日本の仮想通貨(暗号資産)市場の最新ニュースとして、ソニー銀行が新たなステーブルコイン発行の実証実験の検討を開始したことが分かりました。この記事では、ソニー銀行の新たなステーブルコインとはどんなものなのか、また今後の動向について他の日本円連動型ステーブルコインを絡めて解説していきます。ぜひ参考にしてください。

ソニー銀行と連携先2社によるステーブルコインのイメージ図

引用元:https://www.facebook.com/sonybank.jp/ https://polygon.technology/ https://www.settlemint.com/ja-jp/

ソニー銀行の新たなステーブルコインとは?

今年4月にソニー銀行が海外企業のPolygon Labs・SettleMintの2社と連携し、新たな日本円連動型のステーブルコインの発行の実証実験を検討していることがプレスリリースとして発表されました。

このステーブルコインは、イーサリアムをベースとしたPolygon PoSと呼ばれるブロックチェーンを適用しており、ステーブルコインの発行に向けて、各社はそれぞれ以下の役割を担っています。

  • ソニー銀行:法規制への準拠などステーブルコインに必要な機能を取りまとめる
  • Polygon Labs:Polygonブロックチェーン技術を提供する
  • SettleMint:ステーブルコインの実証実験を行うプラットフォームを用意する

連携先の2社はすでに仮想通貨(暗号資産)やNFT市場において一定の実績を持っている企業であり、ソニー銀行の取り組みの本気度をうかがわせます。このニュースに関連して、そもそもステーブルコインとは何なのか、また連携先の2社はどんな企業なのか解説します。

ステーブルコインとは?

ステーブルコインとは、法定通貨に裏付けられているタイプの仮想通貨(暗号資産)のことです。法定通貨とは、日本円や米ドル・ユーロなど各国の中央銀行に認められて現実世界で流通している貨幣のことです。ステーブルコインはこういった法定通貨と連動しており値動きが小さいため、以下の特徴を持っています。

  • 共通の通貨として国内外への送金に使える
  • トレードで利益を得るのには向いていない
  • レンディングなどでを利用し高金利で運用できる
ソニー銀行の連携先2社のロゴ

引用元:https://polygon.technology/blog/settlemints-blockchain-transformation-platform-integrates-with-polygon-zkevm

連携先の企業について

ソニー銀行の新たなステーブルコインの発行に向けた連携先企業として発表された海外企業2社が、それぞれがどんな企業なのか紹介します。

Polygon Labs

Polygon Labsは、仮想通貨(暗号資産)であるPolygonの発行元の企業です。また、イーサリアムをベースとしつつも低い手数料で安全かつ迅速に取引を行えるPolygonブロックチェーン技術の提供も行っています。この優れた技術がソニー銀行のステーブルコインにも適用される予定です。

SettleMint

SettleMintは、ブロックチェーン技術を使ったアプリケーションのプラットフォームを提供・導入支援を行う企業です。この企業の技術によって、迅速かつ簡単にブロックチェーンアプリを作り上げられます。日本の企業ではソニー銀行以外にも、富士通株式会社・川崎重工業株式会社との連携実績も持っています。

ソニー銀行を中心としたブロックチェーンのイメージ

ロゴ引用元:https://www.facebook.com/sonybank.jp/

ソニー銀行とブロックチェーン技術のつながり

ソニー銀行は、ソニーグループの金融部門として設立された日本のオンライン銀行です。約190万の口座を持っている大手行であり、顧客はパソコンやスマートフォンから24時間365日、いつでもどこでも銀行取引が可能です。このソニー銀行は、今までに以下のような取り組みを行っており、ブロックチェーン技術を取り入れることに積極的な姿勢を見せています。

  • デジタル証券の発行
  • オリジナルNFTの配布
  • Sony Bank CONNECTの提供開始

デジタル証券の発行

ソニー銀行は、国内の銀行の中ではいち早くデジタル証券を発行しています。デジタル証券は不動産や債券・株券などの有価証券を裏付けとするトークンのことです。ブロックチェーン技術を利用していることによって、有価証券と比べて以下の特徴を持っています。

  • 高額で手が届かないような投資対象も、分割して少額から投資できる
  • いつでも好きな時にオンライン上で取引できる
  • 流通する市場はまだ整備中のレベルである

高額で手が届かないような投資対象に投資できるのは、投資の幅を広げる要素です。また、時間を気にせず取引できるのも大きなメリットといえるでしょう。

オリジナルNFTの配布

ソニー銀行は、上述のデジタル証券の購入者などへ向けてオリジナルのNFT(Non Fungible Token)の配布を行っており、後述する独自アプリSony Bank CONNECT上で表示して楽しめるような取り組みを行っています。以下の図は環境に好影響を及ぼす事業へ投資するグリーンボンド債のデジタル証券を購入した方を対象に配布されたNFTです。

ソニー銀行のNFTの紹介

引用元:https://moneykit.net/campaign/digitalsecurities202403/

Sony Bank CONNECTの提供開始

ソニー銀行は、2024年の夏にデジタル証券の管理やETFマーケットの機能を持つ独自アプリSony Bank CONNECTの提供を予定しています。さらに、このアプリには今回紹介したステーブルコインを含む仮想通貨(暗号資産)を管理するためのウォレット機能の搭載も検討されています。

各個人が使いやすくデジタルコンテンツを管理するために必要な機能がそろったこのアプリが生まれることで、新たな市場を形成する見込みがあります。以下の図は現時点で公表されているSony Bank CONNECTのアプリ画面のイメージです。

Sonybankconnectのアプリ画面イメージ

引用元:https://sonybank.net/pdf/press240305_01.pdf

実際にアプリがリリースされれば、より多くのユーザーから注目を集めることになるでしょう。

日本円連動型ステーブルコインの動向

日本円とステーブルコインが天秤に乗っている図

日本では2023年6月に改正資金決済法が制定されたことで、米ドルと同じように日本円に連動したステーブルコインを作っていこうとする動きが活発になっています。今回解説したソニー銀行の新たなステーブルコインのほかにも、以下のような日本円連動型ステーブルコインがあります。

  • JPYC
  • YEN
  • GYEN
  • XJPY

上記4つのステーブルコインについてそれぞれ紹介していきます。

JPYC

引用元:https://jpyc.jp/

JPYC

JPYCは、株式会社JPYCが発行する日本円連動型ステーブルコインです。国内初の日本円連動型ステープルコインとして話題となりました。特徴として、先に日本円を支払ってから相当する数量のJPYCを送ってもらうプリペイド型であることや、ふるさと納税時の決済手段として使えるなど使用用途の範囲が広いことが挙げられます。

仮想通貨YENのトレードマーク

引用元:https://www.yenshop.jp/

YEN

YENは、株式会社YENが発行している日本円連動型ステーブルコインです。特徴としては、JPYCと同じくプリペイド型のステーブルコインであることや、JPYCと等価で交換ができることが挙げられます。ただし直近一年間に目立った動きは見られていません。

仮想通貨GYENのトレードマーク

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004284.000000136.html

GYEN

GYENは、GMOインターネット株式会社の米国子会社であるGMOトラストの発行する日本円連動型ステーブルコインです。以下の特徴を持っています。

  • 初めて米国の法規制を満たした日本円連動型ステーブルコインである
  • 日本国内では流通しない仮想通貨(暗号資産)である
  • Solana, Stellarブロックチェーンに対応している

価値の裏付けとなる資産証明は公認会計士による監査レポートを通じて毎月開示されています。日本国内居住者への販売は対象外となっているため、今後の動向に注目です。

仮想通貨XJPYを取り巻く連携先企業の輪

引用元:https://progmat.co.jp/press/pdf/press231106_01.pdf

XJPY

XJPYは、三菱UFJ信託銀行が中心となって、国内仮想通貨(暗号資産)交換所であるbitbankmercoinと提携して実証実験を進めている日本円連動型ステーブルコインです。個人が利用するのではなく、国内外の法人間での送金や決済の手段として使われることを想定していることが特徴です。

まとめ

この記事では、ソニー銀行が発行に向けて実証実験の検討を開始した新たなステーブルコインについて解説しました。内容をおさらいすると、ソニー銀行が発行に向けた実証実験を検討している新たなステーブルコインは、日本円に連動するステーブルコインです。ソニー銀行はこれまでもデジタル証券NFTの発行を行っており、ブロックチェーン技術を積極的に取り入れる姿勢を見せています。さらに2024年の夏にはSony Bank CONNECTという仮想通貨(暗号資産)ウォレット・NFTマーケットの要素を備えた独自アプリの提供開始を控えており、新たな市場が生まれる期待が持てます。

日本円連動型ステーブルコインを生み出す流れは活発になってきており、その中でもソニー銀行の発行するステーブルコインは国内の個人を想定顧客としているため、今後の日本における基軸通貨になっていく可能性もあり、今後の動向に注目です。