IMFが2025年世界経済見通しを下方修正

4月22日にIMF(国際通貨基金)が2025年の世界経済見通しを発表しました。1月の発表した結果から、世界全体の経済成長率は0.5%下方修正され、+2.8%となっています。この発表は米国トランプ政権が、「相互関税」を発表した4月4日までの情報を基にしており、トランプ政権の経済政策や各国の報復措置による貿易摩擦の激化などを下方改定の理由としてあげています。

世界経済に高まる不確実性

IMFによると、世界経済は経済成長率の勢いが欠けつつも安定していたが、世界中の政府が政策の優先事項を変える中で状況は変化し、不確実性が過去最高の水準にまで高まっているとしています。また今回の見通しでは、トランプ政権の関税政策により世界の実効関税率が100年ぶりの水準に達したことや、非常に予測不可能な環境であることを反映し、2025年1月から大幅に下方改定され、世界の総合インフレ率は、1月の予想よりもやや遅いペースで減速する見込みとしています。

世界経済成長率予測(実質GDP成長率%)

地域2024年2025年予測2026年予測
世界全体3.32.83.0
先進国・地域1.81.41.5
米国2.81.81.7
ユーロ圏0.90.81.2
ドイツ-0.20.00.9
フランス1.10.61.0
イタリア0.70.40.8
日本0.10.60.6
英国1.11.11.4
カナダ1.51.41.6
新興市場国・発展途上国4.33.73.9
中国5.04.04.0
インド6.56.26.3
ロシア4.11.50.9
ブラジル3.42.02.0
メキシコ1.5-0.31.4

主要国の変化と注目点

今回発表された経済成長率見通しの内容は、1月から下方改定されたわけですが、昨年の経済成長率との比較で見ると、世界全体では3.3%から2.8%へ、0.5%の下方修正です。先進国で1.8%→1.4%(-0.4%)、新興国で4.3%→3.7%(-0.6%)とともに減速する見通しですが、各国地域別で見ると関税政策の中心国となっている米国が2.8%→1.8%(-1.0%)、その相手国の中国も5.0%→4.0%(-1.0%)と、両国ともに1.0%の大きな減速が見込まれています。

先進国ではフランスが-0.5%、イタリアが-0.3%の減速ですが、昨年マイナス成長となったドイツは-0.2%→0.0%とやや回復。日本は0.1%→0.6%と0.5%の加速を示し、注目を集めています。米国との関税問題で不透明感はあるものの、中国やアジア、ユーロ圏との貿易拡大が期待されていると考えられます。

新興国への影響と懸念

インドは-0.3%の減速ですが、ブラジルは-1.4%、メキシコは-1.8%と大きく落ち込む見込みです。特にメキシコは2024年の1.5%から2025年は-0.3%とマイナス成長が見込まれており、米国との関税問題の深刻さが表れています。

ロシアはウクライナ侵攻に伴う経済制裁とインフレの影響で、2024年の4.1%から1.5%への-2.6%と急減速。ロシア連邦統計局によると、2025年3月の消費者物価上昇率は前年同月比10.3%と、二桁台の高インフレが続いています。

関税貿易戦争のイメージ

IMFの警告と国際協調の必要性

このように、米国トランプ政権により始まった関税問題は世界全体の経済成長に大きな影響を与えており、米国の政策は依然として流動的で先行きが見えない状況です。

IMFは、貿易摩擦や政策の不確実性が成長をさらに抑制し、金融環境の急激な引き締めや資本流出を招くことで、特に新興国にとって大きなリスクになると警告しています。経済見通しのリスクは下振れ方向に傾いており、各国には国内経済の安定と国際協調を促す政策の調整が求められています。

今回、IMFが強い危機感をもって下方改定を行った点を重く受け止め、各国政府が早期に関税問題を収束させることが強く望まれます。