FOMC議事要旨が示す 2024年の利下げ動向
2024.10.11
10月9日、米国連邦準備理事会(FRB)が9月17日-18日の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表しました。
FOMC議事要旨の内容とパウエル議長の動向
議事内容を見ると、パウエルFRB議長が0.5%の利下げを推進しています。インフレを抑制するために企業等の借り入れコストを20年ぶりの高水準で維持した後、ほぼ全ての参加者が「インフレの上振れリスクは低下し、雇用の下振れリスクが高まったと判断」しています。ただ一部の当局者達が「0.25%の利下げ幅の方が好ましい」と判断していたことも分かりました。最終的にはボウマン理事だけが反対票を投じ、大多数の参加者が0.5%の利下げ幅に賛成となりました。
また四半期経済予測では、2024年内の利下げについて様々な意見が出された事がわかります。年内の利下げ幅について0.75%が7人、0.5%が2人そして1%が10人いました。現在、金融市場では年内の利下げ幅を0.75%と期待する考えが強くありますが、10月4日に発表された雇用統計の結果から11月と12月に0.25%ずつ合わせて0.5%の利下げ幅が中心になりつつあります。
消費者物価指数(CPI)の注目ポイント
直近のこうした動きがある中で、本日10日に米国では消費者物価指数(CPI)の発表が行われました。9月の総合CPIは前月比で+0.2%、前年比で+2.4%と、予想よりやや高い数値でした。特に前月比は予想の+0.1%を上回りましたが、前年比では緩やかな減速傾向が続いています。エネルギー価格の低下が影響しているものの、食料品価格が上昇し、特に肉類や乳製品が強く押し上げました。
一方、コアCPI(食品・エネルギーを除く)は、前月比+0.3%、前年比+3.3%となり、いずれも予想を上回る結果でした。このデータからは、インフレがやや進行している兆しがある一方、年次ベースでの上昇ペースは緩やかになっており、市場は一定の安定感を示しています。
エコノミストたちはこの結果を慎重に受け止めており、CPI全体の緩やかな改善を歓迎しつつも、インフレの根強さに対して警戒心を緩めていません。特に、食料品や宿泊費用など一部の価格が再び上昇していることから、今後の金融政策に対する不確実性が続いていると言われています。
専門家の見解と警告
米国元財務長官のラリー・サマーズ氏は、「先日の雇用統計は、『米国経済が高金利の環境下にあり、利下げをするには注意を要する』と考えるのが責任有る金融政策ではないかと確認するものだった。結果論で言えば、9月の0.5%の利下げは間違いだった。」と述べています。また「今回、雇用統計で発表された結果から『ハードランディング』とともに『ノーランディング』を金融当局が考慮しなければならないリスクだと言える。名目賃金の上昇率は、コロナ前の水準を上回っており、減速しているようには見えない。」とコメントしました。
さらに「このまま米国の金融当局が利下げをすればインフレは再燃する。」とインフレ再燃の可能性を警告しています。
大統領選と経済政策の影響
また世界最大のヘッジファンドBridgewaterの創業者であるレイ・ダリオ氏は「米国経済は比較的バランスがとれている。経済成長や、インフレの水準そして11月の大統領選挙を考えれば、市場利下げ期待はやりすぎだ。」とコメントしています。
こうしたインフレ再燃を警戒している人たちは、11月の大統領選挙で立候補するハリス副大統領とトランプ元大統領の経済政策において、どちらが大統領になるにしても米国の財政を悪化させ、米国のインフレに火を付けると考えています。
DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏は、「どちらの候補もアメリカの財政問題に対処する気はないようだ。」とし、「ハリス副大統領は低所得者に現金給付を行いたい。詳細は明らかになっていないが、少なくともそれが公約になっている。一方でトランプ氏はあらゆるニッチな層に減税を行いたがっている。チップ非課税、残業代非課税、年金非課税など」と述べ、「いずれにせよ、どちらの候補も財政赤字を拡大しようとしており、それは長期的に問題になる。」とコメントしています。
もしこうした懸念通りに財政が大きく悪化した場合、長期金利の上昇を招くとともにドルの下落による物価上昇が起こることも考えられ、インフレの再燃が強く意識される状況です。
消費者物価指数の結果受け、年内の利下げ幅についての議論が高まり、市場は揺れ動くと思われますが、今後の米国金利動向は大統領選挙が終わってからが本番になりそうです。