米国債務上限問題の解決後の展開
2023.08.03
過ぎ去るデフォルト懸念
米下院は5月31日夜(日本時間6月1日午前)の本会議で、バイデン政権と下院共和党の連邦債務上限合意を盛り込んだ「財政責任法案」を可決しました。
法案では、2025年1月1日まで債務上限の適用を停止するとともに、今後2年間の連邦歳出に上限を設ける内容となっています。
このあと法案は上院に送られ、審議・採決されます。上院での法案可決はほぼ確実視されています。下院での法案可決は民主・共和両党の超党派の賛成票によるもので、党派対立が目立つワシントンの政治環境としては極めてまれな展開となりました。
解決策が及ぼすマーケットへの影響
米国の債務上限問題が落ち着き米国のデフォルト懸念がなくなると、これからは米国内での資金の流動性への引締めが再開されることとなります。
具体的にはまず米財務省による米国政府一般勘定の復元が始まります。これは既に枯渇状態となっている米国政府の預金口座を補充するもので、米国政府は国債を発行して約5,000億ドル(約70兆円)という巨額の流動性を市場から調達し預金口座へ補充することになります。
量的引締めの再開
次にFRB(連邦準備理事会)による量的引締めの再開です。
量的引締めはFRBが保有する債券の売却を通じてバランスシートを縮小させることで、3月以降に地方銀行危機を受けて中断していました。
量的引締めが再開されると短期的には米ドルが不足すると考えられます。社債市場やプライベートクレジットは、既存の満期となった資金を再び投資することは難しくなると思われ、商業用不動産向けの資金調達やジャンク債の発行者は厳しい環境になるのではないでしょうか。
このように市場から流動性が吸い上げられると株式市場や暗号資産市場への影響が出てくると考えられます。当面はリスク資産の市場には十分な注意が必要と考えています。