米中関税と米国債格下げで揺れる市場、暗号資産はどこへ向かう?

先週の市場動向:株式市場は活発、暗号資産は小動き
先週は米国の関税交渉が注目される週となり、株式市場は大きく動いた週となりましたが、暗号資産市場は支援材料が乏しく小動きとなっています。
週初、BTCは104,100ドル(約1,520万円)近辺から始まりました。スイスで開催された米中貿易協議で、両国が関税を115%ずつ引き下げる事が発表され、NY株式市場はNYダウ平均が+1,160ドル、S&P500が+184、NASDAQが+779と大幅高となりました。一方、BTCは105,800ドル(約1,560万円)近辺まで上昇しましたが、米国10年国債利回りの上昇が上値を抑え、102,800ドル(約1,490万円)で12日(月)は終えています。
13日(火)は、米国消費者物価指数(CPI)が前年同月比+2.3%と予想や前月を下回ったことや、NVIDIAがサウジアラビア政府系ファンド所有の半導体企業との提携を発表したことで、株式市場は半導体企業やNASDAQを中心に上昇し、BTCも105,000ドル(約1,550万円)近辺まで価格を伸ばしました。
しかし、アリゾナ州でのBTC準備金に関する2つの法案に対し、州知事が拒否権を行使したことで可決に至らず、上値を抑えられました。14日(水)は金融市場で利下げ期待が後退したことで、長期金利が上昇し、株式市場、暗号資産市場ともに小動きとなりました。
15日(木)は米国生産者物価指数が予想を下回ったほか、NY連銀やフィラデルフィア連銀の景気指数が低調ながらも予想を上回った事で株式市場は上昇しましたが、BTCは引き続きもみあいに終始しました。
16日(金)は13日に業績予想の取り下げから下落していたユナイテッドヘルスの自社株買いを好感して株式市場は上昇しましたが、暗号資産市場は支援材料が乏しく、BTCは103,400ドル(約1,510万円)近辺で週を終えました。
ETH、XRPは週初買われる場面があり、ETHは13日に2,750ドル(約40.3万円)程度、XRPは12日に390円(約2.7ドル)台まで進みましたが、週末にかけて弱含みETHが2,550ドル(約37万円)程度、XRPが340円(約2.3ドル)台後半で週を終えています。
今週の経済イベントカレンダー
Calendar of Economic Events This Week
月 | 日 | 曜日 | 日本時間 | 国 | 経済イベント | 重要度 |
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05 | 19 | 月 | 10:30 | 中国 | 新築住宅販売価格 4 月 | ★★★☆☆ |
05 | 19 | 月 | 11:00 | 中国 | 鉱工業生産、小売売上高 4 月 | ★★★☆☆ |
05 | 19 | 月 | 18:00 | 欧州 | ユーロ圏消費者物価指数(HICP)4 月 | ★★☆☆☆ |
05 | 22 | 木 | 17:00 | 欧州 | ユーロ圏製造業、サービス業PMI 5 月 | ★★★☆☆ |
05 | 22 | 木 | 21:30 | 米国 | 失業保険申請件数 5/4-5/10 | ★★★☆☆ |
05 | 22 | 木 | 22:45 | 米国 | 購買担当者景気指数(PMI)05月 | ★★★★★ |
05 | 22 | 木 | 23:00 | 米国 | 中古住宅販売件数 4 月 | ★★★★☆ |
05 | 23 | 金 | 08:30 | 日本 | 全国消費者物価指数(CPI)4 月 | ★★★☆☆ |
05 | 23 | 金 | 23:00 | 米国 | 新築住宅販売件数 4 月 | ★★☆☆☆ |
今週のイベントを見ると、経済指標の発表では中国の新築住宅販売価格や小売売上高が注目される一方で、市場全体の注目を集めるような大型指標の発表は少なく、比較的落ち着いた週となる可能性があります。米国の主要企業の決算発表も一巡し、金融市場および暗号資産市場ともに、材料不足の状態が続くと予想されます。そのため、暗号資産にとっても値動きが限定される静かな週になるかもしれません。
ただし、米国の購買担当者景気指数(PMI)速報値(5月分)の発表には注意が必要です。この指標が市場予想を大きく上回れば、インフレ再燃や利上げ継続への警戒感からドル買い・株売りが進み、逆に大きく下回れば景気減速懸念が強まり、安全資産への逃避が活発になる可能性があります。結果次第で暗号資産市場にも波及的な影響が出ることが予想されるため、要注目です。
地政学リスクと米国債への影響
今週は、ウクライナとロシアの和平協議の行方や中東のガザに関しての状況などの地政学リスクの問題に加え、引き続き関税政策に対しての各国の対応がポイントになりそうです。
ただし、先週発表されたムーディーズによる米国国債の格付け引き下げによる影響が金融市場で表面化してくるのか注目されます。今回の格付けの引き下げは世界で最も信頼されていた米国国債に対してのものですので、米国国債に対しての信認性が低下し、米国内の金利上昇や金融市場の混乱に繋がる可能性があります。
また米国国債に代わる安全資産を求める動きが出てくるのかが注目されます。すでにドルからの逃避先として各国の中央銀行は金の保有を進めているだけに、新たな資産として暗号資産が注目を受けていくのか見て行きたいところとなります。
世界的な資産変動が起ころうとしている可能性があるだけに、これからの各資産の動向には注目していただき、特に暗号資産の動きからは目を離さず見守っていただきたいと思います。