先週の金融市場サマリー

先週の金融市場は株式市場が前週までの上昇を受けた利益確定売りと、長期化する政府機関閉鎖が上値を抑える一方で、IT・ハイテク株が堅調に推移する展開となりました。米中貿易摩擦の再激化を嫌気し、週末は軟調に終えました。暗号資産(仮想通貨)市場もほぼ同様の動きとなり、週末にかけて軟調な展開でした。

10月6日(月)

10月6日(月)のNY株式市場は、前週の株高を受けて利益確定売りが膨らみ、NYダウ平均が7日ぶりに反落しました。一方、OpenAIとAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)が半導体供給契約を締結したことを受け、IT・ハイテク株が上昇し、NASDAQは史上最高値を更新しました。

BTCは123,500ドル(約1,850万円)近辺から始まり、126,000ドル台前半(約1,890万円台)まで上昇し、124,000ドル台後半(約1,870万円台)で引けました。

10月7日(火)

10月7日(火)のNY株式市場は、政府機関の閉鎖を嫌気して利益確定売りが続き、続落となりました。一方で金価格は一時1トロイオンス=4,000ドルに乗せる堅調な動きでした。BTCも125,000ドル台(約1,890万円近辺)に乗せる場面がありましたが、最終的には121,300ドル台(約1,850万円近辺)でした。

10月8日(水)

10月8日(水)は注目されていたFOMC(米連邦公開市場委員会)の9月会合の議事録が公表されました。参加者のインフレに対する慎重な姿勢が確認されましたが、全体としては利下げに前向きな内容と受け止められ、金融市場の反応は限定的でした。ただし、利下げ観測を好感しIT・ハイテク株が上昇、NASDAQは史上最高値を更新しました。BTCもIT・ハイテク株の上昇に連動して堅調に推移し、124,000ドル台前半(約1,890万円台)まで上昇したのち、123,300ドル近辺(約1,880万円台)でした。

10月9日(木)

10月9日(木)は、中国商務省がレアアース及び関連技術の輸出規制を発表したことを受け、米中貿易摩擦の再燃が懸念されました。これを嫌気してNY株式市場は軟調に推移しました。BTCも同様の動きで、123,300ドル台(約1,880万円台)から始まり、121,600ドル近辺(約1,860万円台)で引けました。

10月10日(金)

10月10日(金)は、トランプ大統領による中国に関する発言が相場を動かしました。同氏は 「中国は非常に敵対的になりつつある」と述べ、中国製品への関税大幅引き上げを示唆しました。NY株式市場では高値警戒感が強まり、利益確定売りが誘発されました。NYダウ平均は-878ドル、S&P500は-182、NASDAQは-820と大幅下落しました。米国10年国債利回りは4.03%まで低下し、金価格は再び4,000ドル台に乗せました。

10月10日(金)主要株価指数の下落幅
指数下落幅下落率
NYダウ平均-878-1.9%
S&P500-182-2.7%
NASDAQ-820-3.6%

米中関係悪化懸念に伴う暗号資産の動き

暗号資産市場も株式市場と歩調を合わせるように反応しました。トランプ大統領が中国製品への関税大幅引き上げを示唆したことで、投資家の間に米中関係のさらなる悪化懸念が広がり、市場全体にリスク回避ムードが一気に強まりました。安全資産である金や米国債に資金が流入する一方、リスク資産である暗号資産は売りが先行し、短時間で大きな値幅を伴う下落となりました。

BTCは125,000ドル近辺で始まった後、関税発言をきっかけに短期筋の売りが加速し、一時102,300ドル台(約1,610万円)まで急落しました。この局面では先物市場でのロスカット(清算)注文も連鎖的に発生し、取引所間で価格の乖離が生じるほどのボラティリティが観測されました。しかしその後はテクニカル的な下値支持線付近で押し目買いが入り、アジア時間には買い戻しが優勢となって112,700ドル台(約1,720万円)まで回復しています。市場では「想定内の調整」との見方も出ており、短期的な需給の偏りによる反応との声が多く聞かれました。

ETH(イーサリアム)は週初の4,700ドル台(約71万円台)から始まり、BTCの下落につられて急落しました。特に米株式市場が下げ幅を拡大したタイミングでは売り圧力が強まり、一時3,800ドル(約58万円)割れ目前まで値を下げました。その後はBTC同様に買い戻しが入りましたが、週末時点でも上値は重く、テクニカル的には3,950ドル(約60万円台前半)が抵抗帯として意識される展開となっています。

XRP(エックスアールピー)は比較的ボラティリティが低い通貨とみなされてきましたが、今回の相場ではリスクオフの波を避けられませんでした。週初の3.05ドル近辺(約463円)からじりじりと下落し、関税発言直後には一時2.8ドル台(約425円)まで売られる場面もありました。その後は限定的ながら反発し、週末には2.3ドル台後半(約350円)で推移しています。市場では、XRPの取引量が増加していたことから短期資金の回転売買も影響したとみられています。

総じて、今回の急変動は米中関係の緊張再燃によるセンチメント悪化を起点とする「リスクオフ相場」であり、暗号資産市場が従来よりもマクロ要因に敏感に反応する傾向を改めて示しました。中長期的には、金価格の安定推移や金融政策動向が再び市場の支えとなる可能性があり、投資家は短期的な値動きに一喜一憂せず、グローバルマクロの流れを意識することが求められます。

バイナンス、急激な市場変動で損失を被ったユーザーへの補償を発表

最大手の暗号資産取引所であるバイナンス(Binance)は11日、10日夜に発生した急激な価格変動により損失を被った一部ユーザーに対し、ケースバイケースで補償を行う方針を発表しました。

同社の共同創業者兼最高顧客サポート責任者であるヘイ・イー(He Yi)氏は、バイナンスに起因する損失が確認された場合は補償対象とするとして、次のように述べています。

過去16時間にわたる市場の大幅な変動と、多くのユーザー流入により、一部のお客様に取引上の問題が発生しました。深くお詫び申し上げます。お客様のアカウント活動を個別に確認し、状況を分析の上、適切な補償を実施します。ただし、市場変動や未実現利益(含み益)にもとづく損失は補償の対象外です。

バイナンスは特に、ステーブルコイン・USDe、同社が発行するソラナ(SOL)の流動性ステーキングトークン・BNSOL、及びラップド流動性ステーキングトークン・WBETHの3トークンに関して声明を発表しました。これらのトークンは10日夜に大幅なディペッグ(元資産との価格乖離)が発生し、一部ユーザーのポジションで強制清算が生じたと説明しています。

たとえば、米ドルと連動し1ドルの価値を維持するよう設計されたUSDeは、一時0.66ドルを下回りました。この乖離が発端となり、一部のレバレッジ取引で強制清算が発生しました。

バイナンスは12日、影響を受けたユーザー全員を対象に補償を実施すると改めて発表しました。その内容によると、USDe、BNSOL、WBETHを担保として保有し、2025年10月10日21時36分(UTC)から22時16分(UTC)の間に発生したペッグ解除の影響を受けた先物・証拠金・ローン取引ユーザーに対して、発生した清算手数料とともに補償金を支払うとしています。補償額は2025年10月11日0時00分(UTC)の市場価格と、各清算価格との差額によって算出されます。

同社はまた、再発防止策として追加の安全対策を導入したと説明しました。具体的には、USDe、BNSOL、WBETHの価格指数の算出において償還価格を加味するほか、USDe指数ルールに最低価格閾値を設け、価格安定性を高める仕組みを導入したとしています。さらに、市場環境に応じてリスク管理パラメータを動的に見直す頻度を高めるなど、モニタリング体制を強化しました。

その後13日、バイナンスはディペッグ補償を2回にわけて実施し、総額は約2億8,300万ドル(約430億円)に達したと報告しています。不具合の背景として、同社は「世界的なマクロ経済イベント(トランプ氏による関税発言)」が市場の極端な変動を誘発し、投資家による集中売りを引き起こしたと分析しました。

今回の市場急変では、内部送金やEarn(利回り商品)の償還処理に一時的な遅延が発生し、証拠金補充にも影響が及んだといいます。これらの影響についても、バイナンスは被害を受けたユーザーに補償を行うとしています。

さらに同社は、特定の現物取引ペアで発生した異常値についても調査を進めています。たとえば、スイ(SUI)が一時的に85%急落した表示が確認されました。調査の結果、市場の急落で買い注文が不足した状態で、IOTXやATOMなど一部銘柄において2019年までさかのぼり過去の指値注文が発動したことが原因の一端であるとしています。

バイナンスは「今回の事象を教訓として、システムの安定性とリスク管理をさらに高めていく」と述べ、継続的な改善に取り組む姿勢を強調しました。

今週の経済イベントカレンダー
Calendar of Economic Events This Week

曜日日本時間経済イベント重要度
1013米国コロンブスデー(債券・為替休場)☆☆☆☆☆
101311:56中国貿易収支 9月★★★☆☆
101422:00IMF世界経済見通し(WEO)★★★★☆
101510:30中国消費者物価指数(CPI)・生産者物価指数(PPI) 9月★★★☆☆
1015 ⇨ 24日に延期米国消費者物価指数(CPI) 9月★★★★★
101521:30米国NY連銀製造業景気指数 10月★★★☆☆
101529:00米国地区連銀経済報告(ベージュブック)★★★☆☆
1015G20財務相・中銀総裁会議(ワシントン)★★★☆☆
1016未定米国小売売上高 9月★★★★★
1016未定米国生産者物価指数(PPI) 9月★★★☆☆
1016未定米国新規失業保険申請件数(10/5–10/11)★★★☆☆
101621:30米国フィラデルフィア連銀景況指数 10月★★★★☆
101718:00ユーロ消費者物価指数(HICP・確報) 9月★★☆☆☆
1017未定米国住宅着工件数 9月★★★☆☆
1017未定米国鉱工業生産指数・設備稼働率 9月(※公表延期の告知あり)★★★★☆
横スクロール(フリック)でご確認いただけます>>

注記:米国政府機関の閉鎖により、一部経済指標の発表延期が見込まれます。15日のCPI(消費者物価指数)は24日に発表予定です。

先行きの見通し

今週の金融市場及び暗号資産市場は、米中貿易摩擦の行方を見極める局面を迎えています。トランプ大統領による中国製品への関税引き上げ方針を受け、投資家の関心は「摩擦がどの程度長期化・激化するのか」に集まっています。ここでは、今後想定される2つのシナリオを軸に、金融市場と暗号資産市場の先行きを整理します。

シナリオ①:摩擦が長期化・激化する場合

米中両国の対立が長期化し、追加関税や報復措置が繰り返される展開となった場合、世界的なリスクオフ姿勢が強まる可能性があります。株式市場では特に製造業・半導体など中国依存度の高いセクターを中心に調整圧力がかかり、投資家心理の悪化から主要株価指数は上値の重い展開となるでしょう。

この環境下では、安全資産である金への資金シフトが強まりやすく、金価格は再び4,000ドル超の水準を試す展開が見込まれます。一方で暗号資産市場は、短期的にはリスク資産として売られやすくなり、BTCやETHが再び調整局面を迎える可能性があります。ただし、中長期的には「デジタル・ゴールド」としての役割が意識され、金価格の上昇局面で下値を固めながら徐々に反発するシナリオも想定されます。

XRPなどの決済系トークンについては、市場全体の流動性が低下するなかでもファンダメンタルが比較的安定しているため、ボラティリティは限定的になるとみられます。全体的には「リスク回避のなかでの耐久力」が問われる週となりそうです。

シナリオ②:摩擦が比較的短期で収束する場合

一方で、米中両国が交渉を再開し、関税強化の一部見直しや猶予措置など、一定の妥協がみられる場合は、リスク選好が戻る展開が想定されます。株式市場ではIT・ハイテク関連株を中心に買い戻しが入り、NYダウ平均やNASDAQが再び高値圏を試す可能性があります。

この場合、金価格はやや調整に入り、4,000ドルを下回る水準での安定推移が予想されます。暗号資産市場ではBTCが再び心理的節目である120,000ドル台(約1,820万円台)を試す可能性があり、ETHも4,000ドル(約60万円台)〜4,600ドル(約70万円台)へと回復する動きが見込まれます。XRPについてもリスクオンムードの高まりから短期資金が流入し、再び3ドル台半ば(約450円台半ば)を目指す可能性があります。

特に投資家心理の改善とともに、ETF(上場投資信託)経由での機関投資資金の流入が強まれば、BTCの取引量増加を通じて市場全体の需給が引き締まり、価格上昇を支える材料となるでしょう。

まとめ

現時点では、米中関係の不透明感が依然として市場の不安定要因となっていますが、暗号資産市場は金価格や株式市場の動きと連動しながらも、徐々に独自の価格形成を取り戻しつつあります。今回の下落は短期的な過熱感の調整に過ぎないとの見方も根強く、過度に悲観する局面ではないでしょう。

投資家の皆様におかれましては、短期的な値動きに惑わされることなく、米中交渉の進展や金融政策動向を注視しつつ、リスク許容度に応じたポジション調整を行うことが重要です。特に長期視点では、金価格やBTCの安定推移を確認しながら押し目を丁寧に拾う戦略が有効だと考えられます。

  • 株式と暗号資産の「リスクオン/リスクオフ」連動は短期的に強まりやすく、政策発言や地政学的要因によるボラティリティ上昇に注意が必要です。
  • 金価格の動向はインフレ期待や実質金利の変動と関連性が高く、暗号資産のディフェンシブ需要を測る指標としても注目されます。
  • イベントドリブンの週は、指標発表前後の流動性低下(スプレッド拡大・スリッページ)に注意する必要があります。

BTC積立企画

2023年6月から月毎に10万円分の暗号資産を実際に積み立てていき、そのポートフォリオを公開する企画です。ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、日本の取引所でも取り扱われており、米ドルとペッグ(連動)するステーブルコインであるダイ(DAI)を対象としています。

これまでの暗号資産積み立ての状況
Accumulation Status

[期間:2023.06.05 〜 2025.10.22]

ポートフォリオの現在の資産価値
 円

含み益(現在の資産価値 - 合計積立金額)
 円

利益率
%

積み立て回数
16 回

合計積立金額
1,600,000 円

ポートフォリオの構成

    ポートフォリオ

    銘柄 シンボル 対円レート 保有数量 日本円換算 構成比
    ビットコイン BTC [BTC/JPY] 0.1523 BTC %
    イーサリアム ETH [ETH/JPY] 1.8884 ETH %
    ダイ DAI [DAI/JPY] 80 DAI %
    横スクロール(フリック)でご確認いただけます>>