今週のビットコイン

今週のビットコイン

今週のビットコイン市場の見通しをまとめています。先週のマーケットの振り返りや、今週の経済イベントについても注目ポイントを明らかにして、トレード戦略の組み立てをサポートしています。

ビットコイン9万ドル割れの真相:量子コンピュータ懸念と米国指標が揺らした暗号資産市場|週間ビットコイン予想 2025.11/24-30

2025.11.25

先週の米国金融市場と暗号資産市場の総括

先週の米国金融市場は、米国政府機関の活動が再開されたものの政府機関閉鎖による経済的な影響や、12月のFOMC(連邦公開市場委員会)での利下げ期待の後退とAI・ハイテク銘柄の高バリュエーションへの懸念を受けて調整から始まりました。19日にNVIDIA社の決算発表を控え、様子見の色合いが一段と強くなった形です。しかし週末にはNY連銀のウィリアムズ総裁によるハト派的な発言やNVIDIA(エヌビディア)社への好材料などで反発して終わっています。一方で暗号資産(仮想通貨)市場は反発の糸口をつかめないままBTCを中心に大きく調整した週となりました。

ビットコインはリスク資産として株式市場、とりわけハイテク・グロース株と同じ「金利感応度の高いアセット」としてみられる局面が多く、利下げ期待の後退やバリュエーション懸念が強まると、機関投資家のポジション圧縮のなかでまとまった売りが出やすくなります。先週はまさにその典型例であり、マクロ要因とセンチメント悪化が重なったことで、価格調整が一段と加速した形といえます。

日次のマーケット動向

11月17日(月)〜18日(火):調整ムードの継続とBTCの下落

17日は前週からの調整ムードを引き継いだような展開から始まりました。具体的には、政府機関の活動は再開されたものの長期にわたった閉鎖による経済的な影響を懸念し、また前週にあったFRB高官による相次ぐ利下げに対しての慎重な発言から、利下げ期待は後退しました。さらに株式市場ではAI・ハイテク株の高バリュエーションへの懸念もあるなかで、19日に発表されるNVIDIA社の決算を控えて、様子見姿勢が一段と強まりました。

17日、18日とNY株式市場は連日調整となり、2日間でNYダウ平均は-1,055ドル、S&P500は-116ポイント、NASDAQは-467ポイントと大きく下落しました。暗号資産市場もほぼ株式市場と同様の動きとなりましたが、17日にBTCは94,200ドル台(約1,450万円台)から始まり、一時96,000ドル台(約1,480万円台)まで上昇する場面もありましたが、92,200ドル台(約1,430万円近辺)で終了しました。18日は一段と調整色が強まり、89,300ドル(約1,385万円)近辺まで下落し、93,000ドル手前(約1,445万円近辺)で終わりました。

この局面では、短期筋の利益確定売りに加え、レバレッジをかけたロングポジションの解消が進んだ可能性が高いと考えられます。価格が90,000ドル台前半から一時80,000ドル台後半まで急速に水準を切り下げたことで、デリバティブ市場ではロスカットを巻き込みながら出来高が膨らんだと推測され、ボラティリティの上昇が現物市場の投げ売りを誘発する典型的な「下げ相場のパターン」がみられたといえます。

11月19日(水):NVIDIA決算前の様子見と暗号資産の不安定さ

19日はNVIDIA社の決算発表を控えて様子見姿勢が強まりましたが、AI・ハイテク株へ買い戻しが入り、株式市場は若干上昇しました。しかし暗号資産市場は下値が固まらず不安定な動きが続き、BTCは再度90,000ドル(約1,405万円)を割れ、88,600ドル近辺(約1,385万円)まで下落し、91,500ドル近辺(約1,430万円)で終わりました。

株式市場が小幅に切り返す一方で、ビットコインが反発しきれなかった点は、市場参加者の間で「暗号資産固有の売り材料」が意識されていたことを示唆しています。マクロ環境だけでなく、量子コンピュータリスクなど暗号資産に特有の不確実性が強く意識され始めたタイミングでもあり、投資家心理はかなり防御的になっていたと考えられます。

量子コンピュータリスクとは?

量子コンピュータリスクとは、量子コンピュータの実用化によって、現在の暗号資産が前提としている暗号技術の安全性が将来的に揺らぐのではないかという懸念のことを指します。ビットコインを含む多くの暗号資産は、公開鍵暗号や電子署名といった仕組みによって「誰が保有する暗号資産か」「正当な送金か」を保証していますが、十分に高性能な量子コンピュータが実現すると、従来のコンピュータでは事実上不可能とされてきた速度で秘密鍵の推測や署名の偽造が理論的には可能になるのではないか、という問題意識が背景にあります。

11月20日(木)〜21日(金):株式反発と暗号資産の続落

20日(木)は好調な決算としっかりした見通しを発表したNVIDIAの決算を受けて株式市場は大きく反発しましたが、利下げ期待が大きく後退するなかで上昇は続かず下落しました。暗号資産市場は株式市場につられ、BTCは一時93,100ドル台(約1,450万円台)まで買われましたが、その後は下げ足を速めて86,600ドル台(約1,360万円台)で終わりました。

21日(金)になるとトランプ大統領がNVIDIAの対中国輸出に関して一部承認をしたことや、NY連銀のウィリアムズ総裁が「12月のFOMCで利下げ余地がある」とコメントしたことを好感して株式市場は上昇しました。NYダウ平均が+202ドル、S&P500が+102ポイント、NASDAQが+598ポイントと久しぶりに大きく上昇しました。しかし暗号資産市場は相変わらず下値模索が続き、BTCは90,000ドルを割れた動きから一時80,600ドル台(約1,260万円台)まで下落しました。その後は買い戻しが入り、85,100ドル台(約1,330万円台)で終わりました。

アルトコインの動き(ETH・XRP・SOL)

ETHは週初3,060ドル(約47.8万円)台から始まり、3,200ドル(約50万円)手前まで買われましたが、その後はビットコイン同様にリスクオフの流れを受けて続落し、週末には2,630ドル(約41.1万円台)まで下落し、2,770ドル(約43.3万円)前後で終わりました。スマートコントラクトやNFT、DeFiの基盤としてのファンダメンタルズは引き続き堅調とみられているものの、ガス代上昇への警戒感やマクロ要因によるセンチメント悪化が重なり、上値を追う動きは限定的でした。

XRPは2.20ドル前半(約340円台)からスタートし、一時1.80ドル(約280円台半ば)まで下落した後、1.90ドル(約300円台半ば)で取引を終えました。国際送金インフラとしての実需期待は継続しているものの、規制・訴訟を巡る不透明感や、直前までの上昇局面で積み上がっていた短期筋のポジション調整が進んだことで、上値では戻り売りに押されやすい展開となりました。一方で、今週に入ってからはビットコインの持ち直しや市場全体のリスク選好の回復に加え、XRPを活用した送金インフラへの期待が改めて意識されたことで買い戻しが優勢となり、足元では値を戻す動きが目立つ状態です。

SOLもビットコインや主要アルトコインと同様に調整基調となりました。高速・低コストなチェーンとしてNFTやDeFi分野での採用が進んでいる一方で、ネットワークの安定性に対する懸念や、値動きの大きい銘柄としてリスクオフ局面で売られやすい性質が意識され、週を通じて戻り局面では上値が抑えられる展開が続いたといえます。

このように、株式市場が一時的にリスクオンに傾く局面でも暗号資産市場の戻りが限定的であったことは、「マーケット全体のリスク選好回復」よりも「暗号資産特有のリスク回避」が優勢であったことを示しています。テクニカル面では、心理的な大台である90,000ドルや80,000ドル台前半があらたなサポート候補として意識される一方で、中長期のトレンドラインや移動平均線を割り込むことで、システムトレードによる売りシグナルが点灯しやすい地合いでもありました。

量子コンピューターのモニター

量子コンピュータ懸念と市場心理の揺らぎ

先週は、シリコンバレーの著名ベンチャー投資家のチャマス・パリハピティヤ氏が「量子コンピュータが2〜5年以内に実用化され、ビットコインへの脅威が現実のものとなる」と主張する動画がX上で拡散されたことで暗号資産に対する懸念が広がり、狼狽売りが出ていた可能性があります。その後、ビットコインインフラ企業Blockstream社CEOのアダム・バック氏が、量子コンピュータがビットコイン(BTC)の脅威となる可能性について「そうなった場合でも、おそらく20年から40年は大丈夫だろう」との見解を示し、安心感が広がってきました。また19日にはスタンダード・チャータード銀行のジェフリー・ケンドリックス氏(デジタル資産調査責任者)が「BTCの価格調整は終わった」と述べています。こうした一連の動きがあった後、BTCを始めとして21日の下落で大底を形成したのかどうかを意識しつつ、翌22日からは各銘柄とも反転上昇を始めています。

量子コンピュータとビットコインの関係は、暗号技術の専門家の間でも議論がわかれるテーマです。現時点では、ビットコインで使われている暗号方式を現実的な時間内で破るだけの量子計算能力は存在しないとされており、仮に将来その段階に達したとしても、プロトコルやウォレット側の暗号方式をアップグレードすることでリスクを軽減できるという見方が有力です。とはいえ、「もしかするとビットコインの安全性が揺らぐかもしれない」というストーリーは、弱気相場で広がりやすく、今回のように市場がナーバスになっている局面では価格下落を増幅する要因となり得ます。

一方で、著名金融機関から「BTCの価格調整は終わった」といったコメントが出てくることは、中長期のファンダメンタルズに対する市場の信認が依然として高いことを示しています。長期投資家にとっては、こうしたボラティリティの高い局面が、将来の上昇を見据えた積み増しのタイミングとして意識されるケースも多く、実際に21日以降の反転上昇は、悲観一色に傾きすぎたセンチメントの巻き戻しとして説明することができます。

今週の経済イベントカレンダー
Calendar of Economic Events This Week

曜日日本時間経済イベント重要度
11 25 22:30 米国 生産者物価指数(PPI)9 月 ★★★☆☆
11 25 22:30 米国 小売売上高 9 月 ★★★★★
11 25 23:00 米国 S&P ケースシラー住宅価格指数 9 月 ★★★☆☆
11 25 24:00 米国 リッチモンド連銀製造業指数 11 月 ★★★☆☆
11 25 24:00 米国 CB(コンファレンスボード)消費者信頼感指数 11 月 ★★★★☆
11 25 24:00 米国 中古住宅販売成約指数 10 月 ★★★★☆
11 26 22:30 米国 耐久財受注 9 月 ★★★★☆
11 26 22:30 米国 新規失業保険申請件数 11/16-11/22 ★★★☆☆
11 26 23:45 米国 シカゴ購買部協会景気指数(PMI)11 月 ★★★☆☆
11 26 24:00 米国 新築住宅販売件数 10 月 ★★★★☆
11 28 08:50 日本 鉱工業生産指数 10 月 ★★★☆☆
11 28 08:50 日本 小売業販売額 10 月 ★☆☆☆☆
11 28 未定 米国 生産者物価指数(PPI)10 月 ★★★★☆
11 28 未定 米国 消費者物価指数(CPI)10 月 ★★★★★
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今週は政府機関の活動再開により多くの経済指標が発表となりますが、そのなかでPPI(生産者物価指数)とCPI(消費者物価指数)が25日と28日に発表されます。さらにCB(コンファレンスボード)消費者信頼感指数やシカゴ購買部協会景気指数の発表もあり、インフレの動向がある程度明確になる可能性があります。インフレ沈静化となれば、12月の追加利下げへの大きな支援材料となりそうです。もちろん景気動向をみていく上で小売売上高や新築及び中古住宅の販売件数も重要となりそうです。

インフレ指標はビットコイン市場にとっても極めて重要です。インフレが想定以上に高止まりすれば、金利の高止まり・再利上げ懸念につながり、リスク資産全般にとって逆風となります。一方、インフレが落ち着きをみせれば、実質金利の低下期待を通じて「デジタル・ゴールド」としてのビットコインへの資金シフトが意識されやすくなります。特にPPIは企業側のコスト動向、CPIは家計の購買力とインフレ期待を反映するため、それぞれの結果に対して市場がどう反応するかを丁寧に追うことが、短期のビットコイン価格予測においても重要なポイントとなります。

今週で11月も終わり、ヘッジファンドを始めとした機関投資家の決算に向けた動きも一巡するものと思われます。これから年末に向けては需給状況が改善することが考えられ、良い材料には素直に反応するようになるのではないでしょうか。

なかなか下値が固まらない地合が続いていましたが、暗号資産市場については、いよいよ来年に向けた期待を持って市況をみてもよいのではないかと考えています。

ビットコイン市場予測と投資家が注目すべきポイント

ビットコインマーケットを予測する上で、短期的には「マクロ要因」と「センチメント」、中長期的には「需給サイクル」と「制度面の進展」という4つの軸を意識することが重要です。マクロ要因としては、今回取り上げたようなPPI・CPIを中心とするインフレ動向と、FRBの金融政策スタンス(利下げペース・バランスシートの縮小/拡大)が価格の方向性を大きく左右します。

センチメント面では、量子コンピュータリスクのような「ストーリー性のある不安材料」や、著名投資家・大手金融機関のコメントが短期的な値動きを増幅させることがあります。X(旧Twitter)などのSNSでどのようなテーマが拡散しているか、ニュースヘッドラインにどのようなトーンの記事が並んでいるかをチェックすることで、市場心理の極端な偏り(過度な強気・過度な弱気)を捉えやすくなります。

中長期の需給面では、ビットコインの半減期サイクルや、ETF・投資信託を通じた機関投資家の資金流入、マイナーの売却・保有動向などがカギとなります。供給が限定されている一方で、規制環境の整備や商品化の進展によって投資家の裾野が広がれば、長期的な上昇トレンドが形成されやすくなります。逆に、規制強化や税制面の不透明感が強まると、リスクマネーの流入が細り、調整局面が長引く可能性もあります。

足元のように、90,000ドル割れから80,000ドル台まで一気に売り込まれた局面では、テクニカル的な節目と投資家心理の両方を確認することが重要です。直近安値圏で出来高が増え、悪材料にもかかわらず下値を切り下げにくくなってくれば、「売りから買いへ」のバランスが徐々に変化しているサインとみることができます。その上で、今週発表される主要経済指標が市場予想と比べてどう出るかを確認し、シナリオ別にポジションサイズを管理することが、プロ・個人を問わずリスク管理の要となるでしょう。

総じて、短期的には依然として高いボラティリティが予想されますが、マクロ環境の落ち着きとともに、ビットコイン固有の成長ストーリー(デジタルゴールドとしての位置付け、ネットワーク効果、制度面の整備)が再評価される局面が訪れる可能性があります。投資家としては、短期の値動きに一喜一憂するのではなく、「どのようなシナリオで強気・弱気に転じるのか」をあらかじめ整理しながら、市場と向き合っていくことが重要だと考えられます。

 BTC / JPYのモメンタム 

モメンタムメーターは、それぞれ[30分足・4時間足・日足・週足]の4つの時間軸に対応しており、投資スタイルや分析目的に応じて柔軟に相場のモメンタムを確認することができます。

移動平均(MA)やRSI、MACDなど、代表的な複数のテクニカル指標を自動的に分析し、現在の相場に対して、いくつの指標が「売り」または「買い」のシグナルを出しているかを示しています。

30分足
[BTC / JPY]

4時間足
[BTC / JPY]

日足
[BTC / JPY]

週足
[BTC / JPY]

BTC積立企画

2023年6月から月毎に10万円分の暗号資産を実際に積み立てていき、そのポートフォリオを公開する企画です。ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、日本の取引所でも取り扱われており、米ドルとペッグ(連動)するステーブルコインであるダイ(DAI)を対象としています。

これまでの暗号資産積み立ての状況
Accumulation Status

[期間:2023.06.05 〜 2025.11.28]

ポートフォリオの現在の資産価値
 円

含み益(現在の資産価値 - 合計積立金額)
 円

利益率
%

積み立て回数
16 回

合計積立金額
1,600,000 円

ポートフォリオの構成

    ポートフォリオ

    銘柄 シンボル 対円レート 保有数量 日本円換算 構成比
    ビットコイン BTC [BTC/JPY] 0.1523 BTC %
    イーサリアム ETH [ETH/JPY] 1.8884 ETH %
    ダイ DAI [DAI/JPY] 80 DAI %
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    過去記事アーカイブ