米GDP3年ぶりのマイナス成長 景気後退と利下げの現実味
2025.05.02
2025年1-3月期の米国GDP、3年ぶりのマイナス成長
4月30日に米国商務省は2025年第1四半期(1-3月期)のGDPを発表しました。前期比年率-0.3%と3年ぶりのマイナス成長となり、市場予想の-0.2%を下回り、2024年10-12月期の+2.4%から大きく減速しました。これまで先進国の中で1強と言われ、2023年+2.9%、2024年+2.8%の高い成長を続けた姿から大きく悪化した結果となっています。
個人消費の減速と関税政策の影響
今回の内訳を見ると米国GDPの約7割を占める個人消費が+1.8%で、前期の2024年10-12月期+4.0%から大きく減速しています。それでもサービス支出の幅広い増加と非耐久財の持ち直しに辛うじて支えられました。
個人消費が牽引役となっている米国経済ですが、トランプ大統領による関税政策の発動以降、先行きへの不透明感などが消費に悪影響を与えていると見られています。
輸入の急増とGDPへの影響
一方、輸入は前期の-1.9%から+41.3%となり、関税が発動する前の駆け込みと見られる動きなどによって大きく増加しました。輸入は国外での生産を示すため、増加するとGDPを押し下げマイナスに働きます。
金融市場関係者や専門家からは、今回GDPがマイナスに転じたのは輸入の急増が主な要因で、景気減速のサインとして受け止めるべきでないという見方もありますが、今後、トランプ政権の関税措置が個人消費や雇用などにどの程度の影響を及ぼすのか、懸念が広がっています。

関税政策と今後の景気見通し
市場関係者の多くは、関税の引き上げが供給ショックを起こし、企業活動の抑制や需要の減少につながるのではないかと予想しており、貿易相手国による報復関税も米国からの輸出を抑制し、本年末に向けて厳しい環境を迎える可能性を指摘しています。
利下げ観測の高まりとFOMCの注目
こうした状況から金融市場では、米国がリセッション(景気後退)に陥る確率は45%と予想しており、今週発表されたJOLTS求人件数の減少やADP雇用者数の鈍化などから、今後年内に4回の利下げを織り込んでいます。
次のFOMC(連邦公開市場委員会)は来週の5月6日-7日に予定されています。市場関係者からは「軟調なデータで利下げが早まる可能性はある」「FOMCが減速する経済を下支えするために、より早期に利下げする可能性が高まっている」との見方が出ています。
パウエル議長の慎重姿勢
パウエルFRB議長は、トランプ大統領による関税政策が米国景気の悪化と物価上昇の加速という両方のリスクを警戒し、利下げに対して慎重な態度を続けています。これまで次回のFOMCでは政策金利の引き下げは見送られるとの見方が支配的でしたが、市場の捉え方は急速に変化しており、来週の会合が強く注目されます。