日米の金融政策会合とドル円為替相場

7月30日-31日に日本銀行金融政策決定会合と米国FOMCの日米の金融政策を決定する会議が開催されました。日本銀行は政策金利を0.25%へ引き上げる事を決定し、FOMCは政策金利を据え置いたものの9月の会合での利下げを示唆するコメントを発表しました。日米の中央銀行はそれぞれの異なる環境を踏まえ、自国がこれから遭遇する環境へ備える姿勢を見せた形となっています。

日本銀行の利上げ決定

日本銀行は今年3月にマイナス金利政策を解除し金利のある世界へ再び足を踏み入れました。しかし、短期金利は0~0.1%という極めて低い水準にあり、国内経済へ配慮した金融緩和的な環境が維持されていました。そのため5%台の政策金利を続ける米国との金利差が改めて意識され、円売りに滑車がかかり160円台へ円安が進行する事態となりました。今回の日銀の利上げはかねてより検討されていたものの、大きく揺れる円安の進行が日銀の判断を押したものと考えられます。

植田日銀総裁は記者会見で「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上に行ってしまうリスクもある」と語り、さらに「2年以上にわたり目標の2%を超えるインフレを踏まえると実質金利は深いマイナスにある。先行きリスクに早めに手を打った。現在は中立金利よりもまだ下の水準にある。」と述べています。また「経済・物価の情勢が見通しに沿って動いていけば、引き続き金利を上げていく。」として、年内の追加利上げの可能性をも示唆しました。

日銀は今回の会合で日銀が購入している国債の買い入れを減らす具体的な計画も決定しています。この措置により量的な引締めも始まることになります。そして円安について「重要なリスクと認識して政策判断の一つの理由とした」と述べ、今回の利上げ判断において円安に伴う物価の上振れ懸念を考慮した事を明らかにしています。

中央銀行のイメージ

米国FOMCの決定とその影響

一方、米国のFOMCは、政策金利を5.25%-5.50%とし8会合連続での据え置きを決定しました。会合後の記者会見でパウエルFRB議長は「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかである。そのテストが満たされれば、早ければ次回9月のFOMC会合で政策金利の引き下げが選択肢となり得る」と述べました。

また「ここ数カ月、委員会が目指す2%のインフレ目標に向けて一定のさらなる進展が見られた」とし、「雇用とインフレの目標達成に対するリスクは引き続き、より良いバランスへ移行していると委員会は判断している」と述べています。しかし、声明での文言に「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの『確信を強める』まで政策金利の引き下げは適切ではない」との文言を維持し、「今後の経済の展開次第で(年内の政策金利引き下げが)ゼロにも複数回にもなるというシナリオは想像しうる」とコメントしました。

この会見で金融当局が利下げに向けて環境を整えつつある印象を示唆しましたが、今後の環境変化のリスクを踏まえた慎重なコメントとなっています。

ドル円為替相場への影響

今回の日米中央銀行の決定を受けてドル円為替相場は円高へ大きく動き、1ドル148円台まで進んでいます。今後の日米の金融政策の決定は、確定されたものではありませんが、日本銀行による利上げそしてFRBによる利下げという方向性をベースとしてドル円相場は動きを進めていくことになります。

ドル円相場は米国のインフレを契機として2021年の110円台からこれまでの3年間で約50円の円安となりましたが、その反対の方向へ動きを強める可能性が高まっています。日本の政治体制や米国の大統領選挙そして両国の経済動向と今後の環境によりますが、これからの2-3年間で120-130円程度への円高への動きが十分に考えられるのではないでしょうか。

今後の投資を考える上で今回の両国の会合は重要な意味を持っていると考えています。