「仕組み債」の新たなルール
2023.08.03
日本証券業協会が「仕組み債」と呼ばれる複雑な金融商品の販売に新たな自主ルール設定へ動き始めました。仕組み債については、かねてよりトラブルが多く発生しており、昨年春以降、大手証券を中心に公募型商品や個人向け商品の販売停止を行っています。
「仕組み債」とは、一般的な債券に見られない「特別な仕組み」を持つ債券です。
この場合の「仕組み」とは、スワップやオプションなどのデリバティブ(金融派生商品)を利用することにより、投資家や発行者のニーズに合うキャッシュフローを生み出す構造を指します。こうした「仕組み」により、償還時期やクーポン(利子)、償還金などを、投資家や発行者のニーズに合わせて比較的自由に設定することができます。
このような「仕組み債」は、元々は上記にあるように投資家や発行者のニーズに合わせた商品設計を行い、機関投資家向けに販売をする商品でした。それが国内の低金利環境が長期化するにつれ、公募型商品が開発され個人を含む幅広い投資家に販売されるようになりました。
このように販売先が広がった結果、投資家が商品の持つリスクを十分に理解せずに購入した、あるいは販売者によるリスク説明が不足していた事などから多くの苦情やトラブルが発生しました。
金融庁は販売会社である地域銀行99行と証券会社27社への実態調査を行い、総点検を実施しています。日本証券業協会の動きはこのような状況を映したものになります。
販売の中核となった商品は「他社株転換可能債」や「日経平均リンク債」といったもので、
例えば「他社株転換可能債」の場合は、定期預金や個人向け国債などと比較すると高い利率が設定されていますが、償還日までの株価変動によっては、償還日に金銭(償還金)が支払われる代わりに、当該債券の発行者とは異なる会社の株式(他社株)が交付されます。この場合、交付された株式の時価によっては、実質的な償還金額が債券への投資元本を下回り(元本割れ)、損失が生じるおそれがあります。また、交付された株式の時価がさらに下がることにより、損失が拡大するおそれもあります。
こういった仕組み債は、株価が上昇している場面では損失が生じるおそれは少なく、苦情やトラブルは発生しにくいですが、昨年のように株価が下落する事が多いと損失も発生しやすく苦情やトラブルに繋がったと思われます。