗号資産(仮想通貨)取引において、正確に確定申告をするには、どのタイミングで所得を得たとみなされるのかを把握することが重要です。各取引の所得の計算方法を見ていきましょう。

日本円に換金したとき

保有する暗号資産(仮想通貨)の売却は、課税対象となる取引です。計算方法はシンプルで、譲渡価額から譲渡原価を差し引いて所得金額が算出されます。

例えば、1ビットコイン(以下BTC)=100万円で購入し、150万円に上がったタイミングで売却したとします。この場合、150万円 – 100万円 = 50万円より、所得金額は50万円です。

その他、必要経費があれば譲渡価額から差し引いて所得を計算します。

なお、譲渡原価は総平均法または移動平均法で算出します。詳しくは後述します。

暗号資産(仮想通貨)で商品を購入したとき

暗号資産(仮想通貨)で何か商品を購入したときも、所得が発生する可能性があります。

1BTC=100万円分で購入し、その後1BTC=500万円に上がったタイミングで50万円の商品を0.1BTCで購入するケースを考えてみましょう。この場合、以下の計算式で所得が算出されます。

50万円 - (100万円 × 0.1) = 40万円

または

(500万円 - 100万円) × 0.1 = 40万円

保有している暗号資産(仮想通貨)で何かしらの商品やサービスを購入した場合、いったん譲渡したとみなされるので、十分注意しましょう。

他の暗号資産(仮想通貨)と交換したとき

暗号資産(仮想通貨)を他の暗号資産(仮想通貨)に交換したときは、暗号資産(仮想通貨)Aで暗号資産(仮想通貨)Bを購入したと捉えられます。「暗号資産(仮想通貨)で何か商品を購入したとき」と同様に、取引に伴い所得が発生します。以下の条件で、所得がいくらになるのか見ていきましょう。

  • 1BTC=100万円のときに、3BTCを購入
  • その後、5イーサリアム(以下ETH)を購入するのに1BTCを支払った
  • なお、1ETH=30万円だとする

BTCとETHを交換する上記の取引は、BTCでETHという商品を購入していることになります。ETHの購入額は、30万円 × 5 = 150万円です。売却した1BTCの譲渡原価は100万円なので、所得金額は以下の通り計算されます。

150万円 - 100万円 = 50万円
bitcoin鉱山プールで作業するワーカー|クリプトマイニングのイメージ

マイニングで報酬を得たとき

マイニングで得た暗号資産(仮想通貨)は、課税対象となります。

マイニングとは、ブロックチェーン上で行われる暗号資産(仮想通貨)の取引内容を確認・承認する作業です。暗号資産(仮想通貨)取引の正確性や透明性を保つために欠かせない作業なので、報酬が支払われます。ビットコインのマイニング報酬は、約4年ごとに発生する「半減期」を迎えるたびに半減するルールになっており、2024年4月以降のマイニング報酬は3.125BTC(約5,000万円)です。(※)

マイニングで利益を得るには、専用のマシンや莫大な電気量が必要になります。あまり一般的な利益の上げ方ではありませんが、知識として知っておいて損はないでしょう。

(※)1BTC=1,600万円で計算

レンディング・ステーキングで報酬を得たとき

レンディングやステーキングで報酬を得た際も、所得が発生したとみなされます。報酬で得た暗号資産(仮想通貨)は、報酬を受け取った時点での時価がそのまま所得となります。

また、報酬で受け取った暗号資産(仮想通貨)の価格が上がったタイミングで売却した場合は、差額分が所得となる点にも注意しましょう。

レンディング報酬にかかる税金についての詳細は以下の記事をご確認ください。

暗号資産(仮想通貨)を保有したままの場合や、年跨ぎで売った場合はどうなる?

暗号資産(仮想通貨)取引における利益確定のタイミングは、暗号資産(仮想通貨)を売却したとき、または他の暗号資産(仮想通貨)と交換したときです。ただ保有しているだけでは利益確定には当たりません。

たとえば、2024年4月に1BTCを購入し、同年10月に売却した場合、利益が確定するのは2024年10月の売却時です。ビットコイン購入時と売却時の差額が利益として認識され、税金の対象になります。

一方、2024年4月に購入した1BTCを2025年まで持ち続けていた場合、その間は利益確定にはならないため、税金の支払いは発生しません。2025年に売却して利益が出た時点で、利益が確定します。なお、購入価格は2024年時点の購入価格をそのまま引き継ぎます。

電卓をたたく人|税金の計算するイメージ

暗号資産(仮想通貨)の税金計算方法

暗号資産(仮想通貨)にかかる税金は、収入-経費=利益で算出されます。経費となる取得価額の計算方法には、総平均法と移動平均法の2種類があります。

総平均法は、年度内の暗号資産(仮想通貨)購入額を購入数量で割って取得価額を算出する方法です。

一方の移動平均法は、暗号資産(仮想通貨)を取得するたびに取得価額を計算します。取引の仕方によっては、総平均法と移動平均法で所得金額が異なります。このどちらかの方法で算出された所得に対して税金がかかるため、まずは所得を正しく計算できるようにしていきましょう。

暗号資産(仮想通貨)の税金を計算する方法

暗号資産(仮想通貨)取引で得た利益の算出方法は、大きく分けて「移動平均法」と「総平均法」の2つです。

1回だけ取引をした場合と、複数回取引をした場合で両者の計算方法は異なるのでそれぞれ見ていきましょう。

《購入と売却を1回ずつ行うケース》

まずは、購入と売却をそれぞれ1回ずつ行うケースの具体例を紹介します。

  • 300万円で3BTC購入
  • 1BTC=150万円になったタイミングで1BTCを売却

1BTCを購入するのにかかった費用は 300万円 ÷ 3 = 100万円 です。所得金額は 150万円 – 100万円 = 50万円 となります。購入と売却がともに1回のケースでは、総平均法と移動平均法で所得金額は変わりません。

《複数回購入するケース》

続いて、売却するまでに複数回購入するケースを見ていきましょう。

  1. 150万円で1BTC購入
  2. 200万円で1BTC購入
  3. 300万円で1BTC売却
  4. 250万円で1BTC購入

《総平均法》

総平均法では購入金額の合計600万円を購入枚数の3枚で割った、200万円 を1枚あたりの単価とみなします。したがって、所得金額は

300万円 - 200万円 = 100万円

《移動平均法》

移動平均法では2の取引が終わった時点で一度平均を計算します。購入単価は

(150万円 + 200万円) ÷ 2 = 175万円

その後売却しているので、所得金額は

300万円 - 175万円 = 125万円

上記のケースでは、総平均法のほうが所得金額が少なく計算されますが、将来的に渡る計算は結果一致します。

「移動平均法」と「総平均法」の違い

上述のように、移動平均法と総平均法の大きな違いは、単価計算を行うタイミングです。

移動平均法の特徴

移動平均法では取引ごとに単価の計算を行うため、常に最新の平均単価・損益の状況を把握しながら計算を行うことができます。

ただし、毎回の取引で新しい平均単価を計算する必要があるため、取引回数が多いケースや短期間での売買が多いケースでは、そのぶん計算する手間がかかります。

総平均法の特徴

総平均法は、取引ごとに計算をする必要がありません。1年間の合計購入金額から合計購入数量を割って暗号資産(仮想通貨)1枚あたりの平均単価を計算するため、シンプルさ、手軽さが大きなメリットです。頻度が少なく、計算の手間も少ないので管理もしやすいでしょう。

一方で、市場の変動が大きい場合は体感と大きく乖離した計算結果になることもあります。また、1年間が終了しないと単価の計算を行うことができないため、平均単価や損益の状況を把握しながらトレードを行いたい方にとってはもどかしく感じるかもしれません。

計算方法の変更について

なお、計算方法は届出を出すことによって変更できますが、届出していない場合は、自動的に「総平均法」の選択になっています。どちらの評価方法を選択しても、将来的に所得は同じですが、常に最新の損益や取得単価を把握しておきたい際は、移動平均法へ変更する届出をしましょう。

ただし、一度選択した評価方法は、3年間変更できない ため慎重に検討することをおすすめします。

年間取引報告書のイメージ

取得価額や必要経費の計上方法

暗号資産(仮想通貨)取引の税金計算を行うとき重要になるのが、取得価額と経費です。仮想通貨を購入するためにかかった費用が「取得価額」です。取得価額は暗号資産の購入金額や取引にかかった手数料から計算します。

暗号資産(仮想通貨)の購入金額は「年間取引報告書」や「取引履歴」などに記載されていることも多いため、必要に応じて仮想通貨取引所のホームページからダウンロードしましょう。

みなし取得価額の活用

取得価額がどうしてもわからないときは、「みなし取得価額」を活用するのもひとつの方法です。みなし取得価額とは

「取得価額が不明な仮想通貨に対して、売却した金額の5%相当額を取得価額とみなしてよい」

というものです。

経費計上できる可能性があるもの

また、暗号資産(仮想通貨)取引に直結する支出のほか、暗号資産(仮想通貨)関係の書籍代や取引に使用する備品など「暗号資産(仮想通貨)取引を目的とした支出」は、経費計上できる可能性があります。

  • 暗号資産(仮想通貨)の取得費用
  • 売却の際に支払った手数料
  • インターネットやスマートフォン等の回線利用料
  • パソコン等の購入費用
  • 暗号資産(仮想通貨)関連の書籍代やセミナー代
  • 確定申告に使うツール代 など

ただし経費にできるかどうかは、暗号資産の売却のために直接必要な支出であると認められる必要があり、判断が難しいケースも少なくありません。迷った際には、税理士と相談しながら決めるとよいでしょう。

参照: 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)|国税庁

具体的なケースについて

利益が20万円以下の場合の対応

年末調整を行っている給与所得者で、暗号資産(仮想通貨)で得た利益が20万円以下の場合は、確定申告は不要です。しかし、利益が20万円以下でも、他の所得金額との合計が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要になります。

詳しくは本ページの「確定申告が必要なケースと注意点」にて解説しています。

利益が20万円を超える場合の課税対応

暗号資産(仮想通貨)取引での利益が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。事業所得や不動産所得、配当所得、暗号資産(仮想通貨)以外の雑所得もあるなら、合わせて確定申告書に記載します。

そして前述のように、他の所得と合算した総所得額から控除額を差し引き、納税額を算出して申告しましょう。

利益が1億円を超える場合の税金の注意点

累進課税なので課税所得に比例して税負担が重くなります。利益が1億円だったと仮定して実際にシミュレーションしてみましょう。所得税を計算する際は、以下の速算表を使用します。

所得税の速算表

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

引用: No.2260 所得税の税率|国税庁

所得1億円の場合、以下のような計算になります。

1億円 × 45% - 4,796,000円 = 40,204,000円

さらに、所得税とは別に住民税が約10%加わります。

1億円 × 10% = 1,000万円

所得税 40,204,000円 と住民税 10,000,000円 を合計した 50,204,000円 が納税額です。

シミュレーションでは考慮していませんが、扶養控除や医療費控除、寄付金控除などの所得控除を差し引くと、納税額が多少減額されます。

確定申告のイメージ

確定申告の基礎と実践

ここからは、暗号資産(仮想通貨)取引に関する確定申告の基本的な事項や、確定申告の方法などについて解説していきます。

先述のとおり暗号資産(仮想通貨)で年間20万円を超える利益を得たら、確定申告が必要です。確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を算出し、納税額を計算して税務署に申告する一連の手続きです。

暗号資産(仮想通貨)取引の場合は、移動平均法と総平均法のどちらの計算方法を利用するのかも併せて申告する必要があります。

会社員の場合は会社が給与から所得税を天引きし、納税しているので、あまり馴染みがないかもしれません。初めての場合は難しく感じるかもしれませんが、流れを押さえておくと取り組みやすくなります。次章で、暗号資産(仮想通貨)の確定申告のやり方を詳しく解説します。

確定申告のやり方を徹底解説

暗号資産(仮想通貨)の所得の確定申告を行う際は、申告書の「雑所得」の欄に、暗号資産(仮想通貨)取引での所得を記入します。ここでは、確定申告をする際の必要書類や手順を紹介します。

必要な書類と提出方法

暗号資産(仮想通貨)の確定申告で必要な書類は、以下のとおりです。

  • 確定申告書
  • 源泉徴収票(給与所得者の場合)
  • 各種控除を証明する書類(医療費控除などを受ける場合)
  • 本人確認書類の写し(書面で郵送する場合)

確定申告書は、国税庁のWebサイトで作成することができるほか、確定申告ソフトからも作成できます。各書類は、申告書に入力・記入する際に必要になるため、手元に用意しておきましょう。

申告書の提出方法

申告書の提出方法は、以下の3通りあります。

  • e-Taxで電子申告する
  • 税務署へ持参する
  • 書面一式を郵送する

郵送する際は、税務署で本人確認を行うためにマイナンバーカードや運転免許証といった本人確認書類の写しを添付する必要があります。添付してから郵送しましょう。

暗号資産(仮想通貨)の取引履歴、損益計算の資料については提出の必要はありませんが、税務調査が入った際に根拠書類となるので大切に保管しておきましょう。

年間取引報告書の使い方

年間取引報告書は、暗号資産(仮想通貨)取引所から発行される、暗号資産(仮想通貨)の取引に関する1年間の取引内容をまとめた報告書です。取引の日時や通貨の種類、数量や価格、手数料などの詳細が記載されているのが一般的なため、損益計算を行う際に役立ちます。

国税庁では、年間取引報告書を活用した「仮想通貨の計算書」の作成方法も公開しています。

参照: 仮想通貨の所得が簡単に計算できるようになりました。|国税庁

e-Taxを活用した電子申告の手順

e-Taxを利用した電子申告は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」から作成できます。操作方法は以下のとおりです。

  1. 「確定申告書等作成コーナー」をクリック
  2. 「申告書等を作成する」のページに遷移したら「作成開始」をクリック
  3. 申告書の提出方法を選択する画面に遷移し、選んでクリック
  4. 案内に従って進んでいき「作成する申告書等の選択」画面に移動。「所得税」を選択
  5. 次のページで基本情報を入力。記入が終わったら「次へ」をクリック
  6. 源泉徴収票の情報を入力(会社員の場合)
  7. 「雑所得(業務)、雑所得(その他)」をクリックし、仮想通貨の収入金額や経費を入力
  8. 入力が完了したら「入力内容の確認」をクリックし、入力した内容が反映されているか確認
  9. (医療費控除や寄附金控除などがある場合)案内に従って入力
  10. 送信して申告手続きを終了

参照: e-Tax公式サイト|国税庁

確定申告が必要なケースと注意点

以下の条件のいずれかに当てはまる場合は、確定申告が必要です。

  • 暗号資産(仮想通貨)取引で得た所得が年間20万円を超える場合
  • 暗号資産(仮想通貨)取引と他の所得(副業収入など)を合算すると年間20万円を超える場合
  • 給与収入が年間2,000万円を超える場合
  • 給与を2か所以上から受けている場合
  • 公的年金の収入金額が年間400万円を超える場合
  • フリーランス、個人事業主として働いている場合

給与収入がなく家族の扶養に入っている主婦(主夫)や学生の場合は、暗号資産(仮想通貨)の利益が48万円(基礎控除)を超えると確定申告が必要です。

このように「暗号資産(仮想通貨)の利益が20万円以下」であっても、確定申告をしなければならないケースがあるため、暗号資産(仮想通貨)の利益額だけで確定申告の有無を判断しないようにしましょう。

確定申告を忘れた場合のリスクのイメージ

確定申告を忘れた場合のリスク

先ほど少し触れましたが、確定申告をしなかったり提出をし忘れたりすると、延滞税や加算税といったペナルティが課されるリスクがあります。ここでは、延滞税や加算税の計算方法や、罰則事例について紹介します。

確定申告をしなかった場合のペナルティ

確定申告をしなかった場合、ペナルティとして次の税金が加算される可能性があります。

  • 延滞税:本来の納税期限までに納付できなかった場合に課税される税金。期限から遅れるほど、税額が上がる。
  • 無申告加算税:確定申告の期限内に納付できなかった場合に課税される税金(最大30%)。
  • 過少申告加算税:申告した税額が、実際に支払うべき税額より少なかった場合に課税される税金(10%または15%)。
  • 重加算税:税務署が「意図的な不正をした」と判断した場合に課税される税金(35%または40%)。

たとえば、確定申告を失念していたパターンでは「延滞税+無申告加算税」がかかりますが、「意図的に確定申告を避けている」「何らかの不正をしている」などと判断されてしまうと「延滞税+重加算税」が加算される可能性が考えられます。

「無申告加算税」や「過少申告加算税」などは、自主的に申告することでペナルティを軽くすることができるため、申告間違いや申告忘れに気づいた時点で早めに税務署へ申し出ましょう

延滞税・加算税の計算方法

延滞税は、申告期限の翌日から完納する日までの日数に応じて計算されます。

延滞税・加算税の計算方法を解説した図

引用:延滞税の計算方法|国税庁

延滞税の割合は、納付期限から遅れている期間に応じて変わります。

  • 納付期限の翌日から2か月を経過する日まで:「年7.3%」または「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
  • 納付期限の翌日から2か月経過後:「年14.6%」または「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合

それぞれ計算した①と②の合計額が、延滞税として追加で加算されます。

加算税では「納付すべき税額 × 課税割合」という形で課税されますが、自主申告の有無や納付すべき金額によって、かけられる課税割合が異なります。

申告タイミング 課税割合
税務署から通知が来る前に自主的に申告した 納付すべき税金×5%
税務署から事前通知が来たあとに申告した場合 納付すべき税金×10%(50万円まで)
・50万円超300万円以下の部分は15%
・300万円超の部分は25%
税務署の調査を受けたあとに申告した場合 納付すべき税金×15%(50万円まで)
・50万円超え300万円までの部分は20%
・300万円を超える部分は30%

参照: No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁

確定申告の期限に遅れないよう、早めに準備を始めましょう。

最悪の場合の罰則や懲役

暗号資産(仮想通貨)の納税をめぐっては、ビットコイン取引で過少申告をした男性が有罪判決を受けるという事態も起きています。

  • 経緯
  • 2017年から2018年にかけてビットコイン取引で約2億円の利益を得るも、確定申告では「利益120万円」と虚偽の申告をする
  • 2020年3月、約7,700万円の利益を脱税したとして、金沢国税局が男性を告発
  • 男性は、金沢地裁で懲役1年、執行猶予3年、罰金1,800万円の有罪判決を言い渡された

上記の事例は、暗号資産(仮想通貨)関連の脱税事件で初めての判例ともいわれています。

ネットやSNS上では「暗号資産(仮想通貨)同士の交換であれば非課税」といった誤った情報も出回っているため、さまざまな情報に惑わされず正しい知識を深めていくことが大切です。

節税対策

暗号資産(仮想通貨)の税金対策と節税方法

暗号資産(仮想通貨)取引にかかってくる税負担は重くなりがちなため、できる限り節税したいところです。そこでこの章では、税金対策として知っておきたいポイントや節約方法を紹介します。

税金対策として知っておきたいポイント

暗号資産(仮想通貨)の税金対策には、所得の調整や経費計上、「ふるさと納税」などの所得控除の活用、そして法人化などさまざまな方法があります。なかでも大きな節税が期待できる方法は、損益通算法人化です。

暗号資産(仮想通貨)で得た利益は雑所得のため、基本的には他の所得と損益通算ができません。しかし、雑所得同士での損益通算は可能です。

法人化するメリット

法人化する方法は、実際のところハードルは高いのですが、以下のようなメリットがあります。

  • 所得税(最大45%)から法人税(最大23.2%)の適用になり、税負担が軽くなる
  • 他の所得と損益通算できるようになる
  • 赤字を繰り越せるようになる
  • 経費にできる範囲が広がる

個人での暗号資産(仮想通貨)取引の「税率が高い」「赤字を繰り越せない」「他の所得と損益通算ができない」といった問題が法人化によって解消されるため、大きな節税につながります。

法人化や事業所得として申告する方法

暗号資産(仮想通貨)取引で法人化する流れは、以下のとおりです。

  1. 定款を作成する
  2. 定款の認証を受ける
  3. 資本金を払い込む
  4. 登記申請書類を作成・提出する

法人登記が完了したら、法人銀行口座の開設や、社会保険加入の各種手続き、個人事業の廃業の手続きなどを進めていきます。

事業所得として申告する方法

暗号資産(仮想通貨)取引を「事業所得」として認めてもらうには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 暗号資産(仮想通貨)による年間収入が300万円を超えている
  • 帳簿を作成・保存している

暗号資産(仮想通貨)で一定以上の収入がある場合は、事業所得として申告するのもひとつの方法かもしれません。

暗号資産(仮想通貨)の損失を活用する節税術

節税するには、暗号資産(仮想通貨)の利益や損失を調整して、課税される所得額を少なくすることが重要になります。具体的には全体で利益が出ているときには「含み損」を確定させる方法が有効です。

すでに確定している「実現損失」は課税対象になりますが、「保有しているだけ」の暗号資産(仮想通貨)は損益が確定しておらず、課税の対象ではありません。その「未実現の暗号資産(仮想通貨)」を利用して損益を調整する節税方法です。

損失を活用した節税の具体例

たとえば、利益が10万円出ているときに、含み損のある暗号資産(仮想通貨)を売却して5万円の損失を確定させたとします。すると、年間の利益額はこの損失を相殺した5万円に減ります。本来なら「利益10万円」が課税対象になるところ、実質「5万円」に抑えることができるため、結果的に節税につながるのです。

取引における損失もうまく活用して税負担を軽減しましょう。

節税に役立つツールやサービスの活用

暗号資産(仮想通貨)の損益計算ができるツールを活用することも、結果的に節税の役に立ちます。

  • 損益計算ツール「Gtax」では、複雑な損益計算を自動で計算してくれるだけでなく、現在のポートフォリオからどれだけ節税できるかのシミュレーション機能も提供しています。
  • 損益計算ツールを使ってポートフォリオを管理しておくと、それぞれの暗号資産(仮想通貨)の利益や損失が一目でわかるため、計画的な節税対策にも役立ちます。
税制の注意点のイメージ

暗号資産(仮想通貨)取引と税制の注意点

暗号資産(仮想通貨)はまだ歴史の浅い金融資産のため、たびたび税制改正が行われています。現在の仮想通貨(暗号)取引における税制や注意点を紹介します。

暗号資産(仮想通貨)取引での税制のルールと課題

暗号資産(仮想通貨)取引で得た所得は、最大で55%かかる点や損益計算が煩雑になるなど様々な課題があります。

そのため、暗号資産(仮想通貨)の業界団体からは、以下のような税制改正案が提出されています。

  • 申告分離課税の導入
  • 繰越控除の導入
  • 暗号資産(仮想通貨)間取引の非課税化

暗号資産(仮想通貨)の相続や売却時の税負担

自分の親などから暗号資産(仮想通貨)を相続した場合、相続税の対象となります。仮想通貨は「相続財産」とみなされるためです。

仮想通貨を含めた「相続財産」の合計額が基礎控除額を超えない場合は、相続税はかかりませんが、基礎控除額を超える場合は相続税がかかってくるため、申告が必要です。

《相続税の基礎控除額の計算式》

3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

法定相続人とは、民法上相続できる人を指します。

相続税率は、遺産額に比例して税率が高くなる「累進課税」となっており、最大税率は55%です。

相続した暗号資産(仮想通貨)の売却と税負担

もし相続したビットコインなどを売却した場合は、通常の暗号資産(仮想通貨)取引と同様に利益は雑所得の扱いとなり、住民税を含めて最大55%かかります。このとき、事前に納めた相続税は差し引かれません。

つまり、すでに納めた相続税も含めて所得税の対象になってしまう「二重課税」状態になり、最近では最大で110%の税率がかかるとSNS等で話題になりました。

多額の暗号資産(仮想通貨)を親から相続したとしても、税負担によって財産が手元に残らないケースも十分に考えられます。暗号資産(仮想通貨)を事前に現金化するなどして、家族で扱いやすい状態にしておくのが望ましいでしょう。

参照: No.4155 相続税の税率|国税庁

税金のFAQ

暗号資産(仮想通貨)の税金に関するよくある質問

暗号資産(仮想通貨)取引の確定申告の大まかな内容を理解できたら、細かい知識を身につけるために、よくある質問を見ていきましょう。

確定申告はいつまでにすれば良い?

確定申告の申告期限は、特別措置などがある場合を除き、原則2月16日〜3月15日です(土日が重なる場合は後ろ倒しになります)。

気をつけなければならない点は、納税の期限も申告期限と同じ3月15日という点です。確定申告書を期限ギリギリで提出できたものの、納税が間に合わなかったという事態にならないように、余裕を持って動きましょう。

レンディング報酬の計算はまとめてできる?

レンディングの報酬を受け取った場合、受け取った時点の時価がそのまま利益となります。しかし、面倒だからと言って12回分をまとめて受け取り、ある特定の日の時価で利益を計算することはできません。

1年間で報酬を12回受け取った場合、それぞれの日の時価を調べて利益を計算する必要があります。Gtaxのような計算ツールでは時価を自動で取得するため、報酬の受け取り回数が多い場合は効率化することができます。

レンディング報酬にかかる税金についての詳細は以下の記事をご確認ください。

損益計算の時価情報はどこを参照すればいい?

損益計算を行う中で、レンディング・ステーキング報酬やエアドロップ、暗号資産(仮想通貨)同士のトレードなど、日本円建てでの時価が必要になることがあります。

時価の参照元については特に明確に定められているわけではありませんが、メインで利用する取引所が提供する価格データ価格情報サイトのものを使うのが一般的です。

(一貫して同じ情報ソースを使うことが望ましいです)。

様々な仮想通貨

まとめ

本記事では、暗号資産(仮想通貨)投資にかかる税金の概要を解説しました。

暗号資産(仮想通貨)の取引で得た利益は雑所得に分類されます。損益通算・繰越控除ができない点や、累進課税制度が適用されている点には十分注意しましょう。

所得を得たとされるタイミング

暗号資産(仮想通貨)で所得が発生するタイミングは、以下のとおりでした。

  • 暗号資産(仮想通貨)を売却したとき
  • 暗号資産(仮想通貨)で何かの商品を購入したとき
  • 他の暗号資産(仮想通貨)に交換したとき
  • マイニングなどで暗号資産(仮想通貨)を得たとき

各取引でどの程度利益が発生するのか、日頃から管理していると、確定申告が比較的楽になるでしょう。

暗号資産(仮想通貨)の確定申告は少々複雑なため、初めての人は難しく感じるかもしれませんが、本記事で紹介した流れに従って進めてください。このとき、申告期限を過ぎたり認められる範囲を超えて経費計上したりすると、ペナルティが課されるケースがあります。正確に申告を行うためにも、正しい知識を身につけておきましょう。

Gtaxのトップページのスクリーンショット

暗号資産(仮想通貨)の税金計算ツール「Gtax」のご紹介

Gtaxは、複雑な仮想通貨の利益計算を自動で行うことができるツールです。
BitLendingをはじめとした70以上の仮想通貨サービス(取引所など)の取引履歴、2万種類以上のコインに対応しています。

本ページで説明したように、レンディングでは報酬を受け取る度にその日のレートを調べて利益の計算を行う必要がありますが、Gtaxでは取引履歴をアップロードするだけで、確定申告の際に必要な利益額を自動で計算します。

Gtaxの詳細はこちら(登録無料):
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