プレシンギュラリティ Pre-Singularity

昨日、とある上場企業の役員の方と食事に行かせていただいた。

入口を探すのに困る恵比寿の洒落た焼鳥屋で2人、NFTやメタバースに関する話をする姿はさぞかし浮いた存在で不思議に思われただろう。店とメタバースとの親和性は“入りにくさ”くらいしか見当たらないくらいミスマッチであった。

彼の勤める会社の事業は、Web3.0領域にどっぷりという感じではないがIT関連事業を主力としているため、ありがたいことに基本的なブロックチェーンの構造や概念の認識が一致している状態で話ができた。

交友関係も広く、とあるメタバース開発を行う会社の代表とサウナで語りあった時にAIに関する面白い話をしたと伺った。テキストの自動読み上げソフトの利用履歴の調査で、女性の声帯に近い音源にただ数字を読み上げさせた履歴が見つかったという。詳細な用途まではわからないものの開発サイドからすれば、開発時には想定されていない利活用が非常に多く見つかることがあたらしい発見だったという。

これは、人の想定の範囲内に人の発想が存在していないという事実と、AIは人の発想のなかでこそ真価を発揮することを意味していると感じた。2022年7月の「Midjourney」を始めとした生成AIの登場も、当時は人の画像生成においてたくさんの不備があった。

 

それも、1年経った現在では途轍もない正確さとクオリティを有するものに変わっている。おそらくChatGPTの書く支離滅裂なもっともらしい文章も、1年も経たずに秀逸なライターが書く文章と遜色ないものへと変わるだろう。

前号の扉に書いたPre-Singularityの境目を体験し、あたらしいモノに触れられる現環境は非常に貴重であり活用しない手はない。言い換えれば、活用できなければ自身の可能性を狭めるという危機感に近い焦燥感を動機に、より一層積極的にテクノロジーに触れようと感じた。

Iolite編集長FOCUS

「Threads」の登場で荒れるTwitter—ビッグテックが狙う次なる金脈

8日、Meta社がリリースした新アプリ「Threads(スレッズ)」の登場は、TwitterとTwitterユーザーに大きな衝撃を与えた。

 FacebookやInstagramを運営するMeta社の新アプリのリリースが、自社アプリのユーザーだけではなく、SNSという領域全体から注目を集めたことは興味深い。

 Meta(旧Facebook)の歴史は周知の事実だと思うので、ここでは直近5年ほどの動向から話を始める。2017年、Metaはメタバースの開発に取り掛かった。

現在のMetaのサービスがGoogleやApple等、ほかのプラットフォームに依存していること。そして、個人情報保護の規制強化から広告売上の行き詰まり感を払拭するため、メタバースとスーパーアプリに可能性を見出しているのではないかと考えている。

2022年に発表したメタバース、「Horizon Worlds」の完成度の低さがゆえに大きな批判に晒され、開発を試みた暗号通貨「Diem(旧Libra)」は財務的安定性とユーザーのプライバシー保護に関する懸念から、2022年の初めに立ち上げを断念した。

それでも同社は当時、暗号資産やメタバースに関するロゴなど8件の商標を登録申請していることからも、自社のプラットフォームをすべてWeb3.0の世界に移行することに真剣に取り組んでいるように伺える。頓挫したDiemの開発に使われていたとされるMeta独自のプログラミング言語「Move」は、現在注目を集め始めた暗号資産「Sui」「Aptos」で活用されていることからも、当時から確かな技術力がMetaにあることは証明されているだろう。

ここからは憶測でしかないが、MetaやTwitter、そのほか主に自社のアプリケーションを保有するテック企業は、暗号資産決済やメタバース上の活動をトータルにサポートするために、「いかにユーザーに自社ウォレットを持ってもらうかが鍵」となることを意識して事業展開しているように見える。

今月のTwitterの決済ライセンスの取得を見ても、行き着く先は暗号資産決済およびスーパーアプリ化に思えてしまう。Twitterの改悪と揶揄されたサブスクリプション機能の実装に伴うさまざまな仕様変更を材料に、Metaは「Threads」でフラストレーションの溜まったTwitterユーザーを囲い込む。

そして、メタバース・暗号資産の開発時から進めていたであろう決済や暗号資産関連のライセンス取得を推し進め、Web3.0のゲートウェイであるウォレットを押さえる計画ではないだろうか。

LINE BITMAXがPayPayマネーで暗号資産の購入やPayPayマネーへの出金ができる「PayPay連携サービス」を開始

日本国内においても、メルカリのアプリケーション上でビットコインが購入できるようになり、6月時点でメルカリ内でのビットコイン取引サービス利用者数が3か月強で50万人を突破。

アプリケーションのダウンロード時に、基本的なKYCが完了しているユーザーに暗号資産ウォレットを持ってもらう心理的障壁は極めて低いと推測できる結果だ。

6日にはLINE BITMAXがPayPayマネーで暗号資産の購入やPayPayマネーへの出金ができる「PayPay連携サービス」を開始。

これらを鑑みれば、決済インフラを保有するアプリケーションが暗号資産を活用したWeb3.0のゲートウェイであるウォレットを取りに行く戦争は激化することは想像に容易い。ウォレットを制するものがWeb3.0を制する未来は、すぐそばに来ているかもしれない—

PayPay、LINE BITMAXとの連携で1円から暗号資産の購入が可能に

[Iolite記事]
PayPay、LINE BITMAXとの連携で1円から暗号資産の購入が可能に