この記事でわかること

1. ARK Invest最新レポートの概要
2025年7月8日、キャシー・ウッド氏率いるARK Investが発表した月次レポートが、ビットコイン市場に対する注目を再び集めている。レポートによれば、ビットコイン市場では長期保有者の行動に歴史的な変化が見られる一方で、オンチェーン指標にはやや陰りが出始めている。
2025年6月のビットコイン価格は小幅な上昇にとどまり、5月の史上最高値を更新するには至らなかった。しかし7月に入ると流れが一変。ビットコインは急騰し、9日には過去最高値となる約11万2,000ドルを記録。市場全体があらたな強気フェーズに入ったとする見方が強まっている。
1.1 長期保有者の割合が74%に急増
特筆すべきは、155日以上ビットコインを動かしていないアドレス、いわゆる「長期保有者(HODLer)」の保有割合が、総供給量の74%にまで達した点である。これはビットコインの過去15年の歴史においても最高水準であり、いかに長期志向の投資家が市場を支えているかがうかがえる。
1.2 MVRVモメンタムが鈍化中
一方で、オンチェーン指標であるMVRV比率(Market Value to Realized Value)のモメンタムがゼロライン付近にまで低下していることが指摘されている。これは短期的に資金流入の勢いが弱まりつつあることを意味し、ARKはこのシグナルを「弱気」と評価している。
2. 長期保有者増加の強気材料
2.1 デジタルゴールドとしての信認拡大
ビットコインには発行上限が2,100万BTCという明確な制約があり、供給量の希少性が担保されている。これにより、法定通貨のインフレリスクに対するヘッジ手段としての注目が集まり、金(ゴールド)にたとえた「デジタルゴールド」という呼称も定着しつつある。
長期保有者の割合が74%にまで上昇した現在、その多くが価値保存手段としてビットコインを保有していることは、この資産クラスへの信認が過去にないほど高まっていることを示している。
2.2 投資家層・機関投資家の参入が加速
注目すべきは、上場企業による買い増しが加速している点だ。2025年第2四半期には、企業が保有するビットコイン量が合計で約15万9,000BTCに達し、四半期としては過去最大の買い越し額となった。これは前期比で20%以上の増加にあたる。
マイクロストラテジーやテスラといった既存のビットコイン支持企業だけでなく、あらたに参入する中堅企業も増加。ビットコインが企業のバランスシート上に資産として定着しつつある様子がうかがえる。
3. 警戒すべきオンチェーン・短期リスク
3.1 MVRVモメンタム鈍化が意味するもの
MVRV比率とは、ビットコインの時価総額を実現時価総額で割った指標で、相場が過熱しているか割安かを判断する目安とされている。現在この比率のモメンタムはゼロ付近まで低下しており、価格がこれ以上上昇しなければ調整局面に入る可能性がある。
3.2 利益確定による売り圧力と過去事例
オンチェーン分析企業CryptoQuantのアナリスト、アクセル・アドラー・ジュニア氏は、「長期保有者の平均利益率が300%を超えると、過去のパターンでは売却が始まる傾向がある」と警鐘を鳴らしている。現在この閾値に接近しており、ベテラン層の利益確定売りがいつ始まってもおかしくない水準にある。
4. 市場環境とマクロ経済の影響
4.1 ドル指数・FRB金利との関係
ビットコイン市場においては、米ドル指数やFRBの利上げ動向も無視できない要素である。金利が高止まりすればリスク資産であるビットコインへの資金流入が鈍化しやすく、相場の押し下げ要因となりうる。
4.2 アルトコインからの資金移動
2025年現在、SECによる規制強化の影響もあり、アルトコイン市場は低迷傾向にある。その一方で、比較的規制リスクの低いビットコインに資金が集中し、ドミナンスは65%に達した。アルトからBTCへの資金移動が構造的に続いている可能性がある。
5. 今後の展望と投資家へのアドバイス
5.1 短期トレードと長期投資のバランス
現在のビットコイン市場では、確かに強気材料が多く存在している。しかし、過去にも幾度となく高値からの急落を経験してきたように、過度な楽観は禁物である。長期目線を維持しつつ、オンチェーン指標などによる警戒シグナルにも注意を払う必要がある。
5.2 デジタルゴールドとしてのポジション確立
ビットコインは、法定通貨の不安定性に対するヘッジ、企業バランスシートでの価値保存、個人投資家による長期資産形成といった多面的な役割を担いつつある。長期保有者の増加がその信認の証明であり、デジタルゴールドとしての立場が確立しつつあるといえる。