XRP現物ETFの動向とSECの判断

2日、運用会社ビットワイズ(Bitwise)がSEC(米証券取引委員会)に登録届出書を提出し、リップル(XRP)現物ETFを立ち上げる意向を示した。すでにSECに対してフォームS-1登録届出書を提出し、リップルの価格を追跡する現物ETFの承認を正式に求めている。

このタイミングでXRPは10%以上急落。3日、SECがリップル社との裁判を巡って控訴の意向を示したようだ。XRPを証券として訴訟、約20億ドルの罰金を求めていたSECには、今年の8月にくだされた約1億円の罰金とリップル社の部分的勝訴は苦虫を噛む結果だった。このタイミングで実際に動きをみせてきたということだろう。

八木編集長FOCUS

リップル社とSECの訴訟経緯

2013年にウィンクルボス兄弟によって行われた「Winklevoss Bitcoin Trust」のSECに対する申請は、市場の不透明性や規制の不備、価格操作のリスクなどの懸念から承認が見送られた。そこから長らく現物ETFに対して​​米国が承認に慎重な姿勢を示すなかで、2021年にカナダが世界初のビットコイン現物ETF「Purpose Bitcoin ETF」をトロント証券取引所で承認。そこから潮目が変わり、2021年10月で、ProSharesが提供する「ビットコイン先物ETF(BITO)」がニューヨーク証券取引所に上場。米国初のビットコイン現物ETFは、2024年1月10日に米国証券取引委員会(SEC)によって正式に承認された。

そこから、イーサリアム(ETH)現物ETFの承認、ソラナ(SOL)やリップル(XRP)現物ETFの申請等へと波及している状況にある。ソラナの現物ETFを含む申請の一部は、SECがソラナの法的地位を懸念しているという報道を受けて取り消しされたこともあって、リップルの現物ETFが承認に至るか否かは注目の要素の1つだろう。

Howeyテストによる証券判断

ニューヨーク連邦地裁は、リップルが二次市場で取引所を通じて販売したXRPは証券ではないという判断を下しており、ソラナとは少し異なる市場の認識があるとは感じているものの、個人的には、ビットコインとそのほかのアルトコインでは、その性質や市場の認識が異なると感じる。ビットコインは大統領選で候補者がビットコインについて触れるなど、既存金融でもある種の市民権を得た様相だが、アルトコインは控えめにいっても、市場の疑念が払拭されるまでまだまだ時間がかかりそうだ。

ripple XRPのイメージ

XRPの特徴と市場での役割

イーサリアムは現物ETF承認に漕ぎ着けたが、そのほかのアルトコインが承認されビットコインとそのほか、ではなく暗号資産全体が既存金融に認められるようになることは暗号資産市場にとって、金融市場からの資金流入という意味では重要なことだろう。

送金スピードとコスト削減のメリット

今更ながら、リップルの特徴と私の認識を最新情報を折り込んでおさらいしたい。2020年12月にSECがリップルに対して提起した訴訟から始まる。SECは、XRPを証券として扱う根拠として、投資契約が証券に該当するかどうかを判断するためHoweyテストを用いた。Howeyテストは、投資の利益が第三者の努力に依存している場合、証券と見なされるという考えに基づいて作られた法的基準だ。

対してリップル社は、XRPは暗号資産であり証券には該当しないと主張。2023年7月、ニューヨーク連邦地裁は、リップルが二次市場で取引所を通じて販売したXRPは証券ではないと判断し、リップルは部分的な勝利を収めた。大口投資家に対して直接販売したXRPに関しては証券取引とみなされる可能性があるという点が部分的勝利とされている要素だ。

XRPの特徴もおさらいしたい。公表されているデータによると、1回の取引は約3.3秒でできるといわれている。通常の国際送金では、1~3営業日程度の時間がかかるようだ。海外送金は多くの場合、SWIFT(国際銀行間通信協会)のネットワークを利用するため、複数の中継銀行を経由することがある。送金が完了するまでに数日かかることが一般的だ。追加の手数料を支払うことで、より早い送金が可能だがコストはあがってしまう。実際、国内暗号資産取引所のウォレットから円を自身の銀行口座を出金する場合には、最短でも1営業日かかるところがほとんどなので、短縮できることは間違いないだろう。これだけでメリットを感じる。

リップルの送金スピードのイメージ

送金時の手数料の内訳をみてみると、一般的には手数料が約5,000円前後。これに加えて、中継銀行と受け取り手数料、為替マージンで平均して6,000円以上のコストがかかることが多く、為替マージンは総金額に対してパーセンテージでかかるので総金額があがれば、コストは比例してあがる。

この送金の速さと法定通貨とのブリッジの役割を担ってくれるという2つの要素は、XRPの特徴であり、強みだと感じる。国内の暗号資産取引所でも、販売所ではなく取引所で交換することができて、新興のアルトコインよりも使い勝手が良いのは間違いないだろう。

過去にも触れたかもしれないが、先述のメリットがあるから価格面で期待できるのかといえばそう簡単でもない。リップルが目指すのは金融機関がより効率的に資金移動を行えるネットワーク。法定通貨のブリッジの役割を持つということは、XRPは法定通貨に代えられることを前提として流通している。XRPを活用する主たる目的が、法定通貨のブリッジであるならば、送付後即時換金するのであれば、需要が増えても即時換金によって市場に安定供給されるという意味で、市場の流通量が減りにくい構造ではないだろうか。

リップル自体が中央集権的な暗号資産であること、現在ではステーブルコインの開発や国内金融サービス大手のSBIと連携を強めており、市場は反応して一時的に期待感から価格がポジティブに動く可能性はあるが、長い目でみてビットコインを超えるパフォーマンスを上げることは考えにくいと思っている。リップルはあくまで金融機関がより効率的に資金移動を行えるネットワークの構築を目指していて、XRPはそのネットワークで流通する暗号資産であるという大前提は忘れないでおきたい。

初のXRP現物ETF誕生か ビットワイズがSECに申請

[Iolite記事]
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