最近の仮想通貨(暗号資産)市場で投資家から注目を集めている場所があります。それが中国の香港です。この記事では、なぜ今香港が仮想通貨(暗号資産)市場で注目されているのか、アジアにおける仮想通貨(暗号資産)市場の現状と併せて解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

香港を表すイラスト

なぜ今香港が注目されているのか?

現在仮想通貨(暗号資産)市場で中国の香港が投資家からの注目を集めています。その理由は、4月15日に香港の株式取引市場においてビットコイン・イーサリアムの現物ETFの上場が承認されたためです。

ビットコイン・イーサリアムの現物ETFの株式市場への上場はアジア初の出来事であり、このニュースによって投資家たちはビットコイン・イーサリアムの価格が上昇する期待を持ち、注目を向けています。それはなぜなのか米国でのビットコインETF上場時の影響と中国での仮想通貨(暗号資産)取引の扱いを切り口に解説します。

米国のビットコインETF上場時の影響

先行して仮想通貨(暗号資産)の現物ETFの上場を果たしている米国を参考に、ETFが上場した際の仮想通貨(暗号資産)価格へのインパクトを確認してみましょう。2024年2月27日に米国市場に「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト」と呼ばれるビットコイン現物ETFが上場した際には、1日に780億円を超える大量の資金が流入し、ビットコイン価格の急上昇につながりました。これにより、ビットコインの価格は新高値をつけ1000万円を超える水準にまで到達しました。

2024年4月にかけてのビットコイン/円のチャート

引用元:https://jp.tradingview.com/symbols/BTCJPY/

これは、ETFを通じてビットコインに投資資金が流入しただけでなく、ETF上場に対する投資家のビットコインの値上がり期待も反映したものだと考えられています。香港市場でも同様にビットコイン・イーサリアムの現物ETFが上場すれば、大量の資金が流入し値上がりすることが投資家から期待されています。

中国における仮想通貨(暗号資産)取引の扱い

中国当局は仮想通貨(暗号資産)取引に対して厳格な姿勢を崩しておらず、取引は禁止されています。それにもかかわらず、中国におけるビットコインのマイニング(取引データを保存して対価のビットコインをもらうこと)は世界で一、二を争うほど多く、中国のビットコイン市場への影響力は依然として大きいといえます。そんな中国の香港市場でビットコインのETFが上場するとなれば、中国本土の仮想通貨(暗号資産)マネーがETFへ流入して値上がりを期待する投資家が増えるということです。

香港の夜景とETFの文字

香港でETFが上場することによる影響は?

香港でビットコイン・イーサリアムの現物ETFが上場することによる影響について、そもそも仮想通貨(暗号資産)のETFとは何かから解説します。ETFはExchange Traded Fundsの略称であり、上場投資信託を指します。つまり、ビットコインやイーサリアムそのものを保有するのではなく、ビットコインやイーサリアムの価格の変動に追従して価値が変動するようになっている投資信託商品を購入できるということです。

香港でビットコイン・イーサリアムの現物ETFが上場して投資できるようになれば、ビットコインやイーサリアムを直接保有するのに比べ、投資家からすれば以下のメリットがあるため、ETFを通じてビットコイン・イーサリアムに投資される金額が増え値上がりする期待が強くなります。

  • 仮想通貨(暗号資産)をウォレットで保管しなくていい
  • 証券口座から投資できるので手続きが楽
  • 税制上有利な場合がある

仮想通貨(暗号資産)をウォレットで保管しなくていい

1つ目のメリットとして、ETFを購入する場合、仮想通貨(暗号資産)そのものを保有するわけではないため、仮想通貨(暗号資産)を保管するためのウォレットを使う必要がないことが挙げられます。

ウォレットを作成する手間を省けるだけでなく、ウォレットのセキュリティ面についてまだ不安感を覚えている投資家も、ETFを利用し自分の証券口座から安心して仮想通貨(暗号資産)に投資できます。

証券口座から投資できるので手続きが楽

2つ目のメリットとして、投資までの手続きが楽という点が挙げられます。既存の投資家はすでに自分の証券口座を開設しているため、ETFを活用すれば、仮想通貨(暗号資産)に投資するために追加で仮想通貨(暗号資産)取引所に口座を開設する必要がありません。これも投資家にとってはプラスに働きます。

税制上有利になる場合がある

3つ目のメリットは、投資で発生したもうけにかかる税金が少なくなる可能性があることが挙げられます。これは、国ごとに違いがありますが、日本の場合を例に説明します。

仮想通貨(暗号資産)の取引で出たもうけは、雑所得と呼ばれる所得に分類されます。この場合、仮想通貨(暗号資産)への投資でもうけた金額が多いほど発生する税金額が増える累進課税制度が適用されてしまいます。

一方で、ETFを購入した場合は、上場投資信託に投資した扱いになるため、株式譲渡所得に当たります。これにより、取引で発生したもうけには20.315%の一定税率が適用されるだけでなく、他の所得との損益通算ができるといった税制上のメリットが発生します。まだ日本では仮想通貨(暗号資産)のETF商品の取り扱いはありませんが、こういった税制上のメリットが発生する可能性はあります。

アジアにおける仮想通貨市場の動向

アジアを見つめる人々

今回の記事で紹介した中国以外にも、アジアには仮想通貨(暗号資産)の保有者が多く市場が盛り上がりを見せている国があります。下の表は2023年時点での仮想通貨(暗号資産)の国別の保有者数のランキングです。

順位 仮想通貨保有者数
1 米国 2,730万人
2 インド 1,000万人
3 ベトナム 920万人
4 英国 860万人
5 中国 830万人
6 トルコ 730万人
7 韓国 680万人

引用元:https://coinpost.jp/?p=468968

この内、上位に挙がっているアジアの国3カ国(インド・ベトナム・韓国)について、仮想通貨(暗号資産)の取引に対する動向をそれぞれ紹介します。

インドの仮想通貨(暗号資産)市場

インドは、仮想通貨が最も日常的に使われている国であるといわれています。ブロックチェーン分析会社Chainalysisの2023年の独自調査によれば、日常的に仮想通貨(暗号資産)を使用している国のランキングでインドは1位となっています。

仮想通貨が最も日常的に使われている国ランキング

引用元:https://x.com/chainalysis/status/1701584492350021791

一方で、インド政府やインド中央銀行は仮想通貨(暗号資産)の取引に対して疑う姿勢を崩していません。ただし取引を禁止するのではなく、仮想通貨の取引で得たもうけに対して30%の税率で所得税をかけているのが現状です。

仮想通貨(暗号資産)を正当な資産として認めるための法規制の整備を進めており、今後の仮想通貨(暗号資産)取引の活発化に期待が持てるでしょう。

ベトナムの仮想通貨(暗号資産)市場

ベトナムでは、安価な送金手段として仮想通貨(暗号資産)が浸透しており、仮想通貨の国民への普及率も世界トップクラスであることが知られています。ベトナムの街中には、ビットコインで商品の支払いができる店舗まで登場しているほどです。

それだけでなく、Axie Infinityをはじめとした有名NFTゲームもベトナムのスタートアップ企業から生まれており、国を挙げてブロックチェーン技術を盛り上げていこうとする機運が強い国だといえます。

韓国の仮想通貨市場

韓国では、仮想通貨(暗号資産)の取引は合法的に認められており、国の株式取引市場を上回るほどの盛り上がりを見せています。

また、韓国の最大野党である「共に民主党」はビットコインの現物ETFの承認へ向けた動きを見せており、中国に引き続いてビットコインETF上場に向けた期待が強まってきています。

香港の街並みと仮想通貨コイン

まとめ

この記事では、仮想通貨(暗号資産)市場で注目度が上がっている香港について、なぜ今注目されているのか、また中国以外のアジアの仮想通貨市場の動向について紹介しました。

内容をおさらいすると、現在香港が注目されているのは、今年4月に香港市場においてビットコイン・イーサリアムに価格に連動するETFの上場が承認されたことで、ビットコイン・イーサリアムに投資資金が流入し値上がりする期待がされているためです。

現在は中国本土での仮想通貨(暗号資産)の取引に対する規制が強いですが、今後中国当局の仮想通貨(暗号資産)取引の規制緩和が起これば、中国における仮想通貨(暗号資産)取引量が一気に増加し巨大な市場を形成する可能性もあります。

また、中国以外にもインドやベトナム、韓国といった国を筆頭に仮想通貨(暗号資産)の保有者数が多い国がアジアにはあり、取引が活発になってきています

香港市場に上場したビットコイン・イーサリアムETFの今後の値動きや、アジア諸国における仮想通貨(暗号資産)の市場動向には引き続きチェックしておく価値があるといえるでしょう