景気減速とインフレの板挟み:FOMC声明とパウエル発言を読み解く
2025.05.09
FOMCが政策金利の据え置きを発表
5月7日(水)、米国ではFOMC(連邦公開市場委員会)が開催され、政策金利の据え置きが発表されました。据え置きは3会合連続となります。
声明文が示した経済見通しの不確実性
FOMCの声明では、「委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。景気見通しに関する不確実性は一段と増している。委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っており、失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」として、景気見通しに関する不確実性が増し、失業増加とインフレ加速のリスクが高まったと記しています。

パウエル議長の会見内容とその影響
会合後の記者会見でパウエルFRB議長は、「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」とし、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまり得る」とコメントしました。一方で、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」と付け加えています。
今後の金融政策判断のスタンス
今回のFOMCでも従来のスタンスを変えることなく、今後も「労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待を示す各指標のほか、金融・国際情勢などを幅広く考慮して判断する」としています。

市場の反応と今後の注目点
金融市場では、パウエル議長のコメントで「見通しの不透明性に言及するも経済が引き続き堅調」との見解を示した事を受けて、株式市場は3市場とも上昇して終わっています。
米国の金融政策は、トランプ大統領による関税政策の行方に左右される状況となっていますが、今後の政策金利引き下げ時期について金融市場関係者の予想は、6月17-18日の会合で約40%、7月29-30日の会合で約90%となっています。
関税実施による経済指標への影響はある程度は後ずれすると思われますが、すでに消費者の態度や企業の対応状況には変化が見られ始めているだけに、今後の米国金融当局の対応が注目されます。