米国CPI予想を上回る大幅な上昇

4月10日に米国労働省が発表した消費者物価指数(CPI)3月は、総合で前年同月比+3.5%と前月の+3.2%から加速しました。昨年9月以来の大幅な上昇で市場予想の+3.4%も上回りました。

 変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年同月比+3.8%と前月から横ばいでしたが、市場予想の+3.7%を上回りました。前月比も+0.4%と前月と同じでしたが、こちらも市場予想の+0.3%を上回りました。過去3ヶ月のコア指数は年率+4.5%で昨年5月以来の大幅な上昇となっています。

この3月のCPIの状況は、20年ぶりの高い金利水準を維持しているにも拘わらず、インフレ抑制の停滞の可能性を浮き彫りにしました。堅調な労働市場が家計の需要を支えていると見られます。この結果、市場では今年の9月まで利下げを見送るとの観測が強まっています。

主な市場関係者の見方は次の通りです。

  • ファースト・シチズン 経済リサーチディレクター フィリップ・ニューハート氏
    年内のFRBの行動の可能性を完全に排除するものではないが、向こう数ヶ月以内の利下げの確率を確実に低下させる内容だった

  • ウエルズ・ファーゴ シニア・エコノミスト サラ・ハウス氏
    FRBのインフレ目標に向けた道のりの「障害」となる可能性が高い

  • JPモルガンAM チーフ・グローバル・ストラテジスト デービッド・ケリー氏
    6月利下げの可能性は消えた

  • チャールズ・シュアブ 債券ストラテジスト キャシー・ジョーンズ氏
    サービス・セクターのインフレが根強ければ、金融緩和の余地は限られる

  • ローレンス・サマーズ元財務長官/ハーバード大学教授
    米国金融当局の次の動きが金利の引き下げでなく引き上げになる可能性はそれなりにある。15%程。金融当局は非常に慎重になる必要があるだろう。 住宅コストが全体的な物価指標の著しいデフレ要因になると予想されていたが、それはまだ実現していない。賃貸部門はさておき、持ち家のコストはデフレの様相は見せておらず、2,024年を通じて価格圧力を持続させる可能性がある。気がかりな兆候はそれだけではなく、食品とエネルギー、住宅を除いたコア・サービス価格が賃金上昇によって押し上げられている事がもう一つの主な懸念である。

このように誰もが今回の発表結果を米国の利下げが慎重になる材料と受け止めています。

米国金融市場は、こうした見方を反映して長期金利が急上昇し、米国10年債利回り4.54%と0.18%上昇し、2年債利回りも一時4.97%まで上昇しました。一方、米国株式市場はNYダウ平均株価が422ドル安、S&P500が49ポイント安、NASDAQが136ポイント安と3指標とも大きく下落しておわっています。

今回の結果を受けて、米国金融市場は高金利の長期化、企業業績の悪化を懸念する状況がしばらく続きそうです。

 一方、国内では為替相場が一時1ドル=153円台まで進み、市場関係者から日本銀行による早期の利上げ観測が出始め、ノムラ・インターナショナルから「日本銀行が輸入インフレを軽視するのは、円の弱さを考えると難しい、予想よりも早期の利上げをする必要に迫られる」とコメントが出されています。

今回の米国CPIの結果は米国のみならず、ECBの金利引き下げにも影響を与える可能性もあり、また国内の金融政策や株式市場への影響にも注視が必要と考えます。