仮想通貨の 法整備最前線!日本と海外の法制度の違いを徹底解説
2024.11.15
仮想通貨(暗号資産)の取引を始めたいけれど、投資した資金がきちんと守られるのか心配に感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、日本における仮想通貨(暗号資産)についての法整備の最新状況と、海外での状況について紹介します。関連して、日本と海外の仮想通貨(暗号資産)取引所を比較した際のメリット・デメリットについても解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
日本における仮想通貨(暗号資産)の法整備
まずは、日本の仮想通貨(暗号資産)に対する法整備状況について紹介します。日本は仮想通貨(暗号資産)取引に前向きな国の一つです。それも仮想通貨(暗号資産)へ投資する人を保護するための法整備が進んでいるからにほかなりません。
2017年に改正された資金決済法という法律では、投資家の資産を守るために、日本で営業する仮想通貨(暗号資産)取引業者には以下の義務が課せられています。
- 金融庁の審査を受ける必要がある
- 業者の資産と顧客である投資家の資産は分けて管理する
- 顧客の資金の95%はコールドウォレットで管理する
金融庁の審査を受ける必要がある
1つ目の法的義務として、仮想通貨(暗号資産)交換業者は、日本国内で営業を始めるために金融庁の審査を受け、登録を受けなければなりません。金融庁は、仮想通貨(暗号資産)交換業者の事業内容や資産の管理方法について、実際にその企業に訪問して厳しくチェックします。
この審査に合格し、財務基盤や資産管理ルールがしっかりしていることを公に認められた企業しか日本では営業できないようになっています。
業者の資産と顧客である投資家の資産は分けて管理する
2つ目の法的義務として、仮想通貨(暗号資産)交換業者は業者の資産と顧客の資産を分けて管理する義務があります。仮想通貨(暗号資産)交換業者に預けた資産を勝手に流用されるのではないかと不安に思う方もいるかもしれません。
しかし、証券会社や銀行と同じように、業者が保有する資産と顧客である投資家の資産は完全に分けて管理する義務があるため、投資家の資産は守られる仕組みになっています。
顧客の資金の95%はコールドウォレットで管理する
3つ目の法的義務として、顧客の投資家の資産はコールドウォレット上に保管する義務があります。コールドウォレットというのは、インターネットとつながっていない仮想通貨(暗号資産)の金庫にあたるものです。日本の仮想通貨(暗号資産)交換業者は、顧客から預かった投資資金の95%はこのコールドウォレットで管理することが義務付けられているため、ハッキングによって皆さんの投資資金の全額が盗み取られるリスクは極めて低いです。
顧客資金の残り5%についても、万一の際に弁償できるように弁償用の資産を保持することが業者に義務付けられています。昨今、ハッキングによる仮想通貨(暗号資産)の不正流出がニュースとなっていますが、実際に不正流出した資産の全額がその後しっかりと顧客に返金されています。
海外における仮想通貨(暗号資産)の法整備
海外では仮想通貨(暗号資産)の取引についてどの程度法整備が進んでいるのでしょうか。この記事では、世界各国の仮想通貨(暗号資産)取引に関する法整備に向けた最新状況について、以下の3つの地域に分けて紹介していきます。
- アジアにおける法整備
- 欧米における法整備
- 南米・アフリカにおける法整備
アジアにおける法整備
アジアでは、先ほど紹介した日本を含め韓国・タイ・ベトナムといった国々が仮想通貨(暗号資産)の取引に前向きな姿勢を示しています。一方で、中国やバングラデシュなどの国では仮想通貨(暗号資産)の取引自体が禁止されています。
韓国
韓国は、株式取引よりも仮想通貨(暗号資産)の取引量が上回るほど、仮想通貨(暗号資産)への投資が盛んな国です。2024年6月には「仮想通貨(暗号資産)ユーザー保護法」が韓国政府で承認されました。これにより、仮想通貨(暗号資産)取引所に顧客資金の80%以上をコールドウォレットで保管することを義務付けるなど、日本同様の法整備を進めています。
タイ
タイは、仮想通貨(暗号資産)の取引を規制するための法的枠組みを積極的に取り入れている国の一つです。仮想通貨(暗号資産)で得た利益に対する税率が低いため、投資家から注目を集めています。2018年にタイ政府は「デジタル資産法」を施行し、タイ国内で営業する仮想通貨(暗号資産)取扱業者は、タイ証券取引委員会の審査を受けて登録を受けることが義務化されています。また、2024年6月には同国初のビットコインETFが承認されました。
ベトナム
ベトナムは、最も仮想通貨(暗号資産)が国民に普及している国の一つとして有名で、約5人に1人は仮想通貨(暗号資産)を所有しているといわれています。一方で、先に挙げた2つの国と比べ法整備は追いついていません。2018年には新たな仮想通貨(暗号資産)を発行する名目で推定3万人を超える投資家から、700億円を超える資金を盗み取る事件も発生しており、今後法整備が進んでいくことが期待されます。
欧米における法整備
欧米においては、アメリカ・カナダといった国を中心に、仮想通貨(暗号資産)取引について前向きな姿勢をとる国がほとんどです。
アメリカ合衆国
アメリカは仮想通貨(暗号資産)の保有量が世界一多いことで知られている仮想通貨(暗号資産)大国です。2024年5月に、仮想通貨(暗号資産)関連サービス業者に対する透明性・説明責任の強化を盛り込んだ「21世紀のための金融イノベーション・テクノロジー法(FIT21法)」が制定されました。
また、今年11月に予定されている大統領選挙で再選が有力視されているドナルド・トランプ氏は、仮想通貨(暗号資産)推進派であることを示しており、今年はアメリカにおける仮想通貨(暗号資産)市場にとって重要な年となる見込みです。
カナダ
カナダは、世界に先駆けて仮想通貨(暗号資産)取引の法整備を早々と進めた国です。2021年に世界で初めてビットコインと連動するETF商品の上場が承認されたことで話題となりました。カナダにおける全ての暗号通貨取引業者は、FINTRAC (カナダ金融取引情報報告書) に登録を受ける必要があり厳しく規制されています。
南米・アフリカにおける法整備
南米・アフリカの国々では、銀行口座を持てない国民が多く、仮想通貨(暗号資産)導入には理想的な環境のため、急速に仮想通貨(暗号資産)市場が成長を遂げています。一方で、法規制が全く追いついておらず、マフィア・犯罪組織の資金源となってしまっている側面もあります。
エルサルバドル
エルサルバドルは中南米に位置する国で、2021年に世界で初めてビットコインを法定通貨として認めたことで一躍話題となりました。国を挙げて仮想通貨(暗号資産)を推進するために、ビットコインを中心に据えた「ビットコイン・シティ」を作ることを大々的に宣言しましたが、その後の進捗は芳しくない状態です。
中央アフリカ共和国
中央アフリカ共和国は、アフリカ大陸の中央部に位置する国であり、2022年に世界で2番目にビットコインを法定通貨として認めた国です。仮想通貨(暗号資産)を流通させるための法的枠組みやインフラを整備するための「サンゴプロジェクト」を提案し、独自の仮想通貨(暗号資産)であるサンゴコインを上場させる予定であることを発表しました。しかし、国内では内戦が絶えず続いており、いまだ達成の道筋は見えていない状況です。
日本と海外の仮想通貨(暗号資産)取引所の比較
ここまでの内容から、国内外では仮想通貨(暗号資産)の投資家を守る法制度の整備具合にはばらつきがあることが分かります。そのうえで、日本の仮想通貨(暗号資産)取引所と海外の取引所ではどういった違いがあるのか、以下の表にまとめています。
国内の取引所 | 海外の取引所 | |
投資金が取引所から盗まれた場合の補償 | 全額補償される可能性が高い | 取引所によっては補償されない |
取引所自体の信頼性 | 金融庁の登録を受けた企業のみが営業している | 資産管理の行き届いていない業者が紛れている可能性がある |
取引できる仮想通貨(暗号資産)の種類 | 少ない | 多い |
レバレッジ取引の上限 | 元手資金の2倍までに制限される | 元手資金の1000倍まで可能な場合もある |
日本の仮想通貨(暗号資産)取引所は、投資資金の保護が行き届いており、比較的安心して取引を進められます。反面、取引できる仮想通貨(暗号資産)の種類が少なく、レバレッジ取引も元手資金の2倍までに限られます。
一方で海外の取引所では、新規に上場する仮想通貨(暗号資産)をいち早く取引でき、元手資金の1000倍に及ぶレバレッジ取引を行うことも可能な場合があるため、ハイリスクハイリターンを狙えます。その反面、仮想通貨(暗号資産)取引所自体の財政状態が不安定なリスクや、投資資金が保護されないリスクをはらんでいる場合があり、信頼できる取引所かどうか良く吟味する必要があります。
上記に挙げた内容を参考に、それぞれの特徴を把握したうえで、仮想通貨(暗号資産)取引に求めるものやリスク許容度に応じて選びましょう。
まとめ
この記事では、国内外における仮想通貨(暗号資産)取引に対する法制度の違いについて解説しました。日本は、数少ない仮想通貨(暗号資産)の投資家を守る法律が整備された国の一つであり、仮想通貨(暗号資産)交換業者には投資家の資金を守ることが義務づけられています。
海外においては、カナダのようにいち早く仮想通貨(暗号資産)取引について法整備を進めた国もあれば、法整備の整っていない新興国では犯罪組織の資金源となってしまっており、各国の対応にはばらつきがある状況です。
この法制度の違いにより、日本と海外の仮想通貨(暗号資産)取引所にはそれぞれのメリット・デメリットがあるため、特徴を理解したうえで各自のリスク許容度に応じて選びましょう。