ソラナ基盤でステーブルコイン発行へ──みんなの銀行が挑む次世代金融
2025.07.09
みんなの銀行、ステーブルコイン事業に本格参入
2025年7月4日、日本初のデジタルバンクである「みんなの銀行」は、Solana Japan、Fireblocks、TISの3社とともに、ステーブルコイン及びWeb3.0ウォレットの事業化に向けた検討を開始したと発表した。これは単なる実証実験ではなく、国内でのブロックチェーン活用型金融サービスの商用化を見据えた本格的な取り組みである。
今回の検討で中心となるのは、Solanaブロックチェーン上でのステーブルコインの発行である。みんなの銀行が目指すのは、単に暗号資産(仮想通貨)を発行することではなく、個人及び法人の実用的な決済手段として、トークン化された通貨が日常の金融行動に組み込まれる世界の実現である。

ステーブルコインとRWAトークンの融合
RWAトークンとは何か?
RWA(Real World Asset)トークンとは、国債や社債、不動産、ファンドなど、現実世界に存在する資産をブロックチェーン上でデジタル化(トークン化)したものである。このトークン化によって、これまで紙やデータで管理されていた資産の所有権や取引が、瞬時に、しかも透明性をもって処理されるようになる。
不動産や債券のトークン化による可能性
欧米ではすでに、金融機関が不動産や債券をRWAトークンとして発行し、流動性の向上や取引コストの削減に取り組んでいる。みんなの銀行も、こうした潮流を視野に、トークンの裏付けとして日本国内の資産を用いたステーブルコインの実装を目指している。

共同検討に参加する各社の役割
Solana Japanの技術支援
Solana Japanは、Solanaブロックチェーンの日本展開をリードする立場として、技術インフラの提供と開発者支援を担う。Solanaは高速処理と低コストを強みとし、グローバルでもDeFiやNFT領域で多くのプロジェクトに利用されている。
Fireblocksのセキュリティインフラ
Fireblocksは、世界中の金融機関に採用されている暗号資産のカストディ(保管・管理)インフラを提供しており、日本の金融法規制にも対応する高度なセキュリティ体制を構築している。今回の提携により、銀行業務に不可欠なウォレット管理とAML/CFT対策において、堅牢な基盤が整う見通しである。
TISの金融システム開発ノウハウ
TISは、国内外の決済システムや法人向けITインフラの開発を数多く手がけてきた実績を有し、ユースケース設計や社会実装に向けた具体的なアプローチを担う。ビジネスユースを前提とした構築方針は、銀行業界の保守性を踏まえた戦略的意思決定を支えるだろう。
日本国内におけるステーブルコインの法的枠組み
改正資金決済法の概要
2023年6月に施行された改正資金決済法では、ステーブルコインの発行と流通に関する制度整備が進められた。銀行や信託会社、資金移動業者が発行主体となるステーブルコインについて、法的裏付けのある資産(法定通貨など)を担保とすることが義務付けられている。
銀行や資金移動業者の役割と責任
この制度設計により、法令上の枠組みに則ったステーブルコイン発行が可能となった。特に銀行が発行主体となることで、信頼性・安定性の高いWeb3.0金融サービスの実現が期待されている。みんなの銀行のようにモバイルを起点とするバンクが参入することで、デジタルネイティブ世代への普及も進む可能性が高い。

今後の展望と課題
商用化に向けたステップ
みんなの銀行は「未来の銀行を“今”つくる」という理念のもと、従来のWeb2.0銀行機能をWeb3.0インフラと融合させるBaaS(Banking as a Service)モデルを推進してきた。今回のステーブルコイン事業の検討はその延長線上に位置付けられ、単なる暗号資産管理ツールではなく、日常決済・投資・資産運用までを包含する包括的なウォレット体験の創出を目指している。
技術的・法的な課題とその対応策
一方で、パブリックブロックチェーン特有の技術的リスク(ネットワーク障害やセキュリティ問題)や、AML/CFT対応における実務の標準化には課題が残る。Solanaのネットワークは過去に数度停止を経験しており、こうした不安定要素をいかに吸収するかが、商用化に向けた重要なテーマである。
しかし、こうしたリスクを取ってでもあらたな金融モデルを実現しようとする「みんなの銀行」の姿勢は、国内金融業界におけるイノベーションの起爆剤となる可能性を秘めている。初の本格的な取り組みとなる今後の進展に注目が集まる。

[Iolite記事]
みんなの銀行、ソラナ基盤のステーブルコイン事業化に向け共同検討を開始