八木編集長FOCUS

目に見えないものに考えを巡らせることは案外面白い。空気には窒素・酸素・二酸化炭素等の気体は含まれているが目にはみえない。このような存在が私たちの生命にとって重要な役割を持っていることはなんとも不思議なことだ。

目にはみえないものがテクノロジーによって具現化することもある。昨今、注目を集めているブレインテックもその1つだろう。人間が脳で考えたことを、脳波として読み取って接続されたデバイスが対応して動作する。コンピューターのカーソルやキーボードを思考するだけで操作できるようにするような技術だ。

イーロンマスクのニューラリンクの挑戦

イーロン・マスク氏とニューラリンクの挑戦

かのイーロン・マスク氏も今年に入ってから、自身が創設したニューラリンクで、人の脳に初めてチップを埋め込む手術を行った。「例えばスティーブン・ホーキング氏が、高速タイピストや競売人より速くコミュニケーションできることを想像してほしい。それが目標だ」とも語っている。実際同領域の市場規模は年々拡大し、現在は5兆円を超える規模にまで成長しているともいわれているようだ。

活用時の倫理観は最も重要な課題の1つ

まだまだいくつかの課題が残っていることも事実。2022年には同社がチップを埋め込む実験において多くの動物が、脳インプラント手術に関連する合併症を原因として死んでしまったことが批判の対象となっている。これを受けて米国農務省(USDA)は、動物福祉法違反の可能性についてニューラリンクを調査中であるともいわれているようだ。

ほかにも、仮に脳に埋め込まれたチップのハッキングがあった場合に操作・洗脳される危険性があることや、脳への刺激・介入によって、個人のアイデンティティ・嗜好性・考え方などが改変されてしまう可能性、脳内盗聴や思考盗聴の危険性など、倫理的な懸念があらたに問題視されている。

「ブレイン・マシン・インタフェース」にみる“念”で機械を動かす最先端の脳科学の可能性

[Iolite記事]
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