ビットコイン膠着も、株式市場は堅調──米雇用統計がカギを握る1週間へ|週間ビットコイン予想 2025.6/30-7/06

先週の金融市場の動向
先週の金融市場は中東情勢の落ち着きと関税問題の楽観的な見方により、株式市場を中心に堅調な動きとなりました。
6月23日(月)は中東情勢が悪化するのでは?との懸念から株式市場は下落して始まりましたが、米連邦準備理事会(FRB)のボウマン副議長による利下げを支持する発言を受けて上昇に転じ、株価は大きく上昇しました。暗号資産市場ではビットコインが101,000ドル(約1,480万円)近辺から始まり、株式市場に引っ張られるように一時106,000ドル(約1,550万円)近辺まで上昇し、105,000ドル台(約1,530万円台)で終えています。
24日(火)にはトランプ大統領からイランとイスラエルの停戦合意が伝えられ、株式市場はNYダウ平均で+507ドルと大幅高となりました。ビットコインも堅調な動きとなりましたが、106,000ドル台(約1,540万円台)での動きとなりました。
25日(水)はパウエルFRB議長の上院での議会証言を控えて、まちまちの展開となりやや甘い動きの一日となりました。ただビットコインはやや買われて107,000ドル台(約1,550万円台)へ進んでいます。
26日(木)はトランプ大統領が次期FRB議長の早期指名に関する報道があり、金融市場では利下げ期待が強まりました。27日(金)にはベッセント財務長官が「報復税」と呼ばれる内国歳入法899条の新設を見送るよう議会へ要請し、即日受入が行われました。これは米政権が問題視していた国際的な最低法人税率の枠組みについて、主要 7カ国(G7)が米国の意向に沿う合意に至った事を評価しての判断と思われます。
こうした動きから株式市場は週末にかけて一段高となっています。しかし、暗号資産市場の反応は鈍く、この2日間のビットコインは107,000ドル(約1,550万円)近辺のもみ合いに終始して週を終えています。
アルトコインの動き
ETHやXRPは23日にそれぞれ2,430ドル(約35万円)台と2.20ドル(約315円)近辺へ上昇しましたが、その後は方向感に欠ける展開が続いていました。週初は中東情勢の緊迫化によってリスクオフムードが広がり、一時的に暗号資産市場全体が下押しされましたが、翌24日にはイランとイスラエルの停戦合意が伝えられたことで投資家心理が回復。これを受けてETHは一時7%、XRPは9%近く急騰し、短期的な反発を見せました。
XRPについては、27日に米リップル社が米証券取引委員会(SEC)との訴訟において控訴を取り下げたことが伝えられ、市場では「訴訟長期化の懸念が後退した」として好感されました。この発表を受けてXRPは急速に買いが入り、一時17%の上昇を記録。エコシステム面でも、さまざまなブロックチェーンに対応したクラウド型収益プログラム「SunnyMining」において、XRPの取り扱いが始まったことも市場に明るい材料を提供しました。
一方、ETHはバリデータの分散化進展や、機関投資家向けサービスの強化を背景に底堅い動きが続いています。今週に入ってからは2,500ドル(約36万円)台に乗せる場面もあり、年初来高値に近づく勢いです。さらに、米国での現物型イーサリアムETFの承認期待が再燃しており、これがETHの中期的な支援材料となるとの見方も強まっています。
総じて、今週のアルトコイン市場は政治・地政学的リスクの緩和や規制面での進展が追い風となり、ETHとXRPはいずれも「買い支えが強いが一段高には材料不足」という慎重ながらも前向きな地合いで推移しています。今後は米国経済指標やFRBの動向、暗号資産規制の明確化を巡る発言が、引き続き相場を左右する要因となりそうです。
今週の経済イベントカレンダー
Calendar of Economic Events This Week
月 | 日 | 曜日 | 日本時間 | 国 | 経済イベント | 重要度 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 06 | 月 | 22:45 | 米国 | シカゴ購買部協会景気指数(PMI)6月 | ★★★☆☆ |
2 | 07 | 火 | 08:50 | 日本 | 日銀短観 | ★★★★☆ |
3 | 07 | 火 | 17:00 | 欧州 | ユーロ圏製造業PMI(6月) | ★★☆☆☆ |
4 | 07 | 火 | 18:00 | 欧州 | ユーロ圏消費者物価指数(HICP)6月 | ★★★☆☆ |
5 | 07 | 火 | 23:00 | 米国 | ISM製造業景気指数6月 | ★★★★★ |
6 | 07 | 火 | 23:00 | 米国 | JOLTS求人件数5月 | ★★★★☆ |
7 | 07 | 水 | 21:15 | 米国 | ADP雇用者数6月 | ★★★★☆ |
8 | 07 | 木 | 21:30 | 米国 | 雇用統計6月(失業率、非農業部門就業者数、平均時給) | ★★★★★ |
9 | 07 | 木 | 23:00 | 米国 | ISM非製造業景気指数6月 | ★★★★★ |
今週の注目ポイントと見通し
今週は週末に発表される米国6月雇用統計を控え、金融市場では経済指標への注目度が一段と高まっています。特に7月1日(火)に発表される「JOLTS求人件数(5月)」、7月2日(水)の「ADP民間雇用者数(6月)」は、いずれも労働市場の実態を先行的に示す指標として注視されています。
JOLTSは雇用の需給バランスを測る重要な統計であり、前月は求人件数が予想を下回る減少となったことで、市場では「労働市場が過熱から転換しつつある」との見方が浮上しました。今回も同様の減速傾向が示されれば、FRBの政策判断に影響を及ぼす可能性があります。
また、ADP雇用者数は民間部門の雇用動向を示すもので、特に中小企業セクターの採用活動が反映されやすいとされています。直近数ヵ月では、雇用者数の伸びが月を追うごとに鈍化しており、今回の結果次第では「労働市場の軟化→インフレ圧力の後退→利下げ」という連想が市場に広がる可能性があります。
これらの経緯を踏まえて、週末の6月雇用統計(非農業部門雇用者数・失業率・平均時給)は、FRBの今後の政策スタンスを占う上で最も重要なイベントとなります。
市場では、非農業部門の雇用者数が前月の27.2万人増から20万人前後へ減速するとの見通しが多く、賃金上昇率にも注目が集まっています。仮に賃金の伸びが鈍化すれば、消費主導のインフレ圧力が和らぐとの見方から、利下げ期待が強まる可能性があります。
実際、FRBは次回のFOMC会合を7月30日〜31日に予定しており、先週にはFRBのボウマン副議長が利下げを容認する発言を行ったことで、市場には再び「夏場の利下げ」シナリオが意識され始めています。従来、ボウマン氏は比較的タカ派的な立場を取っていたこともあり、その発言の変化は「FRB内部でもスタンスに変化が出てきた」と受け止められました。
こうした背景から、今週の一連の雇用関連指標は単なる統計発表にとどまらず、「FRBが年内に利下げに踏み切るかどうか」という金融政策の大きな方向性を左右する重要な判断材料として、極めて高い注目を集めています。市場関係者や投資家は、数値の強弱だけでなく、その中身やセクター別の傾向にも敏感に反応する展開が予想されます。
暗号資産市場の展望
中東情勢の落ち着きや関税問題への政権の楽観的な見方も金融市場を安心させており、好材料には素直に反応を示す地合になっていると考えられます。金融市場以上は今週も先週の展開を引き継ぎ、上値を試すものと思われますが、暗号資産に関連する好材料は今のところあまりなく、暗号資産市場の動きは株式市場を見ながらになると思われます。基本的には下値を固めるような動きの週と考えております。
投資家へのメッセージ
投資家の皆さまには、引き続き発表される経済指標ならびにトランプ政権による関税を中心とした政策へのコメントを注視していただきたいと思います。