雇用統計で市場失望 暗号資産「黄金時代」宣言の裏で広がるリスクオフムードとは?|週間ビットコイン予想 2025.8/4-10
2025.08.04
先週の米国金融市場:注目イベントとその影響
先週の米国金融市場は、FOMCでの政策金利の行方、トランプ大統領が設立したデジタル資産諮問委員会からの報告、雇用統計の結果発表そして有力企業の決算発表とイベントが目白押しの週となりました。その中で高値を更新する株式市場やトランプ政権により注目が高まった暗号資産の将来性などを占う週として期待感が高まっていました。
しかし、週を終わってみると株式市場では3指数が揃って下落し、NYダウ平均は5日連続安の-1,300ドル、S&P500は4日連続安の-150ポイントとなり、NASDAQも8月1日は-472ポイントでした。暗号資産市場も週末にかけて下落して終了しています。
米EU関税交渉と市場の反応
7月27日(日)に米国とEUによる関税交渉が合意となりました。米国にとって大きな貿易相手地域であるEUですので、注目度は高かったわけですが、日本との合意の後であり、「ある程度予想された合意の結果内容であった」として金融市場の反応は鈍いものとなりました。
株式市場では、決算の好結果や貿易関係の進展、IT企業の設備投資に関する前向きな見通し、さらにはAIアクションプランの強気なトーンが、ここ数週間の市場の熱気を下支えしてきたと広く見られています。
今後も多くのS&P500企業が決算を控える中で、事前予想が低めに設定されていることが投資家心理を支える要因の一つとされており、特に関税による貿易関連の動向が企業業績にどう影響を及ぼすかに注目が集まっています。
暗号資産市場の動きとFOMCの影響
28日(月)BTCは119,400ドル台(1,760万円台)から始まりましたが、週央にあるFOMCや暗号資産作業部会の報告書発表などを控えて静かな展開となって、118,000ドル台(1,750万円台)で終わりました。
29日(火)は発表のあったJOLTS求人件数(6月)が743.7万件と予想の750万件や前月の結果を下回ったことから嫌気され、各市場とも終日軟調な動きでBTCは118,000ドル(1,750万円)近辺となりました。
30日(水)は今週の注目材料であるFOMCでの政策金利について発表があり、「利下げは見送られ、現状水準を維持する」となりました。会合後のパウエル議長のコメントは従来通りではありますが、議長は「現在見られているのは、関税によるインフレの非常に初期の段階。経済は当面、緩やかな金融引き締めを必要としている」などと述べ、追加利下げに慎重な姿勢を滲ませました。
金融市場では9月利下げは半分以下の確率、10月利下げも完全には織り込めない状況と見ています。利下げに慎重姿勢を示して来るとは見られていたものの、想定以上にタカ派だったとの印象となりました。この結果、株式市場、暗号資産市場ともに頭の重い動きとなりました。BTCは117,800ドル(1,760万円)近辺での価格推移となっています。
報告書発表と雇用統計の影響
31日(木)は前日の停滞ムードが続く中でマイクロソフトやメタといった好業績を発表した一部の企業だけが上昇しましたが、全体的に株式市場は上値が重く、暗号資産市場も政府から発表の報告書と翌日の雇用統計を意識した動きとなり調整展開となりました。BTCは115,700ドル台(1,740万円台)となりました。
31日の遅くにホワイトハウスからデジタル資産諮問委員会による暗号資産関連の報告書が発表されました。報告書の発表に合わせてホワイトハウスは「暗号資産黄金時代」を宣言し、これまでの政権になかったトランプ政権による画期的な暗号資産への取り組みなると表明しました。報告書は168ページにおよび多くの内容が盛り込まれていますが、暗号資産市場の投資家が期待していた、政府による暗号資産(BTC)の買い増しなどについての内容はなく、BTCなどの銘柄は軟調のまま終わっています。

歴史的低水準となった雇用統計の結果
8月1日(金)に発表された米国の雇用統計は、市場の予想を大きく下回る厳しい内容となりました。非農業部門の就業者数は、10.4万人増加という市場予想に対し、実際にはわずか7.3万人の増加にとどまりました。さらに、前月の就業者数も14.7万人増加から1.4万人増加へと大幅な下方修正が加えられました。加えて、前々月の数字も修正され、過去2ヶ月で25.8万人も下方修正が行われる結果となりました。
これにより、過去3か月間の平均就業者数の増加は3.5万人と、新型コロナパンデミック後で最も低い水準となりました。このデータは、米国経済がすでに雇用面で大きな減速局面にあることを浮き彫りにした形です。
金融市場の激変:債券・為替・株式すべてに影響
雇用統計の弱さを受けて、市場は一気にリスク回避の動きへと傾きました。まず債券市場では、景気の先行きに対する不安感から、安全資産である米国債への買いが急増し、国債利回りが急低下しました。これは、今後の景気悪化が一段と現実味を帯びてきたことを意味します。
為替市場でも同様に反応が現れ、米ドルは売られ、主要通貨に対してドル安が進行しました。これは、米国の経済的な減速がグローバルな投資家にとってマイナス材料と見なされた結果です。
株式市場も大きく反応し、3指数すべてが大幅下落しました。前日までとは打って変わり、マーケット全体に警戒感と失望感が広がり、「リスクオフ」の流れが一気に加速した格好となりました。
暗号資産市場も連動して軟調に推移
このリスク回避の波は、暗号資産市場にも波及しました。特にビットコイン(BTC)は、安全資産とされる債券や金と異なり、依然として「リスク資産」としての位置づけが強く、投資家による資金引き上げの対象となりました。結果として、BTCは113,300ドル(約1,670万円)まで下落し、その週を終えることとなりました。
今回の雇用統計は、単なる月次データを超えて、「米国経済の底堅さ」に疑念をもたらす象徴的なシグナルとなりました。これを受けて、市場では9月のFOMCで利下げが現実の選択肢として真剣に議論され始めています。
ETH・XRP:週初の安定感から中盤以降の調整へ
週初、Ethereum(ETH)はおよそ57.2万円、XRPは約470円台後半で堅調にスタートしました。しかし週半ばからはビットコインをはじめとした全体的なリスクオフムードが台頭し、ETHは約51.5万円、XRPは430円台後半へ軟化して週を終えました。
7月末にかけて、Ethereum向けのスポットETFへの機関投資家資金の流入が加速し、ETHは時にBTCを上回るパフォーマンスを記録しました。ETF取引総額は1,235億ドルに達し、市場の信頼感が顕在化した形です。ただし、FOMCの利上げ維持や雇用統計ショックといったマクロネタの影響もあり、週の中頃からETHも調整色を強めました。
グレースケールが大型デジタル資産の多様なポートフォリオへの投資を提供するために設計した「Digital Large Cap Fund」を上場投資信託(ETF)に転換し取引を開始したことや、Ripple社が米国の銀行免許を申請していることなど、制度・規制面での明確化も追い風となりました。特にETF申請の進捗が10件以上あり、10月以降の決定に注目が集まっています。
ただし全体としては、実需・市場資金の再配分に伴う調整局面も入り混じる状況で、XRPも他の暗号資産と同様に週中に値を削りました。
マクロと代替通貨市場の相関性が鮮明に
今回の下落トレンドでは、暗号資産が米国の金融指標やFOMCの声明と密接に反応している様相が鮮明となりました。ETHもXRPも、当初は逆相関か独立した動きを示したものの、徐々にビットコインおよび株式市場との連動性が強まっています。
短期的には、FOMCの政策見通しや雇用統計、貿易関連の発表などが引き続き影響を与えると見られます。また、XRPに関しては今後のSECへの対応やETFの承認時期、Rippleの銀行免許取得の進捗などが、価格形成に影響する重要トピックとなるでしょう。
今週の経済イベントカレンダー
Calendar of Economic Events This Week
月 | 日 | 曜日 | 日本時間 | 国 | 経済イベント | 重要度 |
---|---|---|---|---|---|---|
08 | 04 | 月 | 23:00 | 米国 | 耐久財受注6月 | ★★★★☆ |
08 | 05 | 火 | 21:30 | 米国 | 貿易収支6月 | ★★★★☆ |
08 | 05 | 火 | 22:45 | 米国 | サービス業購買担当者景気指数(PMI)7月 | ★★★☆☆ |
08 | 05 | 火 | 23:00 | 米国 | ISM製造業景気指数7月 | ★★★★★ |
08 | 07 | 木 | 21:30 | 米国 | 新規失業保険申請件数7/27-8/2 | ★★★☆☆ |
08 | 07 | 木 | 未定 | 中国 | 貿易収支7月 | ★★★☆☆ |
08 | 08 | 金 | 8:00 | 日本 | 国際収支(経常収支、貿易収支)6月 | ★★★☆☆ |
今週のイベントには先週ほどの注目を集めるものはありません。5日(火)の米国貿易収支、7日(木)中国貿易収支、8日(金)日本の経常収支、貿易収支は、日米の関税交渉の合意後を想定する材料となり、国内景気の見通しとドル円為替水準を想定するものとなります。
一方、米国と中国の関税交渉は再度延期となっていますので、今後の交渉に影響を与えるようなデータが米国と中国それぞれの貿易収支からでてくるのか注目されます。
しかし、今週の米国金融市場と暗号資産市場は、先週末に発表された雇用統計の結果から起こった、米国国内景気への不安感と9月の利下げ予想により、引き続き大きくゆれる週になると思われます。
アナリストの見解と今後の焦点
暗号資産アナリストのアーサー・ヘイズ氏は米国雇用統計の結果を受けて、米国経済の脆弱性と関税問題における関税率発表でリスクオフ・ムードが広がり、暗号資産の下落に繋がった分析し、今後の暗号資産について、目先は調整局面を迎えBTCが10万ドル、ETHが3,000ドルまで下落すると警告を出しています。
これまで株式市場を中心に楽観論を支えてきた底堅いと思われた米国景気に懸念が発生したわけですので、この不安を払拭するためには、次回の雇用統計発表を待たないといけません。
その他で考えられることは、今月21日~23日に米国ワイオミング州で恒例のジャクソンホール会議が開催されます。パウエル議長の講演が予定されていますので、注目されるイベントとなります。また米国企業の決算発表では、テクノロジーのリード役であるエヌヴィディアの決算発表が8月27日にあります。この決算発表がムードを変える事ができるか?注目されます。
しかし、これらの日程は今月下旬であり、それまでの間は現在のリスクオフ・ムードが続きそうですので、投資家のみなさんには、今後の価格動向に十分に注意をしていただくようお願いいたします。
BTC積立企画
2023年6月から月毎に10万円分の暗号資産を実際に積み立てていき、そのポートフォリオを公開する企画です。ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、日本の取引所でも取り扱われており、米ドルとペッグ(連動)するステーブルコインであるダイ(DAI)を対象としています。
これまでの暗号資産積み立ての状況
Accumulation Status
[期間:2023.06.05 〜 2025.08.17]
ポートフォリオの現在の資産価値
円
含み益(現在の資産価値 - 合計積立金額)
円
利益率
%
積み立て回数
16 回
合計積立金額
1,600,000 円
ポートフォリオの構成
ポートフォリオ
銘柄 | シンボル | 対円レート | 保有数量 | 日本円換算 | 構成比 |
---|---|---|---|---|---|
ビットコイン | BTC | [BTC/JPY]円 | 0.1523 BTC | 円 | % |
イーサリアム | ETH | [ETH/JPY]円 | 1.8884 ETH | 円 | % |
ダイ | DAI | [DAI/JPY]円 | 80 DAI | 円 | % |