FOMC議事要旨が示す利下げの兆候と金市場への影響
2024.08.23
7月30日-31日に開かれたFOMCの議事要旨が昨日(8/21)公開されました。
FOMC議事要旨の内容
議事要旨では「最近のインフレでの進展と失業率の上昇は、同会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げる妥当な論拠を示したとの見解を幾人かは示した、もしくはそのような決定を支持しただろうとした」とされ、「データが引き続きほぼ予想通りの内容となれば、次回会合での利下げは適切になる公算が大きいとの考えを大多数が示した」とされています。
さらに、インフレは鈍化しており、過去数カ月に金融当局の目標である2%に向けて「一定のさらなる進展」があったと7月の会合で指摘がありました。また「参加者ほぼ全員が、最近のディスインフレに寄与した要因は今後数カ月にインフレに下押し圧力をかけ続ける可能性が高いとの見解を示した」としています。
市場の反応と今後の見通し
こうした議事要旨の内容を受けて、ハリス・ファイナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は「9月利下げへの疑念をFOMC議事要旨が一掃した」と指摘し、市場関係者が9月利下げへの自信を深めた内容となりました。
今週23日にジャクソンホール会合でパウエルFRB議長が講演を行う予定ですが、ここでは今回の議事要旨に沿った内容での講演をすると思われます。次回FOMCの前に雇用統計や消費者物価指数の発表もあり、それらのデータを確認したうえで確信を持って利下げを発表する流れになると考えられます。
金市場への影響
米国金融市場では、FOMC議事要旨の内容から株式市場が小じっかりし、債券市場では短期債を中心に利回りが低下しました。そうした中で今後注目されていくのが金市場になると考えられます。
金価格は、今年に入ってから堅調に推移していますが、今月はじめて1トロイオンス2,500ドル台に乗せ、中旬からは2,500ドル台の高値圏でのもみあいとなっています。
金価格は歴史的に金利と逆相関に動く傾向が強くあり、米国の利下げ観測の拡大が強い支援材料になりそうです。欧米の機関投資家による金ETFへの動きも強まっています。
欧米の金融機関の金価格予想
- JPモルガン: 2024年10-12月平均価格 2,650ドル、2025年1-3月平均価格 2,700ドル
- シティバンク: 2025年後半 2,800~3,000ドル
- ソシエテジェネラル: 2024年末 2,750~2,770ドル
このような動きの他にウクライナ情勢や中東情勢を巡る地政学リスクの高まりも後押しをしています。「有事の金買い」は有事になると株式などの金融資産の価格が不安定になることから「安全資産」として金が買われやすいことで言われています。今後、中東での本格的な紛争が起きれば金相場を押し上げる事が考えられます。
またロシアによるウクライナ侵攻のあとに始まったロシアへの経済制裁により、米国債やドルを外貨準備として保有するリスクに対しての警戒感が高まりました。外貨準備の代替資産として新興国を中心に金の保有が増えています。
中央銀行と金の保有動向
世界の中央銀行による金の2023年の純購入は約1,030トンで2022年の1,082トンに続いて2年連続で1,000トンを超えています。2022年は1950年以降で過去最高でした。このように中央銀行による保有で新興国では外貨準備の2割程度になっています。保有量を増やしている大手は中国ですが、中国の外貨準備に占める割合はまだ5%程度ですので、今後さらに増やしていくと思われます。
今後の展望
今年は、これから米国で大統領選挙があり、共和党・民主党の候補どちらが勝っても、米中対立による地政学リスクの高まりや経済政策による米国財政の悪化懸念などが発生しそうです。
世界的に不安定な状況の中で「幅広い不安の受け皿として、安全資産である金への分散効果が評価される」と考えられ、また「インフレヘッジの資産」として注目を集めると思われます。
これからの金価格の動きから眼が離せなくなると考えています。