ChatGPTの世界
2023.06.16
皆さんは悩みを相談する場合、誰に頼るだろうか。もちろん重要な悩みは信頼のおける人に相談するだろう。
人間をやっていると重要でも緊急でもない悩み、つまり本当にどうでもいいような悩みが出てくるものである。
昨年末、ご縁があり玉木浩二氏のライブへ行ける事となった。話を聞いていくと、どうやら玉木氏がヴォーカルを務める安全地帯のライブだったようだ。
私世代でも玉木氏といえば「メロディ」をはじめとする名曲の数々は存じ上げている。が、安全地帯となると急に迷子になってしまう。でも玉木氏が歌えばそんな事は関係なかった。
圧巻の歌唱力と表現力、その存在感は唯一無二だった。もしかしたら「メロディ」が聴けるかもしれないという淡い期待は残念ながら叶わなかったが、それでも彼の生歌を聴けた事は貴重な経験となった。
そんな経緯もあり、先日茅ヶ崎のスナックでママに唆されて「メロディ」を歌うことになったのだが、これが全然しっくりこない(そもそもの歌が上手い下手の問題はここでは置いておく)。まるで出汁の効いてない素うどんを食べるがごとく味がしない。やはり人生経験が足りないのか。
20代前半の頃、経営していた会社で顧問をお願いしていた年配者に連れられて六本木のスナックでカラオケ採点の勝負をしていた思い出がある。その方のポジショントークで「お前の歌は心が入ってない。俺とは人生経験が違うんだよ」とよく言われた。勝負の場だから皮肉がたっぷり入っているのだが、当時は「歳も違うし仕方ないだろ!」くらいにしか思わなかった。
あれから約10年。やはりそういうものなのだろう。例えば、子役で大活躍している村方ののかちゃんが「あの頃は〜♪何もなくて〜♪」といくら上手に歌ったとしても申し訳ないが入ってこない(個人の見解です)。きっと40歳以上歳が離れた彼にとって、当時小僧だった私のことはそう思えたのだろう。
Q. 玉木浩二のメロディが上手く歌えない。
信頼のおける人の時間を奪ってまで相談できないこのどうでも良い悩みをあるところに相談してみた。そしたら10秒でこんな回答が来た。
A. 玉木浩二のメロディを上手く歌う為には、歌唱力を向上させる為の練習と、曲に対する理解を深める事が重要です。歌唱力を向上させる為の練習としては、歌唱のテクニックを学ぶことが大切です。歌声を出す為に必要な呼吸法や歌声の音量、トーンなどを学ぶ事で歌声を磨くことができます。また、スクリーニングやスタジオレッスンなどで、プロの指導を受けることも有効です。曲に対する理解を深める為には、曲の歌詞を理解し、曲の構成やアレンジ、歌い方などを学ぶことが大切です。また、曲を聴きながら歌う練習をすることで、曲の雰囲気やイメージを掴むことができます。
なるほど。曲への理解か。確かに足りない。そんな事を考えて歌った事はなかった。これは反省だ。
このもっともらしい回答をくれたのはなんとAI。ChatGPT先生だ。
さて、ようやく本題へ。
本日はChatGPTの世界を皆さんへ紹介しようと思う。
ChatGPTとは昨年11月末にリリースされた無料で使えるチャット形式のテキスト生成AIの事。開発元はサンフランシスコの企業、オープンAI社だ。
創業メンバーにはなんとあのイーロン・マスク氏やYコンビネーターの代表を勤めたサム・アルトマン氏など、著名人が名を連ねている。マイクロソフトはこの会社に対して2019年に10億ドルの出資を行っているが、最近では追加でさらに100億ドルもの金額を投資するとの発表があった今話題の企業だ。
このChatGPTがなぜこれほど世界を席巻しているのかというと、これまでのAIチャットボットのような機械的な返答と全く異なる点にある。実際に使用してもらえばわかるが、まるで人間とやりとりをしているかのような自然な会話で文章が生成される。
Webサイトや書籍、ニュース記事など膨大なデータを学習しているので、数秒で最適な回答を得る事ができ、さらに会話形式で内容を深掘りしていく事ができる。文字通り会話ができるので過去の会話の内容も文脈に織り込まれておりストレスを感じない。質問方法によっては様々な活用ができる点もユーザーの好奇心をくすぐっているのだろう。
ChatGPTを使えば、英語の翻訳、専門用語の理解やプログラミング言語でコードを書いたり、小説や歌詞を書くことも、会議の議事録のまとめや、1990年のオリコンヒットチャートから恋愛相談までなんでも受け入れてくれる。
例えば「スマートコントラクト」という言葉についてわかりやすく知りたい場合、下記のように質問をする。
そうすると回答をしてくれる。だが、このケースのように回答が途中で切れてしまうこともある。そんな時はシンプルに教えてあげよう。
いかがだろうか。会話としてこちらの求めている内容にしっかり答えてくれていることがわかる。これが無料で使えるというのだから使わない手はないだろう(今後は有料化も視野に入れているとの事)。ちなみに学習するデータベースの都合上、日本語よりも英語で使用するほうが精度は高いとの事だ。
このChatGPT、日本国内ではエンジニア界隈の方々を中心にTwitterなどでもざわつき始めているように思うが、グローバルで見たらその人気は凄まじいものがある。なんと、リリース5日目にしてユーザー数は100万人を突破したとのことだ。これはFacebookが100万人のユーザーを獲得するのに約10ヶ月を費やした事を考慮すると、その熱狂ぶりはご理解いただけると思う。
少し前に何でも聞ける検索エンジンに敬意を込めてGoogle先生という言葉が広まったが、まさにその進化版という感じだろうか。GPT先生がGoogle先生を駆逐する初動なのかもしれない。実際にGoogle社ではChatGPTに対して非常事態宣言を出したとの話も出ている。
シンギュラリティ(Singularity)という言葉がある。人工知能が人間の能力を超越するその臨界点の事を意味するが、人工知能研究の第一人者である先述のレイ・カーツワイル博士は、「2029年にAIが人間並みの知能を備え、2045年にシンギュラリティが来る」と提唱している。
ChatGPTが現れた事により、AIの活用が一気に身近になった事は間違いない。その解像度はまだ低いがこれも時間経過と共に指数関数的飛躍でシンギュラリティに向かって行くだろう。ちなみに昨年8月、ロンドンに拠点を置くStability AI社がStable Diffusionという入力されたテキストを元にAIが画像を作成するサービスをリリースしている。
常識が新しい常識へと覆される瞬間。皆さんも是非触って感じて欲しい。
◆ChatGPT
https://openai.com/blog/chatgpt/
◆Stable Diffusion