日本のWeb3.0は 実は、儲かっていない|Iolite編集長FOCUS
2023.10.25
「儲かるはイノベーションを阻害すると思うんですよね」
11月発売号掲載予定のインタビューを取りに行ってきた。今回インタビューをご快諾いただいたのは、同業他社の編集長。私にとっては、メディアのコンセプトやビジョン、何より先輩編集者の仕事の流儀を聞けたことが大変貴重な機会であった。
冒頭にあったコメントは、既得権益を享受している側が、自身の利益を守るためにイノベーションを阻害する可能性を孕んでいる、と言い換えることができるかもしれない。
確かに目先の利益に走れば、人であっても会社であっても将来への投資はおざなりになる。しかし、その日の生活や事業の存続はこれもまた大切なことだ。
私自身も、エンターテイメント業界でのブロックチェーン技術の活用を夢見て同業界に入り、さまざまな可能性を探っているため、冒頭の発言は非常に考えさせられた。
こんなエピソードも聞かせてくれた。彼がWeb3.0関連のイベントに参加した際に、40~50歳くらいの男性に「私は不動産業界に長らくいました。日本のWeb3.0が盛り上がっていると聞いて、初めてWeb3.0系のイベントに参加したのですが、日本のWeb3.0領域で一番儲かっている会社はどこですか?」と聞かれて、良い答えが思いつかなかったという。
「儲かっている」という少し抽象的な問いであったのも面白い。預かり総額や資産総額であれば、取引所やブロックチェーンの名前が上がってくるのだろうが、儲かる=利益で考えると、2022年度、国内取引所で利益を上げていたのは33社中5社であり、時価総額世界100位以内の勝負ができるブロックチェーンは国内を拠点としていない。日本のプロジェクトといえば〇〇といくつか名前が上がるだろうが、世界に目を向ければ段違いの強者がいるということだ。国内を盛り上げるために、グローバルスタンダードをメディアとして国内に届けることの重要性を強く感じたインタビューだった。
インターネットの登場でコンテンツの消費速度は速くなった。少し前のデータではあるが総務省によると、1996年から2006年の10年間で、人々が接することの出来る情報量は530倍に増加したとあった。しかし、生身の人間の情報処理能力に大きな進化はない。結果的に、情報をより効率的に取り入れる工夫がされるようになったと思う。
情報が滝のように流れる環境は便利な反面、多すぎて処理しきれずに「飽きる」「疲れる」ということもあると思う。結果、少し前のどこか不便に感じることはあれど、処理能力の限界を超えないようなツールを好んで使うようになるのではないかと思う。
コロナ禍では外出は制限され、人が人として生きる意味をいくつか制限された。Zoom飲みといった動きも生まれたが、今ではほとんどの方がやっていないだろうし、そんなものもあったなくらい過去の産物になっている。テクノロジーが進化してもまだ再現できないリアルの良さは存在する。もっといえば、便利になればなるほど、不便なものがある種の価値を持ち始めるとさえ思える。
電子書籍を活用する方は増えていて、これからも最新のハードに合わせてソフトが適合していくことになると思うが、現時点でも充電なしで読めたり、著者にサインを書いてもらったり、実物の本にしかない楽しみ方はある。
私たちの能力にあった適度なコンテンツをデジタル上でも作ってみたいと思った、ゆっくりそして何度も消費される名作と呼ばれるコンテンツがOnlineにあっても良いのではないだろうか。
[Iolite記事]
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