ビットコイン最高値更新!インフレ懸念と米関税政策が金融市場に与えた影響とは?|週間ビットコイン予想 2025.7/14-20

先週の市場動向
先週の金融市場は、トランプ大統領による関税政策の追加コメントに翻弄される場面もありましたが、米国経済の堅調さや関税問題への慣れが市場心理を下支えし、株式市場は総じて堅調な動きを見せました。
NYダウ平均は昨年12月4日に付けた高値に接近し、S&P500とNASDAQは史上最高値を更新しました。
一方で、インフレ懸念の高まりも鮮明となり、米国10年国債利回りは4.4%台に上昇しています。こうした金利上昇とインフレ警戒の中でも、暗号資産市場は堅調に推移し、BTCはドル建てで史上最高値を更新する展開となりました。
週前半の動き
7日(月)は、関税に対する警戒感が強まる中で株式市場は下落してスタート。特に、日本や韓国に対して関税率25%の適用が公表されたことで、株価は一段と押し下げられました。
BTCはこのリスクオフの流れを受けてやや軟調に推移し、109,200ドル(約1,570万円)から108,200ドル(約1,580万円)近辺へと小幅に下落しました。この日、関税率の発表を受けて円安に振れたこともあって対円では小幅に上昇しました。
8日(火)には、トランプ大統領が銅および医薬品関連製品への新たな関税発動の意向を示し、政策の不透明感が再び強まりました。これにより株式市場は再度下落し、米国10年国債利回りは4.40%に上昇しています。
一方で、暗号資産市場ではこうした関税政策を通じたインフレ圧力の高まりがビットコイン(BTC)の評価を支える要因となり、BTCは108,900ドル(約1,590万円)台まで上昇しました。
週後半の動きと市場の反応
9日(水)は、注目されていた FOMC議事録 が公開され、市場参加者の間ではその内容に対し「タカ派でもハト派でもない中立的な評価」が広がりました。利下げへの慎重な姿勢は確認されたものの、明確な引き締め方向ではなかったことから安心感が広がり、米国株式市場ではハイテク株を中心に買いが先行しました。中でも NVIDIA(エヌビディア) は買いが加速し、時価総額が一時4兆ドルを突破するという象徴的な出来事もありました。

BTCの史上最高値更新
この株式市場のリスクオンムードは暗号資産市場にも波及。とりわけBTCはこれまでの持ち合いを明確に上抜け、一時11万ドルを突破し111,200ドル(約1,620万円)台へ上昇しました。この水準は、今年6月に記録した約110,000ドルを上回り ドル建て史上最高値 となります。
背景には、7月3日に可決された 大規模な減税・歳出法案 があり、10年間で3.4兆ドルの財政赤字拡大が予測される中、米国債の信認低下とインフレ懸念から「価値保存資産」としてのBTCに資金が流入しました。
10日(木)は米経済のソフトランディング観測が広がり、S&P500とNASDAQが史上最高値を更新。BTCも116,000ドル台(約1,690万円台)へ上昇しました。
11日(金)は カナダへの関税率引き上げ によるインフレ懸念が再燃。株式市場は下落した一方で、暗号資産市場は堅調を維持し、BTCは117,500ドル(約1,720万円)で週を終えました。
円建てでも史上最高値に
BTCはドル建てのみならず 円建てでも過去最高値を更新 しました。これはBTC自体の上昇に加えて、外国為替市場における 円安進行 が円建て価格を押し上げたことも考慮する必要があります。
現在、ドル円相場は1ドル=147〜148円前後と急激に円安に振れています。
年初依頼、日銀の利上げ期待から日米の金利差が縮小するとの思惑が広がり、円買い(ドル円のロングポジション)が積み上がっていましたが、その後日銀が慎重姿勢を強め、金融緩和を維持するとの見方が市場で優勢になると、金利差縮小期待は後退。これにより円の売り戻しが進み、円安圧力となっています
さらに現在、日米関税交渉が難航しており、高関税のリスクが浮上しており、日銀の長期的な金融正常化(超低金利からの脱却)を難しくするとの懸念を高めました。このため、積み上がっていた円買いのポジションが一気に解消され、円売りが加速している状況です。
ドルが弱くても円はさらに弱い
これらの背景から、ドルインデックスが軟調な中でも円がそれ以上に売られており、相対的にドル高・円安が進行。この構図がBTCの 円建て価格を一段と押し上げる 結果となりました。
アルトコインも高値圏へ
イーサリアム(ETH)は2,570ドル(約37万円)台から2,950ドル(約43.4万円)台へ、エックスアールピー(XRP)は2.23ドル(約328円)台から2.72ドル(約401円)台へ上昇し、円建てでも高値圏に位置づけられています。
今週の経済イベントカレンダー
Calendar of Economic Events This Week
月 | 日 | 曜日 | 日本時間 | 国 | 経済イベント | 重要度 |
---|---|---|---|---|---|---|
07 | 14 | 月 | 12:00 | 中国 | 貿易収支6 月 | ★★★☆☆ |
07 | 15 | 火 | 10:30 | 中国 | 新築住宅販売価格6 月 | ★★★☆☆ |
07 | 15 | 火 | 11:00 | 中国 | 2025 年第2 四半期実質GDP | ★★★★☆ |
07 | 15 | 火 | 11:00 | 中国 | 小売売上高、鉱工業生産指数6 月 | ★★★☆☆ |
07 | 15 | 火 | 18:00 | 欧州 | ZEW 景況感指数7 月 | ★★★☆☆ |
07 | 15 | 火 | 21:30 | 米国 | 消費者物価指数(CPI)6 月 | ★★★★☆ |
07 | 16 | 水 | 21:30 | 米国 | 生産者物価指数(PPI)6 月 | ★★★☆☆ |
07 | 16 | 水 | 22:15 | 米国 | 鉱工業生産指数6 月 | ★★★★☆ |
07 | 17 | 木 | 18:00 | 欧州 | ユーロ圏 消費者物価指数(HICP)6 月 | ★★☆☆☆ |
07 | 17 | 木 | 21:30 | 米国 | 小売売上高6 月 | ★★★★★ |
07 | 17 | 木 | 21:30 | 米国 | 新規失業保険申請件数7/6-7/12 | ★★★☆☆ |
07 | 17 | 木 | 21:30 | 米国 | フィラデルフィア連銀景況感指数7 月 | ★★★★☆ |
07 | 18 | 金 | 08:30 | 日本 | 全国消費者物価指数(CPI)6 月 | ★★★☆☆ |
07 | 18 | 金 | 21:30 | 米国 | 住宅着工件数6 月 | ★★★☆☆ |
07 | 18 | 金 | 23:00 | 米国 | ミシガン大学消費者信頼感指数7 月 | ★★★★☆ |
今週の注目ポイントと展望
今週は米国、EU、そして日本で消費者物価指数(CPI)の発表があります。金融市場では、7月の利下げは後退しつつあるものの、依然として 9月の利下げ期待が根強くあります。しかし、先日の米雇用統計により 米国経済の堅調さが再確認され、9月利下げ観測にはややブレーキがかかっています。 今週発表されるCPIが 利下げタイミングに対する新たな方向性を示す材料として市場の注目を集めています。
小売売上高に注目が集まる理由
CPIと並んで注目されるのが、17日(木)に発表される 米国小売売上高(Retail Sales) です。これは米国の個人消費の勢いを測る上で極めて重要な指標であり、米国GDPの6割超を占める個人消費の現状を直接反映します。特に今のような 利下げの是非が議論される局面においては、物価指標とともに「実需の強さ」を測る材料として、金融政策の判断材料となります。
小売売上高を巡るシナリオ分岐
小売売上高が予想を上回る堅調な結果となれば、米国消費が依然として底堅いことが示され、金融市場では「利下げの必要性が低い」との認識が広がる可能性があります。この場合、米金利上昇圧力が再燃し、株式市場にはやや逆風となる一方、 BTCなど暗号資産にはインフレ・金融リスクヘッジ需要として再評価される展開もありえます。
一方で、小売売上高が 予想を下回る弱い結果となれば、米個人消費の減速懸念が台頭し、9月利下げ期待が再燃します。これにより 株式市場は金融緩和期待で上昇、BTCもリスク資産として買われる可能性がありますが、同時に「景気減速」が意識されればボラティリティが高まる可能性もあります。
暗号資産市場の地合いとリスク感度
一方で、7月3日に政権の主要政策を盛り込んだ 大型の減税・歳出法案が下院で可決され、翌4日にトランプ大統領が署名を行いました。その翌週から暗号資産市場の動きは堅調な展開を見せています。
この法案により、米国の財政赤字は今後10年で3.4兆ドル増加すると見込まれており、米国の財政健全性に対する懸念、ひいては長期的なインフレ懸念の再燃がBTCへの資金流入を後押しする構図です。
今週はCPI・小売売上高という2大イベントを契機として、米国の金融政策の方向性と、インフレ・景気の評価が改めて問われるタイミングです。先週の暗号資産市場は、BTCを中心に持ち合いを放れつつある動きが見られました。今週もこの動きは継続される可能性が高い一方で、インフレ指標や消費指標の結果次第では リスクオフ的な調整が起こる可能性も否定できません。
投資家の皆さまにおかれましては、こうした重要指標の発表と市場反応を注視しつつ、 柔軟かつ冷静な判断をもって臨むことが肝要です。