ビットコイン高値圏で停滞 ─雇用統計と貿易交渉が与える次の一手とは?|週間ビットコイン予想 2025.7/07-13

先週の暗号資産市場の動き
先週の暗号資産市場は、トランプ大統領による貿易交渉の交渉期限(7月9日)が迫り、その進展への注目が集まる中で推移しました。一方で7月3日に発表された米国の雇用統計が今後の金融政策の方向性を左右する要因となる中、7月4日(金)の独立記念日を前にして、様子見姿勢が広がる中途半端な週となりました。
6月30日(月)〜7月4日(金)の概況
6月30日(月)、貿易交渉について最大12カ国との合意が7月9日(水)までにまとまる見通しが伝えられ、市場には交渉進展への楽観ムードが広がりました。また、米国の9月以降の利下げ期待が高まり、株式市場は堅調に上昇。しかし、ビットコイン(BTC)は108,300ドル(約1,560万円)近辺で始まったものの、高値警戒感から107,100ドル(約1,540万円)近辺まで下落しました。
翌7月1日(火)のECBフォーラムでは、FRBのパウエル議長が利下げに慎重な姿勢を示し、米国経済については底堅さを強調。これによりNYダウとS&P500は上昇しましたが、NASDAQはハイテク株の売りで下落。BTCは105,600ドル(約1,510万円台)まで軟化しました。
7月2日(水)に発表されたADP雇用統計では、民間雇用が予想外の3.3万人減少となり(2023年3月以来)、株式市場はやや軟調に。一方、利下げ期待が再燃したことでBTCは一時109,700ドル(約1,570万円台)まで上昇し、ETHやXRPもそれに連動する形でしっかりとした動きを見せました。
7月3日(木)発表の雇用統計では、失業率が4.1%と予想を下回り、非農業部門就業者数も予想を超える14.7万人増。金融緩和を正当化する環境ではないという見解が強まり、株式市場はNYダウ+344、S&P500+51、NASDAQ+207と大幅上昇。暗号資産市場もこの流れに乗り、BTCは109,500ドル台(約1,580万円近辺)を維持しました。
7月4日(金)は独立記念日のため米市場は休場となり、ビットコインは108,000ドル(約1,560万円近辺)へ下落して週を終えました。
BTC(ビットコイン):高値圏でもみ合い、ETFフローが一服
先週のBTCは、心理的節目となる11万ドル(約1,600万円)近辺で上下を繰り返す展開でした。ETF市場では一部ファンドの資金流入が鈍化しており、「現物ETF導入→継続的買い支え」という期待感が一服しています。マクロ環境では米国の雇用統計が堅調だったことで利下げ観測はやや後退し、投資家心理に影響を与えました。
ETH(イーサリアム):技術進化に注目集まるも価格は停滞
ETHはBTCに連動する形で2,480ドル(約36万円)〜2,620ドル(約38万円)のレンジ内で推移。EIP-7702など次期アップグレード案の議論が進み、またレイヤー2技術(ZK-RollupsやOP Stack)の実装に進展が見られるなど、技術面では前向きな要素が多いものの、価格にはまだ反映されていない状況です。
XRP(リップル):規制リスクは後退、ODL展開に注目
XRPは2.15ドル(約313円)〜2.30ドル(約333円)のレンジで安定推移しました。SECとの裁判はリップル社に有利な形で進展しており、市場もそのリスクを織り込み済みと見られています。注目されるのは中南米やアジア地域でのODL(オンデマンド流動性)サービスの拡大。実需に基づいた成長が期待される状況です。
全体として、主要3通貨は方向感に欠ける週でしたが、個別のトピックでは次の相場材料となりうる要素が育ちつつあります。今週以降のイベント(FOMC議事録、日米CPIなど)が大きな転機となる可能性もあるため、引き続き注視が必要です。
今週の経済イベントカレンダー
Calendar of Economic Events This Week
月 | 日 | 曜日 | 日本時間 | 国 | 経済イベント | 重要度 |
---|---|---|---|---|---|---|
07 | 07 | 月 | 18:00 | 欧州 | ユーロ圏 小売売上高5月 | ★★☆☆☆ |
07 | 08 | 火 | 08:50 | 日本 | 国際収支(経常収支、貿易収支)5月 | ★★★☆☆ |
07 | 09 | 水 | 10:30 | 中国 | 生産者物価指数(PPI)6月7月 | ★★★☆☆ |
07 | 09 | 水 | 10:30 | 中国 | 消費者物価指数(CPI)6月 | ★★★☆☆ |
07 | 09 | 水 | 27:00 | 米国 | FOMC(連邦公開市場委員会)議事録公表 | ★★★★☆ |
07 | 10 | 木 | 21:30 | 米国 | 新規失業保険申請件数6/29-7/5 | ★★★☆☆ |
来週以降のイベント | ||||||
07 | 15 | 火 | 21:30 | 米国 | 消費者物価指数(CPI)6月 | ★★★★☆ |
07 | 16 | 水 | 21:30 | 米国 | 生産者物価指数(PPI)6月 | ★★★☆☆ |
07 | 18 | 金 | 08:30 | 日本 | 全国消費者物価指数(CPI)6月 | ★★★☆☆ |
7月29日(火)-30日(水) | 米国 | FOMC(連邦公開市場委員会) | ★★★★★ | |||
7月30日(火)-31日(水) | 日本 | 日銀金融政策決定会合 | ★★★★☆ |
市場の焦点と金利動向
今週は、9日に期限を迎える貿易交渉の動きが注目されます。交渉を継続してきた12カ国へトランプ大統領から書簡が送られ、新たな関税率が判明する予定ですが、詳細は本日米国にて発表される見込みです。この結果が金融市場や暗号資産市場に影響を及ぼすかがポイントとなります。
また、今週は日米で消費者物価指数が発表されます。日米ともに今月末に金融政策決定会合が予定されており、米国では今回は利下げがなくとも年内のいつ頃に利下げがあるかが検討される週となりそうです。
一方、日本では日銀がいよいよ金融引き締め(利上げ)に向けた姿勢を強めつつある段階にあります。特に注目されているのは、国内経済が依然として堅調に推移している点で、個人消費や企業設備投資などに底堅さが見られることが、金融政策判断の重要な根拠となっています。加えて、エネルギー価格の上昇や人手不足を背景としたサービス価格の引き上げなど、インフレ圧力が徐々に定着しつつある兆しもあり、これらが「持続的な物価上昇」という日銀の政策判断基準に合致しつつある状況です。
今回発表予定の全国消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回るようであれば、日銀が7月末の金融政策決定会合で利上げに踏み切る可能性も浮上しており、注目度は極めて高いといえます。仮に利上げが実施されれば、2016年から続くマイナス金利政策の転換点となり、長期金利の上昇とともに日本円の相対的な価値が回復する可能性があります。
このような日米間の金融政策の乖離や利上げ・利下げの方向性は、為替市場におけるドル円相場に直接的な影響を及ぼします。そしてドル円相場は暗号資産市場にとっても極めて重要な変数です。特にビットコインなどの主要通貨は、米ドル建てでグローバルに取引されており、円安局面では日本国内の暗号資産投資家の「円建て価格」が相対的に高くなるため、買い圧力や投資マインドにも影響を与えます。反対に円高が進行すれば、円建て価格が割高感を持たれ、利確や様子見姿勢が強まりやすくなります。
したがって、今週発表される日米双方のCPIは、暗号資産市場にとっても直接的・間接的に重要なファクターであり、その内容次第ではBTCやETHのボラティリティを一段と高めるきっかけになる可能性があります。市場参加者は金利政策だけでなく、それがもたらす為替変動、そして資金の流れへの波及を総合的に捉えて判断する必要があります。
今週の展望と注意点
ただし全体として、今週は大きな材料になりそうなものは少なく、金融市場・暗号資産市場ともに小動きでの展開が想定されます。ただし、トランプ政権のデジタル作業部会が取りまとめる報告書の期限が迫っており、その発表には注意が必要です。
ビットコインは今週も高値近辺でのもみ合い展開となる可能性がありますが、皆さまにおかれましては、引き続きさまざまな発表や価格の推移を注視していただきますようお願いいたします。