複数通貨対応ETF「GDLC」を米SECが承認──暗号資産制度化の転換点
2025.09.24
GDLCとは何か — 複数通貨対応ETFの全体像
米証券取引委員会(SEC)は、暗号資産運用大手Grayscaleが手がけるマルチ暗号資産ETF「デジタル・ラージキャップ・ファンド(GDLC)」の上場を正式に承認した。これにより、米国市場においては、ビットコインやイーサリアムといった単独銘柄のETFにとどまらず、複数の暗号資産に分散投資できる新たな金融商品が登場したことになる。
GDLCの基本情報と目的
GDLCは、Grayscaleが提供する複数通貨対応ETFであり、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、エックスアールピー(XRP)、ソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)という主要5銘柄に投資する仕組みとなっている。目的は、暗号資産市場への広範なエクスポージャーを提供することで、長期的な資産形成に寄与することだ。
構成銘柄と資産配分
2024年9月時点におけるGDLCの構成銘柄の配分は、ビットコインとイーサリアムを中心に、残りをアルトコインが占める構成となっている。これにより、特定銘柄への過度な依存を避け、価格変動リスクを分散させる効果が期待されている。
運用状況と市場規模
Grayscaleの公式データによれば、GDLCの1株あたり純資産価値(NAV)は約57.7ドル、運用資産総額は9億ドルを超える規模に成長している。米国市場においても注目度の高いETFのひとつとなっている。

米SECが承認した制度変更とその意義
従来の審査方式とその限界
これまでの米SECによるETF上場審査は、商品ごとに個別審査が行われており、手続きの長期化や透明性の欠如が指摘されていた。特に暗号資産を扱うETFは法的なグレーゾーンが多く、承認には多大な時間と労力を要していた。
新たな包括的上場基準とは
SECはGDLCの承認とあわせて、暗号資産ETFに関する「包括的上場基準(Generic Listing Standards)」を導入した。これにより、一定の条件を満たせば、個別審査を経ずともETFが自動的に上場できるようになった。
条件には以下が含まれる:
- 対象資産がISG(Intermarket Surveillance Group)加盟の市場で取引されていること
- CFTCの規制下にある先物市場で6ヵ月以上の取引実績があること
- ETFが特定資産に40%以上を投資する場合、その資産が制度基準を満たしていること
制度的な転換点としてのGDLC
今回のGDLC承認は、SECが「すべてのETFを一律に個別審査する時代」の終焉を示す象徴的な出来事である。今後は条件をクリアすればETFの上場がスムーズに行えるため、新たなマルチ暗号資産ETFが次々と誕生する可能性が高い。
GDLC承認がもたらす市場へのインパクト
アルトコイン市場の制度化促進
これまでETFの対象はビットコインやイーサリアムに限定されていたが、GDLCにはXRPやSOL、ADAといったアルトコインが含まれている。SECがこれらをETFの一部として承認したことは、暗号資産市場全体の制度化が進展していることを示す。
長期資産形成ツールとしての可能性
従来、暗号資産への投資は高いボラティリティとリスクを伴い、短期的な投機対象とみなされがちだった。しかし、分散投資が可能なETFを通じて運用することで、リスク管理の枠組みが整備され、中長期的な資産形成における有効な選択肢となりつつある。
日本市場への波及効果
日本においては、現時点で暗号資産ETFの上場は認められていない。しかし2024年以降、金融庁や業界団体が現物ETF解禁の議論を始めており、米国の制度的進展は日本の規制当局にも強い影響を与えると見られる。2026年以降には、日本でも暗号資産ETF元年が訪れる可能性がある。
投資家にとってのメリットとリスク
メリット:分散・透明性・流動性
GDLCのようなマルチ暗号資産ETFの最大の魅力は、分散投資によるリスク軽減にある。さらにETFであることから、取引所での売買が可能であり、価格の透明性や流動性の面でも有利だ。
リスク:価格乖離と制度リスク
一方で、暗号資産ETFには基準価額と市場価格の乖離リスク、各国の規制変更による制度的リスク、アルトコイン固有の信用リスクなども存在する。特に新興市場での上場商品は、市場の成熟度を見極めた上での投資判断が求められる。
税制や取扱いの課題
現時点での課題として、税制面の不透明さも挙げられる。日本では暗号資産に関する課税ルールが複雑であり、ETFに組み込まれた際の課税扱いも議論の余地がある。
今後の展望と新たなETFへの期待
今後登場が期待されるETF
今後は、TRON(TRX)やドージコイン(DOGE)、SUIといった新興アルトコインを含むマルチ資産型ETFの登場が期待されている。特にSECの新基準を満たせば、こうしたETFも承認される可能性が高まる。
単独アルトコインETFの実現性
現時点では、アルトコイン単体のETFはまだ制度的ハードルが高い。しかし、GDLCのようなマルチ型ETFの実績が積み重なれば、今後は単独ETF承認の道も開かれていくと考えられる。
日本での制度化シナリオ
日本市場でも、ビットコイン現物ETFの解禁を皮切りに、複数通貨対応ETFの制度整備が進む可能性がある。税制改正や金融商品取引法の見直しが実現すれば、国内投資家もより多様な資産形成の手段を得ることになる。
まとめ:GDLC承認がもたらす制度転換と投資の未来
米SECによるGDLCの承認は、暗号資産を投資対象とする新たな枠組みの始まりを示している。マルチ通貨対応ETFという形での制度的承認は、投資家にとっての選択肢を広げるとともに、市場の成熟と制度化を加速させるものだ。
今後は「投機」ではなく「投資」として暗号資産を捉える視点がますます重要になる。GDLCの成功は、日本を含む世界の金融制度にも多大な影響を与えることは間違いない。

[Iolite記事]
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